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図書館という宇宙、あるいは迷宮 [散読記]

ずっと前は、印刷物に何か雰囲気写真を載せたいと思うと、
ふさわしい写真を探しに何度もストックフォトへ足を運んだものでした。
ストックフォトというのは、風景やモノなどの写真を有料で貸し出すところ。
いまはなき世界文化フォトとかオリオンプレスとか、
報道性のある素材だと共同通信とか。
報道写真系は安かったけど、それ以外のところは1点数万円かかるもんだから、
予算の都合上、使いたいだけ使うというわけにはいきませんでした( ̄ー ̄;

ところが、最近はデジタル化と価格破壊が進んだおかげで、
以前の半額ぐらいの値段で、場合によっては無料(!)で、
そこそこのレベルの写真がネットで手に入るようになりました。
大量のポジフィルムをお店のライトテーブルの上に広げて、
目的の写真を丹念に探していたあのころが嘘のようです。

先日も、外国の図書館の写真をネット検索していたところ、
うっとりするような写真を見つけてしまいました。
ストラホフ修道院(チェコ・プラハ)の図書館です。
(写真はクリックで、かなり拡大します)


Theological Hall in Strahov Monastery Library, photo by Andurinha on Flickr


Philosophical Hall in Strahov Monastery Library, photo by Andurinha on Flickr

写真上が「神学の間」、下が「哲学の間」。
「神学の間」の天球儀と天井のフレスコ画といい、
「哲学の間」の壁面を埋めつくすような書棚といい、
あまりの美しさに、くらくらしてしまいます(@_@)

この写真を見て、すぐに思い浮かんだのが『薔薇の名前』。
記号学者ウンベルト・エーコによる、中世の修道院を舞台にした小説です。

薔薇の名前〈上〉

薔薇の名前〈上〉

  • 作者: ウンベルト エーコ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1990/02
  • メディア: 単行本

薔薇の名前〈下〉

薔薇の名前〈下〉

  • 作者: ウンベルト エーコ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1990/02
  • メディア: 単行本


ホームズとワトソンを思わせる修道士ウィリアムとアドソが、
北イタリアの修道院を舞台に、奇怪な連続殺人事件の謎を解くというお話。
迷宮のように入り組んだ文書館、盲目の文書館長、
失われた書物、異端審問と魔女裁判。
キリスト教の暗黒の歴史とオーバーラップするストーリー展開に、
推理小説ふうの謎解きのおもしろさが加わって、
じつに読み応えのある作品です。

で、ここに出てくる立ち入り禁止の写字室や文書館というのが、
まさにストラホフ図書館のイメージなんですよねー。
行ってみたいなぁ、宝くじでも当たったらw

『薔薇の名前』は、ショーン・コネリー主演で映画化もされています。

薔薇の名前 特別版

薔薇の名前 特別版

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD

暗示に満ち満ちた複雑な物語をわかりやすくまとめていて、
これはこれでなかなかのおもしろさ。
ただ、ラストの印象はずいぶん違っていて、
「へ? そーいうことなの??」

結びの言葉は、「薔薇の名前」をめぐる詩の一節なのですが、
その言葉が真に意味するところは、今もって謎であります。



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コメント 43

たかち

これ図書館ですか?!!!美術館かと思っちゃった!!!
本を読むより、天井ばかり見てしまいそう(^m^;)
by たかち (2008-09-17 14:54) 

sara

私も、東京に住んでいた頃は、印刷関係の仕事をしていましたので、世界文化フォトとかオリオンプレスに、良く行っていましたよ〜。私の頃は、借りるのは無料と有料が有ったかな。使う時は決まった額の料金がかかりますよね。それより、借りたものを無くすと、高額で弁償する形になるので、帰りは一人の時なんて、ドキドキしたものでした。原宿や銀座に行くのも楽しみだったし、写真を探して選ぶという作業が凄く好きでした。ライトテーブルとルーペ、懐かしいです☆
チヨロギさん、どちらかですれ違っていたかもしれませんね〜☆ やっぱりねっ♪

図書館って、海外だととても素敵な場所が多くて、映画でも良く使われていますね。
図書館の写真、今はデジタルですから、素晴らしく美しいことでしょう。(^-^)
あ、ショーン・コネリー♪ この映画は観ていないかも。今度DVDを借りてみたいな。
by sara (2008-09-17 17:14) 

leaf

オリオンプレスかぁ......
懐かしいです:-)
by leaf (2008-09-17 17:56) 

柴犬陸

図書館では、時間を忘れてしまいそう。
それに、なんだか賢くなった気分もするし。
ところで、「薔薇の名前」はかなり評判になりましたね。
ショーン・コネリーがこの作品でアカデミー賞にノミネートされた記憶があります。
テレビでもたしか放映されたのに、見逃してしまいました。
今度は絶対観なくっちゃ。
by 柴犬陸 (2008-09-17 20:56) 

Yuseum

ショーン・コネリーの映画は数年前に観ましたよ♪
でも、本は・・・(;^_^A アセアセ…
昔から分厚い本には抵抗がありましたが、ここ最近は更に顕著になってきているYuseumですf^_^;
by Yuseum (2008-09-17 21:27) 

さくママ

素敵な図書館~♪
何時間でもいれそうwずっと天井眺めてたり、柱を眺めたり・・・www

by さくママ (2008-09-17 22:01) 

kissk

ホント凄い建物ですね!!
眺めてるだけで、時間が過ぎそうです♪
by kissk (2008-09-17 22:48) 

びっけ

まぁ、なんてゴージャスな図書館でしょう!
日本語の本は無いと思うけれど、一日過ごしてみたいです。(^^;
『薔薇の名前』は、過去に2度、図書館から借りて・・・・・・
結局、最初の数ページで挫折して返したという哀しい過去があります。
映画は楽しめたのですが・・・。
映画だと、薔薇の名前は、あの彼女の名前のようにも思えました。
でも、きっと、もっと深い意味があるんでしょうねぇ・・・。
三度目の正直で、リトライしてみようかな。(^^;
by びっけ (2008-09-17 22:48) 

柴壱

図書館にしておくのは勿体ない・・・・
いえ、図書館だからこそ活きてくるんですね美しい内装や調度品たち。
一度、訪れてみたくなりますねぇ。プラハか・・・ムリムリ;;
by 柴壱 (2008-09-18 00:23) 

チヨロギ

◇くらいふさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-18 02:23) 

チヨロギ

◇akisketchさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-18 02:24) 

チヨロギ

◇たかちさん◇
そうなんですよ~、まるで美術館ですよね!
プラハ出張とかあったら(←ないない)、壁や天井をじっくり見てみたいです♪
どうせ本は外国語で読めないですからね( ̄ー ̄;
by チヨロギ (2008-09-18 02:24) 

チヨロギ

◇saraさん◇
写真は媒体や使うページによって料金が違うんですよね。
限られた予算の中、制作コストを少しでも抑えるため、
微妙に過少申告していたことはここだけの秘密です( ̄b ̄) シーーッ
いちばんよく利用したのは市ヶ谷の世界文化フォトでしたが、
saraさんも利用されてましたか? 隣のテーブルに座っていたりしてw
世界文化フォトもオリオンプレスも、いまじゃアマナイメージズの傘下です。
ストックフォト業界も大変みたいですね~。

海外の古い図書館は、建物を見るだけでも価値がありそう。
絵になるから、映画の舞台になるのもうなずけます。
映画版「薔薇の名前」、ショーン・コネリーが素敵なので、ぜひ♪
by チヨロギ (2008-09-18 02:25) 

チヨロギ

◇leafさん◇
leafさんも利用されてました?
いまはネットで簡単に検索・入手できて、便利になりましたね。
by チヨロギ (2008-09-18 02:26) 

チヨロギ

◇xml_xslさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-18 02:27) 

チヨロギ

◇柴犬陸さん◇
本を借りないとしても、図書館という空間は魅力的ですよね。
あの古い本独特のにおいも、嫌いではありません。
「薔薇の名前」は公開当時、話題になりましたね。
いかにも中世的な暗~いシーンも多々ありますが、
ショーン・コネリーの好演で、とても楽しめる作品に仕上がっています。
テレビで放映されたら、私ももう一度観たいなぁ(^.^)
by チヨロギ (2008-09-18 02:29) 

チヨロギ

◇Yuseumさん◇
本は未読でしたか。たしかにコレ、上下巻ともに相当、分厚いですよね( ̄ー ̄;
私は大長編というのがけっこう好きなんですよ~。
読み終えたときの達成感、爽快感がたまりません♪
by チヨロギ (2008-09-18 02:30) 

チヨロギ

◇さくママさん◇
これはもう、美術鑑賞ですよね。
天井眺めたり、本の背表紙だけ眺めたり・・・(笑)
by チヨロギ (2008-09-18 02:32) 

チヨロギ

◇kisskさん◇
写真を見ているだけでもわくわくしてしまうぐらいなので、
実物を見たら、そこから一歩も動けなくなりそうです(^^♪
by チヨロギ (2008-09-18 02:32) 

チヨロギ

◇びっけさん◇
この図書館で一日過ごせたら、どんなにステキでしょうね~。
本は読めなくても、ワタクシ的には全然ノープロブレムでございますv
「薔薇の名前」については、哀しい過去がおありだったのですね( ̄ー ̄;
「フーコーの振り子」もそうでしたが、エーコの小説はとにかく長い!
 >映画だと、薔薇の名前は、あの彼女の名前のようにも思えました
そうなんです、最後はそんな感じのナレーションでしたよね。
でも、小説のラストはそれほどロマンチックではなかった気がするのです。
うーん、私も再読すべきかしら?(笑)
by チヨロギ (2008-09-18 02:35) 

チヨロギ

◇柴壱さん◇
すごいですよねー、この内装の豪華さといったら!
周辺のプラハ歴史地区は、世界遺産に指定されているそうです。
飛行機で2、3時間の距離なら行ってみたいんですけどねぇ(; ̄ー ̄A
by チヨロギ (2008-09-18 02:36) 

ムサシママ

映画「セックス・アンド・ザ・シティ」でも
写真のような美しい図書館で
主人公が結婚式をあげようとするシーンがありました。
こんな図書館があったら用がなくても毎日訪れたくなりますね。

by ムサシママ (2008-09-18 14:45) 

janvierm

これは素敵な図書館ですねぇ~(´OωO)
本なんてそっちのけで内観をず~っと観てしまいそうですね♪


by janvierm (2008-09-18 15:21) 

流星☆彡

そうそう!映画「SATC」で描かれてたNYの図書館も 実際に結婚式を
挙げられる施設になってるそうで。ここは修道院だから それは無理かも
しれないけれど、歴史と共に今も息づいてるような美しさに魅了されます
ネ~♪
by 流星☆彡 (2008-09-18 17:10) 

チヨロギ

◇ムサシママさん◇
結婚式を図書館で? それはすてきですね~!
日本の図書館だと、とてもそんな気にはなれませんが。
ストラホフの図書館なら、毎日でも結婚式挙げたいくらいですw
(相手はどーするんだ? 笑)
by チヨロギ (2008-09-19 01:16) 

チヨロギ

◇janviermさん◇
美術館や博物館だと思えばいいんですよねv
「神学」と「哲学」では、どうせ本の中身はちんぷんかんぷんだし(>▽<;;
by チヨロギ (2008-09-19 01:17) 

チヨロギ

◇流星☆彡さん◇
NYでは、図書館での結婚式のニーズがあるということなんですね。
どういう人が挙式するんだろう? 司書の人? 学者?
写真の修道院に蔵書が集められた時代は、本が美術品と同じぐらい、
貴重で価値のあるものだったんでしょうね(^.^)
by チヨロギ (2008-09-19 01:18) 

椎名

おバカな椎名は、『薔薇の名前』の小説を読んだって理解できないだろうな~と思い、ショーン・コネリー主演の映画の方を見ました。高校生の時。
でも結局、映画の方も途中で投げ出したのを思い出しました。

もう1度、見てみようかなぁ?
by 椎名 (2008-09-20 02:44) 

流星☆彡

図書館での結婚式のニーズ←映画のプロモーション番組で レポしてたん
ですけど、(一般)市民が申し込めて予約が空いていれば 天井の壁画等
美しい階段とかホールとかを パーティー会場様に利用できるようになって
いました。主人公が著述業(←と言っても 世俗的なエッセイを書くonly
なんですけど…)で、過去の有名人(詩人とか♪)の「愛(プロポーズ)の
名言」等がストーリーのKeyFactorになる筋立てで、図書館が登場する
きっかけになってたな。まさに このフレスコ画のような天井が圧巻で、
NYに行ったら これだけ眺めるためにでも立ち寄りたい…そんな壁画でした~☆
by 流星☆彡 (2008-09-20 20:58) 

チヨロギ

◇shinwaさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-20 22:24) 

チヨロギ

◇yutakamiさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-20 22:25) 

チヨロギ

◇椎名さん◇
私も全部が理解できているわけじゃないんですよ~(; ̄ー ̄A
深読みしたい人には限りなく深読みできてしまう本ですが、
推理小説とか歴史ミステリーとか、いろんな楽しみ方ができると思いますv
ただ、高校生の時だったら、私も投げ出していたかも(笑)
by チヨロギ (2008-09-20 22:26) 

チヨロギ

◇流星☆彡さん◇
詳細な情報をありがとうございます!
なるほどなるほど。
本の仕事とは関係ない、フツーの市民でも利用しているわけですか。
たしかに、新郎も新婦もキリスト教信者ではないくせに
教会のチャペルで挙式したりしますもんね(^^ゞ
日本の図書館ももう少し内装に凝ってほしいなぁ。
単に本を借りる場所というより、本を見る・感じる空間として
もっとデザインを重視してほしいものです・・・(-ω-;)ウーン
by チヨロギ (2008-09-20 22:30) 

梨花

わー、素敵な写真ですね〜〜!
こんな図書館なら、一日中でも居続けたいです♪
私もよく写真探ししましたよー!
大量のポジフィルムから、目的に合うものを探すのは本当に大変でしたよね;
しかも本当に高かったですよー。
広告使用だと媒体によっては何十万、百万越えなんてこともありましたし‥!
(なんてバブリーな価格!)
色んな意味で便利な世の中になりましたよね〜☆
ご紹介の小説は、とても面白そうですね!
と、取りあえずカートに入れました……(笑)

by 梨花 (2008-09-21 11:00) 

チヨロギ

◇greensさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-21 22:17) 

チヨロギ

◇梨花さん◇
天井も壁も書棚も、隅から隅まで見てまわりたくなる図書館です(^.^)
梨花さんも写真探しで苦労されたことがあるんですね!
ほんとに大変でしたよ~。イメージに合う写真を探すのもひと苦労だし、
せっかく選んで帰っても、デザイナーさんにダメ出しされて、
また一からやり直しとか・・・orz
いまはネットで探して、これと思うものをダウンロード。
営業担当者とのやりとりもメールだけで済んでしまいますからね~。
何より価格が安くなったのがありがたいです(o ̄ー ̄o)
『薔薇の名前』は、「このミス」20年のベスト・オブ・ベスト1位にもなっておりますv
お時間のあるときにでも、ぜひ☆
by チヨロギ (2008-09-21 22:25) 

チヨロギ

◇slashさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-22 22:58) 

Kimball

「薔薇の名前」....
むかあし、TVの深夜劇場でみて、おもしろかったので
本を買ったのですが....
ツンドク中です... <それじゃダメじゃん((C)春風亭昇太さん)

ショーン・コネリー、やっぱり、シブイっす!!\(^o^)/
by Kimball (2008-09-23 06:35) 

チヨロギ

◇Kimballさん◇
あらら、こちらもツンドク中でしたか(; ̄ー ̄A
映画をすでにご覧になっているのでしたら、
小説はぐっと読みやすくなっていると思いますよ~v
映画のショーン・コネリー、ほんとステキでしたよね!(*´艸`)
by チヨロギ (2008-09-24 01:32) 

チヨロギ

◇いっぷくさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-24 01:40) 

Morimo

すごい、確かにエントリータイトルのように「宇宙、あるいは迷宮」ですね。私もこの宇宙で遊んでみたいです。外国語はだめですけどね。
by Morimo (2008-09-26 00:42) 

チヨロギ

◇Morimoさん◇
そうですね、私もこういう迷宮なら迷い込んでみたいです。
できれば通訳付きで(笑)
by チヨロギ (2008-09-27 00:50) 

チヨロギ

◇TORUYGさん◇
はじめまして。ご訪問ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-03-05 01:25) 

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