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ファウストの悲劇@シアターコクーン [theatre]

数か月前にチケットを買ったときには、まさかこんな芝居だとは夢にも思いませんでした。
シェイクスピアの同時代作家クリストファー・マーロウの、日本初上演作品。
悪魔との契約により、自らの魂と引き換えに万能の力を手に入れたファウスト博士が、あらゆる望みを叶えた末に破滅するまでを描いたお話です。
ゲーテの「ファウスト」の元になった作品だというし、タイトルも「悲劇」っていうくらいだから、もっと重厚な、暗ーい舞台なのかなと思ってました。

とんでもない。
シルク・ドゥ・ソレイユかプリンセス天功かっていうほど、イリュージョンたっぷりなのですよこれが。
いやー、たまげたのなんのって。

[data]
ファウストの悲劇
作:クリストファー・マーロウ
翻訳:河合祥一郎
演出:蜷川幸雄
出演:野村萬斎、勝村政信、長塚圭史、木場勝己、白井晃、ほか
日程:2010年7月4日~7月25日 Bunkamuraシアターコクーン
上演時間:1幕1時間20分、休憩20分、2幕1時間15分


公演チラシ。なんかちょっと怪しげ~

まず、日本の歌舞伎一座が「ファウストの悲劇」を上演するという、劇中劇の設定。
このため、舞台後方の楽屋と、舞台下の奈落が丸見えになってます。
上演中も同時進行で、出番のない役者が楽屋で着替えたり飲んだくれていたりするので、こっちは観るのが忙しい~。
ガラス張りの楽屋は光を落とすと鏡に変わり、そこに映り込んだ客席の中から、いきなり役者が登場することも。
悪魔や天使は始終空を飛んでるし、とにかくみなさんフル回転です。(笑)

学問の道を究めたファウスト博士(野村萬斎)は、さらなる力を求めて黒魔術にとりつかれ、悪魔のメフィストフェレス(勝村政信)を召喚。
魔王ルーシファーに魂を捧げる代わりに、24年間はメフィストフェレスを召使にして、望みは何でも叶えてもらうという契約を交わします。
世界をめぐる旅に出た二人は、透明人間になってローマ法王の食卓を混乱に陥れたり、騎士たちの頭に鹿の角を生やしたり、いたずらやり放題。
このファウストとメフィストフェレスとの関係が、なかなかにアレなんですよ。
地獄落ちの運命を共にする同志であり、片時もそばを離れない恋人のようでもあり。
情熱的なタンゴを二人で踊るシーンにはゾクッとしました。(←いい意味で!)
作者のマーロウという人も無神論者・同性愛者だったそうで、ファウストは作者自身の分身なのかもしれません。

メフィストフェレスの勝村政信は、笑いを誘う初登場シーンに始まり、なんとも魅力的な悪魔を好演。空を飛ぶわ客席を駆け回るわで走行距離が半端ではなく、いつ見ても汗だくでした。
いっぽう、ファウストの野村萬斎は汗ひとつかいてない。首が飛ぼうが足が引っこ抜けようが(そういうシーンがあるんです)、あくまで美しく苦悩する人でありました。
ファウストが最期を遂げたあと、再登場して口上を述べる歌舞伎一座の口上役(木場勝己)の背中には、いつの間にか黒い悪魔の羽が・・・。

あっけにとられ、度肝を抜かれ、悪魔に魂を奪われたかのような3時間。
芝居の意味とかメッセージとかはよくわからないけど(笑)、作者の破天荒なエネルギーが伝わってきて、とにかくおもしろかったです。


公演プログラム。マーロウがじつはスパイで最後は暗殺されたとか、ファウスト古今東西とか、観劇の楽しみが増す興味深い内容。


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ナイロン/ジュリー/エネミイ [theatre]

いまさらながら、今月前半に観たもの/聴いたものの備忘録。

ナイロン100℃「2番目、或いは3番目」@本多劇場



物語の舞台は大災害か戦争か、何かの理由で破壊された廃墟のような町。
そこへ、別の被災地からはるばるやってきた身なりのいい男女の一群。彼らの目的は、この町の「哀れな」被災者を「助けてさしあげる」ことにある。
ところが、傾いたボロ家に住む人々は打ちひしがれた様子もなく、冗談を飛ばしながら明るく暮らしている。
逆に住民から歓待を受けて滞在するうちに、幾重にも覆い隠されたそれぞれの事情が次第に明らかになってきて・・・。

ざっくり言うとそんなストーリーです。
テーマは人間のエゴとか偽善とか。国家権力との闘いとか。
といっても、笑いの要素はたっぷりで、犬山イヌコ&松永玲子の双子の姉妹や、大倉孝二の大ボケじいちゃんがいちいち笑わせてくれます。貴婦人ふう緒川たまきの偽善者ぶりもハマってて、痛快そのもの。

ナイロン100℃の作品を観て思うのは、あれこれ理屈を考えるより感じる舞台だなぁということ。
人間の儚さとたくましさ、醜さと美しさが、過剰な台詞の細部にまで宿っていて、すべての登場人物をリアルな存在として立ち上がらせているんですよね。あと役者もみんな巧いし。
希望のない、最悪な世界を生きていく彼らの旅立ちに、それでも心が救われるような気がした美しいラストでした。


JULIE with THE WILD ONES「僕達ほとんどいいんじゃあない」(クリックすると音楽が鳴るので注意!)



ザ・ワイルドワンズがジュリーこと沢田研二をメインボーカルに迎えてのプロジェクト。
ただ、こちらはジュリーを生で観るのが目的でして、ワイルドワンズの歌は「想い出の渚」しか知らないありさまです。申し訳ない。

ライブはオリジナルアルバム「JULIE WITH THE WILD ONES」からの曲と、加瀬邦彦がかつてジュリーに提供したヒット曲、そしてザ・ワイルドワンズの曲という構成です。
オープニングはザ・タイガースの「シー・シー・シー」でいきなり1階席総立ち(しかしわたしは3階席なので着席)。これって加瀬さんの曲なんですねぇ、知らなかった。ちなみに作詞は安井かずみです。

客席の年齢層は当然ながら高め。でもみなさんノリノリでした(死語?)。ジュリーのヒット曲になると、3階でも立つ人がいたほど。
あの「TOKIO」なんて、男性も女性もアイドルの親衛隊みたいに、みなさん手拍子&振りつきですよ。もー、わかってたら練習しといたのにぃ。(;´д`)
それにしても、へヴィな体をモノともせず(失礼)、ステージを走り踊り歌うジュリーはやっぱり兆カッコいい!
いつかソロのジュリーも観てみたいなぁ。できれば総立ちを避けて2階席あたりで・・・。(軟弱)


「エネミイ」@新国立劇場



「戦い」をテーマにした今シーズンの新国立劇場ラインナップ、最後を飾るのがこの作品。
蓬莱竜太作、鈴木裕美演出です。

千葉県のちょっとリッチな一軒家に住む直木のもとに、二人の男性・瀬川と成本が訪ねてくる。
直木との40年前の約束を果たしに来たといって、半ば強引に滞在する二人。
1960年代末の学生運動で三人はともに戦った同志であることを、フラメンコに夢中の妻、ネットで婚活中の娘、コンビニでバイト中の息子は知る由もない。
いまも活動家である二人との交流のなかで、家族は見えなかった現実と向き合うことに――。

という感じのお話。
何より高橋一生演じる息子の描写がよかったです。
派遣切りにあったためにコンビニでアルバイトしながら、ネトゲでお小遣い稼ぎをしている、いまどきのニートな若者。
全共闘世代のオジサンたちに、「なぜ組織と戦わないのか」と詰め寄られても、相手には相手の事情があるからと、不平をこぼすこともしない。
そんな彼がクライマックスで、バイト先の店長に頼まれた勤務シフト作成にからめて、抑えてきた想いを爆発させる場面はほんとうに感動的でした。
戦うことより大切なものが、人間にはあるんじゃないのか。
覇気がないだの草食系だのと言われがちな、心優しき彼らの世代の苦悩が伝わってくるようでした。

こういう作品をシーズンのラストに持ってくるとは、鵜山仁芸術監督、なかなか趣味がいいですね~。



[ちょっと寄り道]

「エネミイ」の観劇をご一緒した柴犬陸さんと、オペラシティの「叙々苑」でランチを。


ビビンバ肉重900円なり。53階からの眺めも抜群です。


窓際のカウンター席に座れたのはラッキーでした。


そして、面影屋珈琲店でケーキセットを。
omokage.jpg
あっ、ケーキの名前を忘れてしまった。ピーチとかベリーとか入ってたんだけど・・・。
とにかく、おいしかったです!(汗)

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「ムサシ」ロンドン・NYバージョン@さいたま芸術劇場 [theatre]

近ごろはiPhoneばかりいじっていて、PCを立ち上げない日も増えつつあり。
そんなことしてる間に、自宅のネットがつながらなくなってました・・・。
困ったなー、どこのサポートに訊けばいいんだろうと、しばし途方に暮れていたのですが。
「とりあえずコンセント引っこ抜いてみるかー」と、無線LANルータ&VDSLモデムのコンセントを抜き差ししてみたところ。
あーら不思議。あっさり復活してしまいました~♪テヘ(*゚ー゚)>
よかったよかった。

というわけで、ネット復活を祝して(?)、ひさしぶりのブログ更新です。



1年ちょっと前、藤原竜也と小栗旬の共演で話題になった舞台「ムサシ」の、再演を観てきました。
ロンドンとNYでも公演することになって、そのために井上ひさしさん自ら脚本に手を入れ、上演時間を30分ぐらい短縮したそうです。
あと、キャストも一部変更。
佐々木小次郎役が小栗旬から勝地涼に、沢庵和尚役が辻萬長から六平直政に変わりました。

作品の内容については初演の観劇記事(こちら)とダブるので、今回は省略。(手抜きともいいますが)
いくぶんあやふやな記憶を頼りに初演と再演をくらべてみると、いちばんの違いはやっぱり小次郎の印象です。
あくまで個人的な感想ですけど・・・勝地涼には、華がない。
すごくがんばってるのはわかるし、演技に問題があるわけでもないんです。
でもなんだか、小次郎が貧相。(そこまで言うか)
わざとなのか結果的になのか、そのぶん藤原竜也の宮本武蔵が大きく見えました。
主役は武蔵なんだと思えば、また実際の年齢差からすれば、作品としては再演が完成形なのかもしれない。
けど、若者二人の個性がキラキラとぶつかり合う感じがした初演のほうが、わたしは好きだったなぁ。

もうひとつは、寺開きにあたり、大石継太演じる平心が寺の由来を話すシーン。
オープニングと同じ口上をラストでもう一度聞いたときに、初演では訳もなく胸がいっぱいになったのを憶えてるんですが、今回はそうでもなかった。
微妙に演出が変わってるのかなー。ちょっと残念です。

・・・と、いろいろ書いてしまいましたが、なんだかんだ言ってもおもしろかったですよー、いやホントに。
控え目な小次郎のほうがいいという人もいるでしょうし。
「生きていれば、もっと芝居が書けたのに・・・」という鈴木杏@脚本家の幽霊の台詞には、だれもが初演以上に井上ひさしさんをダブらせたと思います。
いい舞台でした。


◆公演概要 http://www.saf.or.jp/arthall/event/event_detail/2010/p0515.html



ロンドン公演@バービカンシアターのポスター。写真は冒頭、巌流島の決闘シーンです。


ムサシ

ムサシ

  • 作者: 井上 ひさし
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2009/05/01
  • メディア: 単行本


6月10日追記:書き忘れてましたけど、この日、会場で草刈民代&周防正行夫妻を見かけました。
颯爽と歩く草刈さんの半歩後ろを周防監督がついていく風景、ほほえましかったです。


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3月に観たもの・出会ったもの [theatre]

途中まで書きかけたまま半月以上放置していた記事を、ひっそりとアップ。
賞味期限とかはこの際、目をつぶっていただけるとありがたいです。(ペコリ

3月は前半に芝居を2本観ました。
1本目は、こまつ座の「シャンハイムーン」(紀伊國屋サザンシアター)です。

物語の舞台は1934年、上海の街に店を構える内山書店の中。
蒋介石の国民党政府に追われる魯迅と、彼をかくまおうとする在留日本人たちとの友情が描かれています。
魯迅センセイは体じゅう悪いところだらけ、口を開ければ虫歯だらけなのに、大の医者嫌い。
彼を敬愛する内山書店の店主夫妻は、店にかくまっている間に全部治療してしまおうと目論みます。
画家に化けた歯科医がまずは歯の治療をしようと、魯迅に笑気ガスを吸わせることに成功。
すると魯迅は、相手を別の人間にとりちがえる人物誤認症&失語症にかかってしまい・・・。

戦争へと突き進む暗い時代を背景にしつつ、芝居はいたってユーモラス。
失語症の魯迅が、必死でしゃべればしゃべるほど“言いまつがい”を重ねるシーンは、井上ひさしならではの珍妙な言葉のすり替えに大笑いの連続でした。
村井国夫の魯迅、よかったなぁ。品があって、頑固者だけど、じつにかわいい。
有森也実演じる第二夫人・許広平の、ある意味魯迅をリードしていくような描かれ方もよかったです。
そしてなにより、民族の差を超えてしっかりと結ばれた絆に、心がじーんとあったまりました。
日中関係はいまだにこじれがちだけど、同じ人間同士だもの、きっと理解しあえるはずなんですよね。

余談ですがこの芝居、老母が観たいと言うのでチケットをとりました。
劇場ではいつも半分以上ぐーぐー寝ている(おい)母が、今回はとくに後半、しゃきっと観ていたのにびっくり。
セリフを早口でまくし立てる芝居も多いなか、この作品はそれほど言葉が聞きとりやすく、内容もわかりやすかったのでしょう。
おかげで母は「おもしろかったー」と大満足。まあ、どれだけ理解しているかはわかりませんが。(笑)


◆◆◆◆


もう1本は、自転車キンクリートSTORE「富士見町アパートメント」(座・高円寺)。



「あるアパートの一室。その同じ空間を舞台に書き下ろした4つの物語。4人の劇作家による、まったく別の物語を鈴木裕美の演出で、連続上演いたします」(「座・高円寺」ホームページより)

という変わった試みの舞台で、わたしはこのうちAプログラムの2作品だけを観ました。
4作品の詳細なレビューは、柴犬陸さんのブログをご覧いただくとしまして・・・。(手抜き!)

まず、『魔女の夜』は蓬莱竜太の作品。
女性マネージャー(明星真由美)が住むアパートの一室を、深夜に突然、人気女優(山口紗弥加)が訪れます。
女優の腕からは血がたらたら、いったい彼女に何が起きたのか。
一度も暗転のない舞台で、二人の緊迫したやりとりにぐいぐい引き込まれました。
女って、コワイ。と言ってるわたしも一応、女なんですが。

もうひとつの『海へ』は赤堀雅秋作。
自殺した男のゴミ屋敷のようなアパートに、双子の弟(井之上隆志)と学生時代の友人2人(入江雅人、清水宏)が来て、そこにヘンな隣人(久保酎吉)やデリヘル嬢(遠藤留奈)も来たりして、すったもんだした挙げ句に夜が明ける。そんなお芝居です。(なんのこっちゃ)
男たちの見事にかみ合わない会話が笑いを誘うなかで、物語のキーになっているのが、作品タイトルにも関係する松田聖子の「赤いスイートピー」。
友人の一人が突発的に歌いだして、しまいには3人でフルコーラス歌うんですけど、聞いてて気づきました。わたしもフルコーラス憶えてるってことに。(笑)
だからというわけじゃありませんが、ほぼ同世代の彼らに妙に親しみを感じたりして、おもしろかったです。


◆◆◆◆


3月はもうひとつ、うれしいうれしい出来事がありました。
それは、柴犬陸さんちの陸くんに会えたこと!
ナマ陸くんはむくむくしてて、ほんとにもう、かわいかったです♡

おうちに長々とお邪魔しただけでなく、陸くんのお散歩にもお供させていただきました。
柴犬陸さん、ありがとうございました!



お土産に持っていったおサルさんのソックモンキー、陸くんは気に入ってくれた様子♪


ちょ、ちょっと陸くん、そのポーズはまずいんでないかい?(笑)


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勝手に三谷幸喜月間 [theatre]

今月(2月)は芝居を2本観てきました。
偶然にも、脚本・演出はどちらも三谷幸喜。

1本目は戸田恵子の一人芝居の再演、「なにわバタフライN.V」です。
2004年の初演は観ていないけど、「N.V=New Version」ってことで、かなり違った演出になっているらしい。
音楽がないこととか、超シンプルなセットとか。

まずは戸田さんが戸田恵子として舞台に登場してしゃべるという、ゆる~い導入で客席をほぐします。
それがある瞬間、ふっとミヤコ蝶々に変わっている。
おお。

「恋に生き、仕事に生きた」ミヤコ蝶々の人生を彩るのが、父親や恋人、夫や相方といった男性たち。
彼らはそれぞれ、伸縮自在なフレーム(額縁)で表現されていて、これがまたうまかった。
色も模様も大きさもさまざまなフレームが、舞台上にひとつずつ増えていく。
そして、彼女がフレームたちに問いかけるラスト・・・かわいくて、ちょっと切ないです。




◆◆◆◆


2本目は、「TALK LIKE SINGING」。
ニューヨークで上演したミュージカルの凱旋公演なので、英語のセリフもけっこう多いけど、もちろんその部分は字幕つきです。(ホッ

メロディに乗せてしか話すことができず、社会に適応できないターロウ(香取慎吾)と、彼を矯正して社会復帰させようとするダイソン博士(川平慈英)とニモイ博士(堀内敬子)、そして唯一の理解者ブラザー(新納慎也)。
ターロウが歌うのは「頭の中にいる楽団」が原因と判明するものの、やがて博士たちは治療方針をめぐって対立し・・・というお話なのですが。
アメリカ人ウケを狙った脚本のせいか、日本人には微妙にすべる箇所が無きにしも非ず・・・。

でもやっぱり、楽しかった~!
小西康陽の音楽はすごく軽快だし、三谷さんの歌詞は笑えるし。
「好きな食べ物は ソーメ~ン♪」っていう自己紹介ソングが頭にこびりついて離れません。
ターロウとニモイ博士のデュエットは、澄んだ空に浮かぶ満月のようにキラキラと美しい。
CDが出たらぜひ買いたいくらいです。

いちばん感心したのは、香取慎吾の顔。(←そこかい)
はるか後方の席からでも彼の表情だけは、肉眼ではっきり見えるんですよねー。じつに舞台向き。
それと、個人的にはNHK「新選組!」の放送以来、香取局長をぜひ舞台でも観たいと思っていたので、その意味でもたいへん満足でありました。



イルミネーションきれいだったのに、写真に撮るとイマイチ。昼間だからなぁ。(言い訳)

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ヘンリー六世 第二部・第三部@新国立劇場 [theatre]

三部作合計9時間半、無事観てまいりました~。
やー、おもしろかった!
複雑な人物相関図を見たときにはどうなることかと思ったけど、始まってみたらノープロブレム。
小道具を効果的に使って物語が視覚化されているので、脳みそのヘンなところ(どこだ)が疲れることもなかったし。
次のストーリー展開が待ち遠しくなる鵜山仁のテンポいい演出、それと鉄の草原のように荒涼として美しい島次郎の美術にも惹かれました。
三部作を1本ずつばらしてもそれぞれ見せ場があるし、3本通して観たからこそ見えてくるものもある。
がんばって観てよかったです、ほんとに。




劇場入口には、シェイクスピアの時代にロンドンにあったというグローブ座の模型が。当時と同じく、屋根がありません。


[第二部:敗北と混乱]
第一部のラストシーンで暗示されていたように、第二部では王妃マーガレット(中嶋朋子)とサフォーク(村井国夫)がすっかりいい仲になっちゃってます。
玉の輿に乗ったつもりが、まるで頼りない王ヘンリー(浦井健治)にいらだつマーガレットや、権力の座を狙う貴族たちにとって、摂政グロスター(中嶋しゅう)は目の上のたんこぶな男。
まずグロスターの妻エリナー(久野綾希子)がその野心ゆえに反逆罪で捕らえられ、グロスター自身は政敵・ボーフォート枢機卿(勝部演之)とサフォークの陰謀で暗殺されてしまいます。
彼の死を嘆くヘンリーは、民衆の抗議を受け入れるかたちでサフォークを追放。
いっぽう、王位を狙うヨーク公(渡辺徹)は、アイルランド遠征に赴く間に暴徒ジャック・ケード(立川三貴)らに反乱を起こさせ、イングランドを混乱に陥れます。
ようやく騒ぎが収まったところに凱旋したヨークは、公然と王位を要求。
王ヘンリーらランカスター家(赤薔薇)とヨーク家(白薔薇)は激しく対立、ついに薔薇戦争が始まります。

[第三部:薔薇戦争]
緒戦に勝利したヨークは議事堂でヘンリーに王位を要求し、弱気な王ヘンリーは、自分が死んだら王位をヨーク家に譲ると約束してしまいます。
これを聞いて大激怒したのが王妃マーガレット。
自ら軍を率いてヨークを捕らえ、なぶり殺しにしたあと、彼の首を城門にさらすよう命じます。(怖っ)
しかし形勢が逆転して、ヨーク家の長男エドワード(今井朋彦)がイングランド王に即位、ヘンリーはロンドン塔に幽閉の身に。
援軍を求めてフランスへ渡ったマーガレットは、大使として渡仏した敵方ウォリック伯(上杉祥三)と王宮で鉢合わせ。
ところがこのウォリック伯、エドワードの裏切りを知ったとたん、あっさりマーガレットと和解してしまいます。
ウォリックを味方につけて優位に立ったヘンリーは、いったんは王に復位するものの、またもや戦況が逆転。
ついにマーガレットは捕虜となり、ヘンリーはヨーク家の三男リチャード(岡本健一)にロンドン塔で暗殺され、ヨーク家の勝利で劇は幕を閉じます。



写真付きの関係系図。でも憶えてなくたってダイジョーブ。


第二部でも第三部でも、延々と権力闘争に明け暮れるイングランドの貴族たち。
国家の行く末なんて、だあれも案じちゃいません。
それは国民とて同じこと。
戦いの大義名分が何であれ、結局は手柄やご褒美や戦利品がお目当てだったりする。
ケント州の民衆も、ジャック・ケードを反乱のリーダーとして持ち上げておきながら、形勢不利とみるや簡単に彼を見捨ててしまうし。
民衆とはいつの世も残酷なものです。

あきれるほどの裏切り合い、殺し合いが続くなかで、真ん中にぽっかり開いた空洞のような存在、それがヘンリー六世。
ひ弱で無能な平和主義者という三拍子そろった(?)ヘンリーは、戦場で息子が親を殺し、親が息子を殺す悲劇を目の当たりにして、戦争の残酷さを嘆き悲しみます。
しかし結局は何事もなし得ないまま、ラストの手前で殺されることに。
「ヘンリー、どこまで無力なんだ~」とかわいそうになるけれど、シェイクスピアはそんな彼を映し鏡にして、戦いの愚かさ、虚しさを際立たせているのです。

キャストの中では、マーガレット役の中嶋朋子が主役並みの大活躍。
サフォークへの愛を切々と語る場面はなかなか美しかったし、強気で傲慢すぎるマーガレットや、鎧を着て戦うマーガレットもかっこよかったなぁ。
ヨーク公の渡辺徹は悪くはないけども、セリフにもっと言葉の重みがほしい、せっかくシェイクスピアなんだから。
あとリチャード役の岡本健一が、二枚舌の醜い悪人を生き生きと演じていたのが印象的。
リチャードはのちに兄たちを蹴落としてリチャード三世になるわけで、するとこの『ヘンリー六世』の続編といえるのが『リチャード三世』なんですよね。
そんなわけで、いま『リチャード三世』がものすごーく観たい気分なんですけど。
このカンパニーでもう1本、ぜひお願いしたいなぁ。


※第一部の感想と公演データは、こちら。→http://chiyorogi.blog.so-net.ne.jp/2009-11-08


◆◆◆◆


第一部観劇の日には工事中だったクリスマスツリー。
翌週にはもうイルミネーションで輝いていました。


正面のハートにさわると、てっぺんの鐘が鳴る仕掛け。
楽しそうでしたよー、子ども以上にお父さんが。(゚ー゚)


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ヘンリー六世 第一部:百年戦争@新国立劇場 [theatre]

三部作で合計9時間の大作、シェイクスピアの「ヘンリー六世」。
一挙上演は世界でもめずらしいという、若きシェイクスピアのデビュー作です。
これが現在、新国立劇場の演劇芸術監督・鵜山仁の演出により、中劇場にて上演中。
チケットのとり方によっては1日で3本一気に観ることも、3日連続で観ることもできるのですが、
一気は体力的にムリ、かといって三連チャンで観に行ったら仕事クビになるので(笑)、
ばらばらに分けて観ることにしました。

ずっと楽しみにしていた、土曜日は第一部観劇の日。
舞台は英仏の百年戦争(14~15世紀)のさなか、ヘンリー五世の死(1422年)から始まります。
この大事なときに、内輪もめばかりしているイギリスの貴族たち。
フランスには救世主ジャンヌ・ダルクが現れてイギリス軍を翻弄するものの、
やがてジャンヌはイギリス軍に捕らえられて火あぶりの刑に。
一方、戴冠式を行なうためにフランスへ渡ったヘンリー六世は、サフォーク伯から熱心に勧められ、
ナポリ王の娘マーガレットを王妃に迎える決心をする――。
と、ここまでが第一部のおはなし。

劇場に入ると、前方10列目ぐらいまで舞台がせり出していました。
しかも客席に向かって緩く傾斜しているので、奥行きのある舞台が隅々までよく見えるんです。
客席は思いのほか高齢者が多く、なかには二部続けて観るらしい人もいて、
ニッポンの高齢者は元気だなぁと妙に感心。
ロビーに掲示された登場人物の複雑な系図を、観劇前後と休憩時間に熱心に見ておられました。
わたしも見たんですが、さっぱり頭に入らない・・・(苦笑)

でも芝居は、おもしろかったです!
チャンバラというか戦闘シーンが多いのと、ストーリー展開に躍動感があって、ちっとも飽きさせない。
いい意味で、シェイクスピア若いなぁって思いました。

感想をいくつか。
●ジャンヌ・ダルク役のソニン
イギリス人目線で描かれるエキセントリックなジャンヌ像にぴったりでした。
声はよく通るし、剣術もなかなか。
●トールボット卿の木場勝己
知的で勇敢で、ちょっぴりお茶目(?)なキャラクターを好演。
百戦錬磨の名将ながら、仲間の裏切りと息子の死に絶望して死ぬ場面、ウルッときます。
●ヨーク公の渡辺徹
ちょっと芝居が軽いんでは・・・。体は重そうですが。(爆)
●ヘンリー六世の浦井健治
優しくて頼りない、影の薄い王ヘンリー。でも不思議と人を惹きつけるものがあるんですよね。
浦井くんもまさにそんな感じ。二部、三部が楽しみです。


※第二部・第三部の感想はこちら。→http://chiyorogi.blog.so-net.ne.jp/2009-11-25




[data]
劇作・脚本:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:小田島雄志
演出:鵜山仁
出演:浦井健治、中嶋朋子、渡辺徹、村井国夫、ソニン、木場勝己、中嶋しゅう、上杉祥三、ほか
公演期間: 2009年10月27日(火) ~ 2009年11月23日(月・祝)、新国立劇場中劇場
上演時間:第1部―1幕1時間30分、休憩15分、2幕1時間15分/第2部―1幕1時間25分、休憩15分、2幕1時間25分/第3部―1幕1時間35分、休憩15分、2幕1時間30分


◆◆◆◆


新国立劇場のある東京オペラシティでは、クリスマスツリーの準備中。


巨人も首を長くして待ってます。(?)


近くのベンチに座っていたら、足元にスズメが。


このあと、人のいるベンチの上にあがってきたんです。警戒心、なさすぎ。(ΦωΦ)

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印獣@PARCO劇場 [theatre]

ねずみの三銃士(生瀬勝久、池田成志、古田新太)という演劇ユニットの、5年ぶり第2回公演だそうです。
ちなみに第1回公演は、岸田國士戯曲賞を受賞し映画化もされている「鈍獣」(観てませんが)。
クドカン(宮藤官九郎)脚本の舞台はいっぺん観てみたいなぁと思っていたんだけれど、
春の「R2C2」ではチケット争奪戦に惨敗してしまったので、今回はそのリベンジ、みたいな?(違うか)



作品の舞台は、携帯電話の電波も届かない森の中の洋館。
ケイタイ小説家の飛竜(生瀬勝久)、絵本作家の上原(池田成志)、
風俗ルポライターの浜名(古田新太)の3人は、
それぞれ招待状につられて洋館へやって来て、地下室に監禁されてしまいます。
そこへド派手なセットとともに賑々しく登場するのが、自称・大女優の長津田麗子(三田佳子)。
彼女は、芸能生活45周年を記念して自叙伝を出版したいという。
その執筆者として指名された3人は、破格の条件を提示され、
「印」税生活を夢見て過酷な監禁生活に耐えながら、麗子の“半生”を創作することに。
古い資料をもとに書き進めるうち、次第に明らかになる麗子の過去と3人の関係。
彼らはなぜ指名されたのか、監禁生活に終わりはあるのか――。


という、ちょっと「ミザリー」を思わせるようなホラー・コメディ。
三田佳子をゲスト主役に据えたことが今回の最大のウリということで、
まあとにかく三田さんがいろいろやってくれます。
劇中劇の形式で麗子の半生が語られるなか、小学生時代も本人がランドセルしょって演じるし、
ヘンな歌だって歌っちゃう。

そんな若き麗子がようやく手に入れた役は、戦隊ヒーロー「海鮮ジャー」の悪役、「毒マグロ貴婦人」!(笑)
客席扉から登場した毒マグロ貴婦人を、ラッキーにも間近で拝めたんですが、
惚れ惚れするようなワル顔メイク&衣装でした。( ̄ー ̄)
このエピソードに空気の読めない絵本作家・上原が絡んでくるくだりは、バカバカしくて秀逸です。

後半は狂気の焦点が、麗子から別の人間に移っていく。
このあたりが、個人的にはいまひとつだったかなあ。
おもしろいけどメリハリがないというか、笑いと恐怖の落差がもっとほしかった気がする。
あと、セリフをかむ人が多かったんですけど、これって演出なんでしょうか?( ̄ェ ̄;)

えぐい芝居になるかと思いきや、意外とあっさりした後味。
そんななかで、お笑い芸人・上地春奈の沖縄弁パワーはすごかった。
何言ってるか全然わからないのに、通じるもんですね、言葉って。(笑)


[data]
パルコ・プロデュース公演 “ねずみの三銃士”第2回企画公演
印獣 ああ言えば女優、こう言えば大女優。
作:宮藤官九郎
演出:河原雅彦
出演:三田佳子/生瀬勝久・池田成志・古田新太/岡田義徳、上地春奈
東京公演日程:2009年10月13日(火)~11月8日(日)
上演時間:一幕75分、休憩15分、二幕75分


◆◆◆◆


夕食を食べていなかったので、観劇後はパルコのレストラン街へ直行。
以前入ったイタリア料理店はすでになく、今回はベトナム料理の「ニャー・ヴェトナム」に入りました。
このときラストオーダー10分前。


牛肉と野菜のフォー。お肉の火の通り具合も、スープの味もなかなかよかったです。
麺はもうちょっと少ないほうがいいなぁ。



デザートはココナッツミルクのチェー。底のほうにたっぷりの小豆と、タピオカが入ってます。


胃にやさしいメニューではあったけれど・・・ちょっと食べすぎ。( ̄ー ̄;


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世田谷カフカ@本多劇場+セカイカメラ [theatre]

先週、下北沢の本多劇場で芝居を観てきました。

NYLON100℃ 34th SESSION「世田谷カフカ」~フランツ・カフカ「審判」「城」「失踪者」を草案とする~
脚本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)
出演:三宅弘城、村岡希美、植木夏十、長田奈麻、廣川三憲、中村靖日、横町慶子、ほか
公演期間:2009年9月28日(月)~10月12日(月・祝)
会場:下北沢 本多劇場
上演時間:1幕1時間25分、休憩15分、2幕1時間20分





今回めずらしく、観劇前に予習のつもりで表題のカフカ3作品をんでおりました。
いつもはわざわざそんなことしないんですが、なんとなくカフカをあらためて読んでおきたい気がして。
最初に『審判』、次に『失踪者』。最後に『』を読了したのは観劇の前日でした。(セーフ!)
そしたら、「暗い」「ムズカシイ」「ワケわかんない」というカフカにもっていたイメージと全然違う。
ストーリーそのものは堂々巡りだし、どこにも救いがないんですが、
あまりに理不尽な展開はむしろブラックコメディっぽくて、読んでて可笑しくなるほど。

「世田谷カフカ」はこの3作品と、KERA作の評伝劇「カフカズ・ディック」、
そしてナイロンの劇団員たちの虚実とりまぜた日常をコラージュした内容になっています。
3人の俳優が自分自身の理不尽体験を語るトークショー(?)からスタートして、
劇中劇で劇団がカフカの芝居を上演しているところに、小説の登場人物が紛れ込んだり、
劇団員が携帯で盗撮した疑いで連行された先が、『審判』の予審の場面だったり。
しかもダンスあり、世田谷区長ズの生演奏あり、とまぁやりたい放題です。
ただ、話と人物がものすごく入り乱れているようでいて、つなぎ目が全然不自然じゃないし、
あれだけ詰め込んでも破綻することなく最後までもっていくパワーというか、才能というか。
すごいですよ、まったく。

で、芝居はいったいどういうストーリーなのかというと、そんなモノはなーい!(笑)
けれども解体・再構築されたカフカ劇を観ているうちに、〈物語〉を追うことから解放され、
スラップスティックのようにひたすら巻き込まれていくことの楽しさといったら。
こういう作品のありようが、まさにカフカ的なんじゃないかと思ったのでした。
あー、おもしろかった。


劇場内のグッズ売り場で、カフカの評伝劇を購入。

カフカズ・ディック

カフカズ・ディック

  • 作者: ケラリーノ・サンドロヴィッチ
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 単行本

どんなカフカが登場するのか、読むのが楽しみですv





ところで。
iPhoneを買って2か月以上たち、いまだに基本操作をマスターしていないワタクシ。( ̄ー ̄;
それでも何かと便利だし、使えば使うほどおもしろくて、もはやiPhoneは手放せない存在です。

便利な点その1。PCのアドレスに届く大量のEメール(主にメルマガ)を、電車の中でもチェックできること。
保存すべきメール以外は、先にiPhone経由でメールサーバーから削除してしまいます。
その2、マップと連絡先の連係プレー。
目的地のマップ検索から、iPhoneへの連絡先登録、道順表示までがおそろしく簡単にできてしまう。
自分の方向に合わせて地図が回ってくれるので、ナビゲートもわかりやすいです。


試しに「四ツ谷 胃腸病院」を検索。胃腸病院以外の赤ピンは、胃腸科のあるお医者さんです。


ダウンロードしたアプリはまだ少ないのですが。
最近入れたばかりなのが、9月24日にリリースされたiPhone向けアプリ、「セカイカメラ」。
これを使って本多劇場の「拡張現実」をのぞいてみました。


うわー、エアタグだらけ!

セカイカメラというのは、iPhoneのカメラを通して見える現実の画像の上に、
その場所で得られる情報がマンガの吹き出しっぽく表示されるアプリ。
ユーザー登録すれば、好きな場所で自分のつぶやき(エアタグ)が投稿できて、
その場所を訪れた別のユーザーは、空中に浮かんだエアタグを共有することができます。



エアタグのひとつを開くと、ユーザー名(消してあります)とひと言が。
写真だけのタグもいっぱい。

この日、役立つ情報はとくにありませんでしたが(笑)、
なかなか楽しいアプリです。しかも無料だしね。

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天変斯止嵐后晴@国立劇場小劇場 [theatre]

ついに、文楽初鑑賞です。

・・・と、言っていいものかどうか迷うところ。( ̄ー ̄;
なんたって、原作がシェイクスピアの『テンペスト』ですから。


テンペスト―シェイクスピア全集〈8〉 (ちくま文庫)



[data]
9月文楽公演 第三部「天変斯止嵐后晴(てんぺすとあらしのちはれ)」
原作:シェイクスピア「テンペスト(あらし)」
脚本・演出:山田庄一
作曲:鶴澤清治
出演:竹本住大夫、竹本綱大夫、鶴澤寛治、鶴澤清治、吉田簑助、吉田文雀、ほか
公演期間:2009年9月5日(土) ~ 2009年9月23日(水)
上演時間:1時間57分(休憩なし)



国立劇場の外観


舞台を中世の日本に置き換えているので、登場人物の名前も純日本風に変えてあります。
たとえば、
  • 弟の裏切りで国を追われたプロスペロー阿蘇左衛門藤則(あそのさえもんふじのり)
  • その娘ミランダ美登里(みどり)
  • プロスペローの宿敵の息子でミランダと恋仲になるファーディナンド春太郎(はるたろう)
  • プロスペローに助けられた妖精エアリエル英理彦(えりひこ)
  • 島の住人でプロスペローの家来キャリバン泥亀丸(でかまる)

てな具合。エアリエルが英理彦なんて、うまいネーミングだなぁ。

とりわけ秀逸なのは、タイトルの「天変斯止嵐后晴(てんぺすとあらしのちはれ)」。

  天変 くてみ  に れとなる (てんぺん かくてやみ あらし のちに はれとなる)

ストーリーを漢字七文字で表わしていて、見事と言うほかありません。



    左から、公演プログラム、公演チラシ、「天変斯止嵐后晴」のみのチラシ。
    手前はプログラムの付録、「床本集」。


まず冒頭、「暴風雨」の場で舞台に登場したのは三味線と琴を弾く7人。
孤島の窟(いわや)に暮らす阿蘇左衛門が方術を使って、海に大嵐を巻き起こしているわけですが、
邦楽のイメージとかけ離れた演奏が、迫力たっぷりなのです。三味線の音って、カッコイイ。

芝居が始まると、舞台上手に張り出した「床」に、太夫と三味線弾きが座っています。
物語と台詞を語る、太夫の言葉がイマイチ聞きとりにくいけど(こちらが慣れてないので)、
舞台左右に字幕が出ているのでだいじょうぶでしょう。

・・・と思っていたら、場面転換とともに「床」がぐるりと回って、太夫と三味線弾きが交代。
すると今度の語り、すっごく聞きやすくていい声なんですよ。
ちょうど美登里と春太郎が恋に落ちる場面でもあり、物語が俄然、生き生きしてくる感じ。
あとでプログラムを調べたら、豊竹呂勢大夫という人でした。
「ろせたゆう」って、なんかすごい名前だ。(゚ー゚☆

文楽好きな人がこれをどう評価するのか、興味のあるところですけど、
シロウトのわたしには、とっても楽しい作品でした。
だって、むかし懐かしNHKの人形劇みたいなんだもん。(笑)
妖精・英理彦が登場するときは、キラリラリン~♪ とテーマ音楽が流れるし、
仇を懲らしめる場面では、化け猫ならぬ化け鳥(!)たちが登場するし。
半獣人の泥亀丸が登場したときなんて、あまりのブサカワいさに客席がドッとうけてました。
ただ、携帯電話が登場するのはいかがなものかと思いましたが。(>▽<;;
(舞台を彩る異形の者たちの写真は、こちら。)

愛嬌たっぷりの妖精・化物たちに心和むいっぽうで、主役たちのかっこよさ、美しさにはうっとり。
「第四 森の中」の場では、美登里に気がある泥亀丸が彼女に迫ったり、
それを助けた春太郎と美登里がたがいにひと目惚れしたりと、
色っぽいシーンが続きまして、これがなかなかにリアル。
彼らがみな人形だということを忘れた瞬間でした。

クライマックスは太夫・三味線弾きの人数が増えて、演奏でも舞台を盛り上げます。
全員が元の窟に集まって事の真相を知り、大団円を迎えたあと、
方術を捨てた左衛門がひとり客席に向かって口上を述べる趣向は、まさにシェイクスピア。
こうして初文楽の楽しい一夜は幕を下ろしたのでした。


国立劇場




[おまけ]

ひとつ、びっくりしたこと。
客席でペットボトルのお茶を飲みながら観劇している人が、何人もいたんです。
文楽では客席があまり暗くならないから、丸見えだと思うんですけど。
これって、フツーのことなんでしょうか??

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