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叔母との旅/ハーパー・リーガン [theatre]

今月は偶然にも、旅をめぐる芝居を2本観ました。
1本目は「叔母との旅」。

シス・カンパニー公演「叔母との旅」
原作:グレアム・グリーン
劇化:ジャイルズ・ハヴァガル
翻訳:小田島恒志
演出:松村武
出演:段田安則、浅野和之、高橋克実、鈴木浩介
期間:2010年8月20日(金)~2010年9月19日(日)
会場:青山円形劇場
上演時間:2時間5分(休憩15分)

銀行の支店長を勤め上げ、ガーデニングにいそしみつつ引退生活を送る独身男ヘンリー。母親の葬儀の日、50年ぶりに叔母オーガスタと再会する。70代後半ながら若い恋人と暮らし、奔放な生活を送る彼女に誘われるまま、ヘンリーは旅に出ることに。ロンドンからブライトンへ、次はオリエント急行に乗ってパリからイスタンブールへ。果ては南米アルゼンチンからパラグアイへと奇妙な旅はつづく。叔母が語る波乱万丈な昔話に戸惑いながら、次第にヘンリーは人生に新たな輝きを見出していく――。



翻訳劇で、キャストはベテラン男優4人とくれば、もう観ずにはいられません。
なぜって、わたしの脳内には「海をゆく者」の記憶が刷り込まれているからです。
あの芝居でのおじさんたち(失礼)があまりに愉快でかわいくてステキだったから、「叔母との旅」もきっと楽しいに違いない!
そんな思い込みでチケットをとったのでした。

いちばんの見どころは、20役以上のキャラクターを4人だけで演じること、そしてヘンリー1人を4人で演じ分けること。
場面ごとに分けるんじゃなく、台詞がつづいている途中でどんどん役者が入れ替わっていくんです。
・・・すごい。
キャラが立っているから、たくさんの人物が入り乱れても、観ていて混乱することはありません。女役だって全然OK!(とくに浅野さんw)
ヘンリーに至っては、ひとつの旋律を何小節かずつ違う楽器で奏でているような感じ。
音色はさまざまだけど、ひとつながりのメロディとしてちゃんと響いてくるんですよね。

それと、息の合った流れるようなパフォーマンス。
これは振付家の小野寺修二によるステージングが見事というほかありません。
※参考までに、小野寺氏のパフォーマンスはこちら↓。
 「カンパニーデラシネラ ある女の家

さて物語のほうは、“ぶっ飛んだ叔母”に巻き込まれ、ヘンリーの人生はモノトーンから極彩色へ。
ありきたりでない終わり方も、なかなかよかったです。


◆◆◆◆


もう1本は、ひさびさのパルコ劇場で「ハーパー・リーガン」を。

パルコ・プロデュース公演「ハーパー・リーガン」
作:サイモン・スティーヴンス
訳:薛 珠麗
演出:長塚圭史
出演:小林聡美、山崎一、美波、大河内浩、福田転球、間宮祥太朗、木野花
期間:2010年9月4日(土)~2010年9月26日(日)
会場:パルコ劇場
上演時間:約2時間35分(休憩15分)

ハーパー・リーガンは父危篤の知らせを受け、上司に仕事を休ませてほしいと懇願するが、あっさり拒絶されてしまう。生活のため、娘の学費のために必死で働いてきた彼女だが、不意にその家庭を、夫と娘を残したまま、誰にも告げずに父親に会いに行く。2日間の短い旅のなかでさまざまな人と出会い、新たな「真実」に傷つきながら、彼女は自分の人生と向き合うことに――。



ブリティッシュロックが鳴り響く舞台に、主人公ハーパー・リーガン(小林聡美)が現れる冒頭のシーン。
この曲がカッコイイ~!(だれか曲名を教えて~)

シーンのほとんどはハーパーと誰かの対話で劇が進んでいくのですが、台詞と空間の間(ま)のとり方が心地よくて、話に引き込まれてしまいます。
物語の背景にあるテーマは、ネットに依存する社会や衰えるジャーナリズム、家族の断絶などなど。でも料理の仕方がスタイリッシュなせいか、重すぎておなかいっぱい・・・てなことにはなりません。
役者の演技も言葉も自然で、どのエピソードも身近に感じられました。

小林聡美のハーパーは、ほとんど感情をむき出しにしない静かな演技。だからこそ、語られる言葉が胸に響き、語られない言葉が胸を揺さぶるのかもしれません。

 ハーパー「人生に確かなことがひとつだけある。それは、人生に確かなものなんてひとつもないってこと」

そう、そうだよね。
人の数だけ、真実はあるのだから。

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コメント 25

向日葵

「グレアム・グリーン」原作、って言うだけで、「え!?」って感じです。

なんとも興味深そうなお芝居ですねぇぇ。。
by 向日葵 (2010-09-19 22:03) 

チヨロギ

◇xml_xslさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-09-20 00:10) 

チヨロギ

◇きむたこさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-09-20 00:11) 

チヨロギ

◇向日葵さん◇
グレアム・グリーンというと、やはり「第三の男」でしょうか?
原作のおもしろさはもちろん、役者の巧さも存分に味わえる舞台でした~♪
by チヨロギ (2010-09-20 00:11) 

チヨロギ

◇amaneさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-09-20 00:11) 

ゆううこ

2つのお芝居共に人生を考えさせられるような内容ですね。
ふと立ち止まって、自分とは違う生き方を眺めてみるとき
自分が違っているとか正しいとか判定を考えるけど
ほんと確かなものって確かに無いw
受け入れる量が大きいほど幸せも大きいような気はしていますが
これもかなり個人的?w 千差万別ですね。
by ゆううこ (2010-09-20 12:00) 

たかち

両方とも面白そうですね!
でも20人以上を4人でって凄いですよね!!
そーゆー役を任せてもらえる役者ってそーはいないですよね(^▽^)
by たかち (2010-09-20 21:16) 

柴犬陸

「叔母との旅」のパフォーマンスは、てっきり演出家の指示によるものだと。
ちゃんと振付師が付いてたんですね、なるほど。
リンク先のパフォーマンスも、面白かったです。
一方、「ハーバー・リーガン」は観ていません。
父親が危篤なのに休ませてくれない会社なら、旅に出たくなりますよね。
by 柴犬陸 (2010-09-20 21:23) 

sara

旅をめぐる芝居ですか〜。面白そうですね☆ (^-^)
特に、ハーパーの方は台詞も心に残るものですし、興味深いです。
普段の生活をフッと離れて、一人、旅に出たくなる時も時にはあるような・・。
旅に出て、どう変わったのかな、という点がとても気になりますね〜。(^^)
by sara (2010-09-20 23:53) 

チヨロギ

◇yukkyさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-09-21 01:31) 

チヨロギ

◇高橋さん◇
はじめまして。ご訪問ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-09-21 01:31) 

チヨロギ

◇dorobouhigeさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-09-21 01:31) 

チヨロギ

◇ゆううこさん◇
旅を通して、いままでとは違う人生の価値に気づくというような内容なんですが、
選んだ人生が正解かどうかはわからないし、「叔母との旅」のヘンリーなんて、
トンデモない人生に足を突っ込んじゃった感もあります。(笑)
ただ、いろんな人生アリなんだと思えたほうが楽しいし幸せですよね。
結果的に平々凡々な人生歩んだとしても、それもまた良しということで。
by チヨロギ (2010-09-21 01:31) 

チヨロギ

◇Yuseumさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-09-21 01:33) 

チヨロギ

◇今造ROWINGTEAMさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-09-21 01:33) 

チヨロギ

◇たかちさん◇
全然違うタイプの舞台でしたけど、どっちもおもしろかったです♪
「叔母との旅」は、まさにこの4人だからこそ成り立ったというお芝居でした。
みんな動きのキレがいいし、チャーミングでしたよ~( *´艸`)
by チヨロギ (2010-09-21 01:33) 

チヨロギ

◇柴犬陸さん◇
「叔母との旅」の動きの謎を知りたくて、小野寺修二という名前をたどっていったら、
この映像を見つけました。
キャストの4人、みんな体がやわらかいですよね~!
「ハーパー・リーガン」・・・このひどい上司と対話している時のハーパーの心の動きを、
沈黙と表情の変化だけで表わす小林聡美がとてもよかったです。
by チヨロギ (2010-09-21 01:34) 

チヨロギ

◇saraさん◇
「ハーパー・リーガン」はこれ以外にも、印象に残る台詞がとても多い芝居でした。
2世代にわたる母と娘の確執が、もうひとつの軸になっているのですが、
主人公の母親(木野花)の台詞、娘(美波)の台詞にも、はっとさせられました。
何かに行き詰ったら、旅に出てみるのがいいかもしれませんね、わたしたちも。
by チヨロギ (2010-09-21 01:35) 

チヨロギ

◇AKIさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-09-22 22:31) 

そーすけ

ハーパー・リーガン。お芝居はまったくわかりませんけど、小林聡美さんが好きなせいもあるかもしれませんけど、なんか良いなぁ。
ほんとほんと、父親が危篤なのに休ませてくれないなんてどんな職場!
木野花さんが母親役ですか。なんか懐かしくて嬉しい。
しかし人生なんて振り返ると枝道がたくさんありますよねぇ。あそこでああしてればああなって・・・と思うことありますよね。
いえいえ達観しているわけはありません^^;(汗)
by そーすけ (2010-09-25 23:56) 

チヨロギ

◇そーすけさん◇
小林聡美さん、いいですよねー♪
テレビではコメディっぽいイメージですけど、シリアスな舞台もステキでした。
ひどい職場なんだけど、主人公は結局上司の目の前では逆らえない。
それが父親の死をきっかけに、ダーッと違う世界に旅立ってしまうのです。
人生、何がきっかけでどうなっちゃうかわかりませんよねー。
いや、わたしも人生語れるほど豊富な経験はないんですけどね( ̄ー ̄;
by チヨロギ (2010-09-27 00:38) 

チヨロギ

◇茅ヶ崎住人Rさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-09-27 00:39) 

チヨロギ

◇いっぷくさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-09-27 23:12) 

チヨロギ

◇yutakamiさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-10-03 16:25) 

チヨロギ

◇Kimballさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-11-14 15:51) 

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