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「花よりもなほ」 [cinema]

是枝裕和監督作品、「花よりもなほ」。

芸達者な出演者の顔ぶれに興味津々だったうえ、《たかちさんの記事》を読んだらストーリーも楽しそう。これは観に行かねば!

と思ったら、うちのご近所映画館では上映していないことが判明・・・(T_T)

で、免許なしの自分としては電車で行きやすいところ、有楽町マリオンの《丸の内ピカデリー2》まで足を伸ばすことにして、インターネットで指定席を購入した。
じつはオンラインで映画のチケットを買うのは初めてなんだけれど、これほど簡単・便利なものだとは! お金も持たなくていいし、並ばなくていいし。昔の指定席みたいに割増料金がかかるわけでもない。
いやはや、わたしの知らないところで世の中便利になっていたのですね~。
(っていうか、うちのほうの映画館がボロすぎ?)



[cast]

岡田准一(青木宗左衛門) /宮沢りえ(おさえ)/古田新太(貞四郎)/香川照之(平野次郎左衛門)/田畑智子(おのぶ)/上島竜兵(乙吉)/千原靖史(留吉)/木村祐一(孫三郎)/加瀬亮(そで吉)/平泉成(善蔵)/絵沢萠子(お勝)/夏川結衣(おりょう)/國村隼(伊勢勘)/中村嘉葎雄(重八)/寺島進(寺坂吉右衛門)/石橋蓮司(青木庄三郎)/田中哲司(横川勘平)/遠藤憲一(鈴田重八郎)/中村有志(神崎与五郎)/原田芳雄(小野寺十内)/浅野忠信(金沢十兵衛)

[story]

物語は、剣術がからきし弱いへっぴり侍・青木宗左衛門(宗左)の仇討ちを軸に展開する。
宗左は父の仇・金沢十兵衛を追って信州から上京してきたが、なかなか金沢を見つけられずに貧乏生活を強いられ、生活のために寺子屋を開く。
ところが、楽天的な長屋の住人たちや、潜伏中の赤穂浪士、また仇である金沢との出会いのなかで、次第に仇討ちの意味に疑問を感じはじめる宗左。
そして、暮れの押しせまるころ、彼はある決心をする――。

 

とにかく、キャストがみんな見事に役柄にはまっている。主役はもちろんのこと、たかり屋の古田新太さん、見栄っ張り侍の香川照之さん、悪人顔の大家・國村隼さん、色呆けな叔父・石橋蓮司さんなど、しょうもないけど憎めない人たちを、いかにも楽しく演じている感じなのだ。

とくにすばらしかったのは長屋のセット。
ボロボロに朽ち果てたような長屋は、建てつけが悪くて戸を開けるのもひと苦労、壁が薄くて隣家の話は筒抜け。はずれには共同の厠(もちろん汲み取り式!)もちゃんとあって、スクリーンから臭ってきそうなほど。
この圧倒的にリアルな存在感が、映画の見どころでもあったと思う。
ちなみに美術の馬場正男さん(78歳)は黒澤明監督の『羅生門』をはじめ、数々のTV・映画の時代劇に携わってきた大ベテランである。

町人の小ぎれいな長屋とは明らかに違う、社会の最下層の人たちが住む長屋。しかし住人たちはじつにたくましく、馬鹿な冗談を言い合いながら、毎日をしたたかに生きている。
「貧乏」=「不幸せ」=「憐れむべき存在」という図式はここでは当てはまらない。侍なんて、ちっとも偉かァないことを長屋の連中は見抜いているし、大家に対しても一方的に弱い立場ではなくて、時に逆転したり、対等におたがいを利用しあったりする。
人間貧しいからって、打ちひしがれて生きていると思ったら大間違いなのだ。

弱いことは、強いこと。
そんな価値観のひっくり返しが随所に見られて、すごく痛快な気分だった。
近くの映画館でも上映してくれたら、もう一度観に行くんだけどなぁ。


映画館のロビーには、出演者&監督直筆の色紙を並べたガラスケースがあった。
なかでも目を引いたのは、キム兄(木村祐一)の色紙の言葉。

  君、観に来たの?
  僕、チャーリー。

なんだか意味不明だけど、孫三郎の雰囲気が出てるかも~!(笑)

 

「花よりもなほ」公式サイト → http://kore-eda.com/hana/

 

花よりもなほ 愛蔵版 (初回限定生産)

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  • 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
  • 発売日: 2006/11/24
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花よりもなほ 通常版

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コメント 14

わぁ☆ 私も、水曜日から観に行こう、行こうと思っていたんです。
ちょっと、風邪がお腹に来たみたいで、家で安静にしてました。(T_T)
予告を観たら、画像が凄く綺麗で、監督が「誰も知らない」の是枝監督なんですよね! かなり期待しちゃってます。!(^^)!
ストーリーも、田舎侍の宗左衛門(岡田准一)が父の敵討ちの為に江戸に出て来るのですが、剣の腕はからっきし無い、というし(笑)。
公式サイトを覗いてみたら、長屋の様子が良く分かって、楽しそうで♪

チヨロギさん、有楽町マリオンまで行かれましたか~☆
もう一度観たいくらい良かったんですね。うーん、絶対に観なくちゃ!
「トランスポーター2」も観たいんですが、明日までなんですよね。。
by (2006-06-22 23:56) 

チヨロギ

◇saraさん◇
まあ、お体だいじょうぶですか? 本調子ではないのに、コメントをくださってありがとうございます。消化のいいものを食べて、ゆっくり休養してくださいね。
映画に出てくる長屋は途轍もなく汚いです(苦笑)。そして衣装(黒澤明監督の長女・黒澤和子さんがデザイン)も人によっては相当汚れていますが、私はむしろそこに惚れてしまいました。
それと監督の目線がとてもいいのです。長屋の人々に寄り添うような。
美しい時代小説というのはとかく上からの目線で、貧しい人々を悲劇的に描くことを好みますが、それは人間の真実を見ていないと思うんですね。この映画はその点、時代劇らしからぬ時代劇になっています。悲惨さは微塵もありませんから。
とても愉快で爽快な映画です。もしご覧になったら、ぜひ感想を聞かせてくださいね。楽しみにしています。
by チヨロギ (2006-06-23 00:57) 

たかち

きゃ~~~!行かれたんですね!!
宗左の出した答えは最高だと思います!あの時代では許されない事かもしれないけど、誰も悲しませずに仇討ちを果たしたところはめちゃくちゃいいです!!
ね、2回目も観たくなっちゃう映画でしょ♪
by たかち (2006-06-23 21:23) 

チヨロギ

◇たかちさん、行ってきましたよ~!
宗左の最後の仇討ち、よかったですね~(^.^)
ハラキリ平野や孫三郎の熱演(?)も最高でした!
憎しみを愛情に昇華させる「○○からモチ」という発想も、
すごくいいと思いました。(○○は使えないけど・・・^^;)
もう1回観たいのに、なんで近所でやってくれないのかしら!(怒)
ともあれ、いい映画を勧めてくださってありがとう~♪
by チヨロギ (2006-06-24 01:36) 

shikayu

チヨロギさんのブログ読んでたら、とても観たくなりました。
どこぞの映画評論家よりわかりやすく興味をそそる内容のおはなし、
ぜひその道に進まれてはいかがですか、いえほんとに!(^0^)
by shikayu (2006-06-24 09:10) 

kakora

良かったですか?
私もこの映画 見たいと思っていたものです 
あーでも行事が多すぎる 逃してしまいそう あーでも行きたいです~!
by kakora (2006-06-24 20:50) 

チヨロギ

◇shikayuさん◇
おほめの言葉、ありがとうございます~(^.^)
自分が好きな部分をネタバレしないように書くのはとてもむずかしくて、
そのように言っていただけるととてもうれしいです!
あまり映画は観ないほうなんですけど、これは当たりでした。
機会がありましたら、shikayuさんもぜひご覧くださいませ~♪
by チヨロギ (2006-06-24 22:34) 

チヨロギ

◇kakoraさん◇
よかったです(キッパリ)!
テーマは仇討ちだけど、明るい娯楽映画です。
是枝監督がこういう映画を撮る方だなんて、意外でした。
(重そうな気がして敬遠していた「誰も知らない」も、観てみたくなりました。)
スケジュールの合い間を縫って、なんとか観に行けるといいですね!(^.^)
by チヨロギ (2006-06-24 22:36) 

柴犬陸

チヨロギさんの劇評読んだら、観たくなりました。
出演メンバーもジャニーズ系あり、小劇場系ありで。
原田芳雄や石橋蓮司を見ると、「竜馬暗殺」を思い出す世代ですが。。
by 柴犬陸 (2006-06-25 15:47) 

チヨロギ

◇柴犬陸さん◇
バラエティに富んだ出演者でしょう?
古田新太さん、田畑智子さん、田中哲司さん、中村有志さんは『新選組!』の重要キャストでもありますし。岡田准一くんもクドカンものでおなじみですが、なかなか演技力があって魅力的でした。
なんにも考えず、ただ観て楽しめる映画です。チャンスがありましたら、ぜひ!
by チヨロギ (2006-06-25 18:10) 

やっと観て来ましたので、トラックバックをお送りしました。(^-^)
初めは、あまり書くこと無いかも、と思ってたのですが、書き始めたら書きたいことが次々と出て来て、長くなったので止めました(笑)。
やっぱり、奥が深い映画なのかもしれないと考えてしまいます。
DVDが出たらまた観たいと思っています。あ、ちょい気が早いかな?
by (2006-06-30 11:28) 

チヨロギ

◇saraさん◇
トラックバックをありがとうございました!
楽しんでいただけたでしょうか?
さっそく記事を読ませていただきますね!
楽しみ~♪
by チヨロギ (2006-07-01 00:32) 

Hiji-kata

こんにちは!
あまり頻繁に足跡を残すのもどうかと思い、少々遠慮して
いるうちに、あっという間の半月が過ぎていました。

「江戸の庶民を描いたものには、“憐れみの視点” というか、
貧しさに苦しむ人を “悲しい存在”として捉えたものが多いんだ。
でも、それって 人間というものを よく見ていないと思うんだよ。
この写真では、そんな悲惨な境遇に負けない “人間の素晴ら
しさ” を描いてみたいんだ」
これは「赤ひげ」制作発表時の黒澤明の言葉です。

ところで、上の「sara さん」へのコメントで、どなたかが、そっくり
のコメントを残してますねぇ・・・・・「黒澤さんもニッコリ」みたいな。
う~ん、「精神の近親性」 つよ~く感じましたぞ!
「監督の目線がとてもいいんです。人々に寄り添うような・・・・」
特にボク、この言葉が気に入りました! 頂いて帰ります(敬礼!)

【追記】
「笑の大学」や「三丁目の夕日」の記事にも コメントを残したいとも
思ったのですが、一度に多角的? に来られても ご迷惑でしょうし、
楽しみは次回以降に取っておくことにしました(^^)
また改めてお邪魔します。
by Hiji-kata (2007-11-25 11:41) 

チヨロギ

◇Hiji-kataさん◇
こんばんは、いらっしゃいませ♪
あらら、ひさしぶりに読み返したらこの映画、
黒澤監督にゆかりのあるスタッフが関わっていたんですね。
記事を書いたのにすっかり忘れていました(^^;)
「赤ひげ」制作発表時の言葉、教えてくださってありがとうございます。
初めて知りましたが、たしかにそっくりですね~(笑)
私がこれを書いたときに頭にあったのは、司馬遼太郎のことなんです。
監督の言葉ではありませんが、身分が低かったり貧しかったりする人たちを
“憐れみの視点”で美しく悲劇的に描いた司馬氏のエッセイを読んで、
違和感(というか反感)を持ったことがありました。
人間はもっとしぶとくて、したたかな生き物だと思ったからです。
その意味では、黒澤監督の想いにすごく共感します^^

 >この言葉が気に入りました! 頂いて帰ります
どうぞどうぞ! こんなものでよろしかったら、いつでもお持ち帰りください(笑)
コメントのタイミングについて、いろいろお気遣いくださって恐縮です。
でもコメントはいつでも大歓迎でございます。
次回のご訪問、楽しみにお待ちしております(^.^)
by チヨロギ (2007-11-27 03:07) 

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