「明日の記憶」

広告代理店の部長として順風満帆な人生を送っていた男が、50歳を目前にして、
突然「若年性アルツハイマー病」の宣告を受ける。
ゆるやかに、そして確実に消えていく記憶と、家族とのいとおしい日々。
闘病の果て、男がたどり着いた「場所」とは――。

そんな物語を描いた映画、『明日の記憶』を初めて知ったのは、「ほぼ日刊イトイ新聞」内のコンテンツ、《『明日の記憶』とつきあう。》からでした。

根がひねくれ者なので、いわゆる「感動もの」と「純愛もの」は敬遠することが多いのですが、サイトを見ると「おや？」と目を引く名前が。
監督の堤幸彦さんです。

『池袋ウエストゲートパーク』や『トリック』の独特な映像テクニックで有名な堤さんですが、わたしが好きでよく見ていたのは、毎週金曜の夜にテレビ朝日で放送されていた『トリック』の1stシリーズ（2000年）。
じつはこの前番組だった『YASHA』にハマっていて、その流れで『トリック』も見はじめたんです。
だって、『YASHA』ではクールなボディガード役だった阿部寛さんが、新番組では堅物のトンデモ教授に豹変しているんですから！

・・・話をもどします。
このミステリードラマ『トリック』で堤監督は、コミカルなシーンを効果的に挿入しながら、意外とシリアスな題材をきちんと描いてもいました。
そんな堤さんに対して、『明日の記憶』のエグゼクティブ・プロデューサーも務める主演の渡辺謙さんは、真っ先に監督を依頼したといいます。

堤さんが撮るなら、ベタな泣かせ映画にはならないんじゃないか。
そう思ったことと、試写会でいち早くこの映画を観たという《柴犬陸さんの記事》でさらに興味がふくらんで、今日さっそく映画館へ観に行ってきました。

期待にたがわず、いい映画でした。
何度も泣いてしまいましたが、不思議とすがすがしい余韻が。
渡辺謙さんはもちろんのこと、妻役の樋口可南子さんも、とても自然な演技のなかに豊かな感情がこもっていて、最後まで引き込まれました。
あと個人的には、担当医役の及川ミッチーが好きです（笑）。

この映画がとくにすばらしいと思ったのは、表現がべたべたと説明的でないところ。
セリフでも演技でも、もっと引っぱろうと思えば引っぱれるところをスパッと切ってしまう。
そうして表現を研ぎ澄ますことで、かえってシンプルな真実が胸に迫ってきます。

それでも人間は生きていくのだ。
わたしは、ただそれだけを思いました。けっして悲観的な意味ではなく。

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『明日の記憶』公式サイト → http://www.ashitanokioku.jp/

『明日の記憶』とつきあう。→ http://www.1101.com/ashitanokioku/index.html

コメント 17

渡辺謙はかっこいいし
もう　そんな年代なので興味があります。
アルツハイマーには脳の活性化、トレーニングがいいようです
で自分は勉強してます？
by てつろう (2006-05-18 05:57) 

てつろうさん、おはようございます。
この病気は20代でも発症することがあるそうなので、
誰にとっても他人事ではありません。
プログラムに簡単な認知症チェックが載っていたので、
こわごわやってみたのですが・・・。
その結果は、とても恐ろしくてここには書けません（苦笑）
とりあえず、手先を使って脳の活性化に励みます！（ん？　勉強は？）
by チヨロギ (2006-05-18 10:51) 

チヨロギさん、こんにちは。
堤監督作品！！個人的に実はひさびさの懐かしい名前です。'００年前は好きな作品の裏を見れば必ずこの方がクレジットにいらっしゃったものです…。それ以来あまりテレビメディア自体、必要最低限しか見なかったので、出会いませんでしたが、IWGPもトリックも手法がとても好みでした。
テーマが重いようですね…、でもなんだかチヨロギさんの記事を拝見したら、興味をもってしまいました。公式サイト、今から見てみようかと思います。
私も実は、及川ミッチー…好きです（笑）。
by 鳥谷 (2006-05-18 17:25) 

本当に悲しいと言うか、辛い病気だと思います。
どこか痛いとか苦しいとかが有れば、寝ているだろうけど（まあ、痛いのも本当は大変なんですが・・・。）見た目がごく普通なのに、何も分からない、次第に日常生活まで送る事が出来なくなって行く。何とも、悲しい病気ですね。周りの理解が大切になるので、皆で考えたいと思わせる映画だと思います。
チヨロギさんの記事を読んで、ますます観たくなりました。(^-^)
本当に「他人事では無い！」と思います。そうなってしまったら、どうすれば良いのか。少しの覚悟をしておきたいものだと思います。
及川ミッチーは、役者さんとしての才能もありますよね。やはり、音楽をやっていた方は感受性が強いから、役に成りきれるのでしょうかね。ジョニー・デップみたいに♪(笑)。
by (2006-05-18 23:21) 

リンク＆トラックバック有難うございました。
このところ、渡辺謙さんのマスコミへの露出がスゴイですね。
この映画にかける意気込みが、並大抵のものではないと何度も確認させられます。
チヨロギさんがおっしゃってるように、及川ミッチー、なかなかやりますね。
大滝秀治さんの歌も心に残ります。
謙さんは勿論ですが、私は樋口可南子さんに圧倒されました。
TBさせてください。
by 柴犬陸 (2006-05-18 23:43) 

＞鳥谷さん、こんばんは。
堤さんの手法は独特で、クレジットで名前を見ると「やっぱり・・・」と思いますよね。といっても、私も最近はテレビをあまり観なくなり、名前を目にする機会はぐっと減ってしまいましたが。
今回はこのような映画なので、あのテクニックはかなり抑え目ですが、主人公が陥る認知症の恐怖の世界など、堤さんらしいシーンも中にはあります。それと、糸井重里さんが「すばらしいファンタジー」と評しているように、彼一流の一種の「つくりもの」的なところが救いにもなっているんです。
おっと、鳥谷さんもミッチー好き？　うれしいなぁ。出演シーンは長くはないんですけど、よかったですよーー！(^・^)
by チヨロギ (2006-05-19 01:42) 

＞saraさん、こんばんは。
私にも認知症の進んでいる高齢の叔父がいるんですが、この映画のように働き盛りでの発症だと、悲痛さは比べものにならないでしょうね。そんな時に家族として何ができるだろうと、いろいろ考えさせられました。
でも、観終わって重い気分で映画館を出たわけじゃないんです。不思議なんですけど、そこがこの映画のすごいところだと思います。よかったら、ぜひご覧になってみてくださいね。
ミッチーはniceでした。ぐっときました。そうか、ジョニー・デップ様とも音楽つながりだったんですね～。光栄です（笑）
by チヨロギ (2006-05-19 01:47) 

＞柴犬陸さん、TBありがとうございます。
私も朝の番組で謙さんを見ました。どの取材でも、この映画への謙さんの情熱がひしひしと伝わってきますね。
樋口可南子さん、すばらしかったです。きちんと「日常」を生きている人でなければできない、濃やかな演技だったと思います。
大滝秀治さんの歌も、印象的でしたね。生きることは時に滑稽だけど、それでもいいじゃないか。そんなことを強く感じました。
いい映画をおすすめいただき、感謝しています。
by チヨロギ (2006-05-19 01:48) 

映画の予告で泣きそうになりました（早っ！）
観終わった後、すがすがしいか～。それなら観てみようかな！
ミッチーは何の役だろう？って思ってましたが、お医者さんですか～。観なくては！！
by たかち (2006-05-19 20:45) 

私も観にいきたいと思っていますが　いけるかなぁ？
おっと　ミッチー好きでしたか　（＾－＾）
私もです～♪　山形でコンサートが先日あったのですが
行きたい行きたいと騒いでいたのですが　娘がヤダッ！のひとことで断念
良いんだぞーといっても　許して　くれませんでした（泣）
by kakora (2006-05-19 23:54) 

＞たかちさん　
この映画、悪い人や嫌な人がほとんど出てこないんです。
かといって、過剰に美化しているわけでもありません。
詳しくは書けませんが、ミッチーのセリフがまたいいんですよ～。
もし行く時は、ハンカチ＆ティッシュ必須でね！
by チヨロギ (2006-05-20 17:30) 

＞kakoraさん　
おっ、ここにもミッチー好き発見！(^.^)
でもコンサートは行ったことないんです。
せっかくのチャンスだったのに、残念でしたね～。
普段から時間をかけて、娘さんを洗脳・・・じゃなくて、
教育しておかないと！（？）
とりあえず、この映画のミッチーを一緒に観てもらうとか？
by チヨロギ (2006-05-20 17:31) 

＞トキナさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2006-05-20 17:39) 

本日、『明日の記憶』を観て来ました。感動ものでした！！
早速、ブログに書いてみました。リンクとトラックバックさせていただきました。宜しくお願いいたします。m(__)m
『ダ・ヴィンチ・コード』より、ず～っと良かったですよ。(^-^)/
by (2006-05-24 02:08) 

saraさん、リンクとトラックバックありがとうございます♪
さっそくそちらにお邪魔しますね。
『ダ・ヴィンチ・コード』も観ましたか。さすが早～い！
私も公式サイトで、コード探しゲームみたいなのをやりました（笑）
『明日の記憶』、たくさんの方に観ていただきたい映画ですね(^.^)
by チヨロギ (2006-05-24 23:19) 

実は ついさっき、テレビ朝日での放映を観た…ところです。(*^^)v
邦画を映画館で観るなんて つい最近になってから…な 不届きシネマＦＡＮの
私で ありますので、堤幸彦！←と言われて、ピン！とくる感覚を 持ち合わせて
おりませぬ実態。。。(*_*;A)　ですが、あっさりとした演出手法が かえって
情感を高める…そんな作品でしたね。引き込まれました。やはり 家族として
何が出来るか！？を 非常に考えさせられました。私が病んだら…見捨てられ
そうな気も するけど。。。ｏｒｚ （←(＠_＠;) お～い。落ち込むなよ～！）
及川ミッチー☆映画「キャシャーン」でも ＴＶドラマ「白い巨塔」でも 大いに
惹かれる役どころでしたが、今作でも いい感じで演じてましたネ！(#^.^#)
そ～言えば、“あのＣｈａｒｍｉｎｇな歌 路線”←最近 封印してるんではないです
か！？何歳になっても 爺になっても（!!）恐れずに（!?）やってほしいけど な。
彼なら ＯＫ( ｏ＾ーﾟ ）b …ですよネ～♪
by 流星☆彡 (2007-07-02 00:50) 

◇流星☆彡さん◇
もうテレビで放映されたんですね。月日が経つのは早いなぁ(ﾉ_-;)ﾊｱ…
私が堤さんの名前を知ったのはテレビドラマからなんですよ～。
映画通の流星☆彡さんがご存じないのも無理はないと思います(^.^)
　＞あっさりとした演出手法が かえって情感を高める
そうそう、まさにそのとおりの映画でした。
キャストもよかったですよね。夫婦2人はもちろん、それ以外の出演者も。
とくにミッチー！（笑）
「キャシャーン」は見ていませんが、シリアス物もコメディも器用に演じ分けていますよね。
歌は封印しているんですか？　そういえば近ごろ見ないですね。
ミッチー王子の華麗なる世界が見られないのは、とても残念です～(T_T)
by チヨロギ (2007-07-02 22:48)