SSブログ

あるお葬式の風景 [ひとりごと]

先月末に亡くなったニッカウヰスキー前社長、宇野正紘氏の葬儀が芝の増上寺で行なわれた。関係者として参列した知人の女性は、簡素で温かい式典にとても感銘を受けたという。

宇野さんは入社以来一貫して技術畑を歩んできた人で、工場長や生産技術研究所長を歴任したあと、社長に就任した。一方、料理の腕はプロ並みで、工場長時代にはたびたびお得意さんや従業員に手料理をふるまう「お食事会」を開いた。その買出しをよく手伝っていた知人は、素材を吟味した「ほんっっとうにおいしい」料理と、性別・年齢・地位を問わず分け隔てなく接する人柄を心から尊敬していた。

彼女の話によると、葬儀は無宗教で、香典・供物・供花はすべて辞退。笑顔の遺影に向かって参列者が献花を終えたあと、喪主である長男の誠一氏があいさつを行なった。宇野さんは人生の8割が「蝶」だったと言えるほど無類の昆虫好きで、休日といえば必ず一家4人で全国の蝶採集に出かけていたという。じつは知る人ぞ知る日本有数の蝶コレクターなのだ。

「父は偉大でした。いつか越えたいと思っていたけれど、何ひとつ越えることができなかった。父が残したたくさんの蝶を、これからも大切に守り、増やしていきます」

宇野さんは家族や周りの人々に、蝶の数に負けないほど多くのものを残したにちがいない。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。