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リスクマネジメントとメディア [散読記]

さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』という本を、例によって人に借りて読みました。数時間もあれば読めてしまう、会計学の超入門書みたいな本です。
内容の一例を挙げると、(1)1000円のモノを500円で買うのと、(2)101万円のモノを100万円で買うのとではどちらが得か。50%引きの(1)が得のような気がしてしまうけど、(2)は1万円も得しているのだから、断然(2)が得。つまり、損得は%ではなく絶対額で考えよう――といった感じで、簡単明瞭にお金のレクチャーをしてくれます。

「ローリスク・ハイリターンを狙え」というくだりで思い出したのが、資産運用とか金融の業界でよく使われる「リスクマネジメント」という言葉。想定しうるすべてのリスク要因をつぶして、利益を最大化しましょう、という考え方です。
しかしこの「リスクマネジメント」って、どうも胡散臭くてキライです。
投資家から莫大なお金を集めて運用するファンド屋さんたちなら、もんのすごく利回りが低くたって利益は相当な額になるわけで、だったらリスクは低ければ低いほどいい。
でも最近、この手の考え方がモノづくりの世界にまではびこっているような気がするのです。

たとえば、国民の好感度が高く、スキャンダルを起こしそうになく、商品イメージを損なう恐れのない無難なタレントを、大企業がこぞって採用するテレビCM。ヒット作の二番煎じとリメイクで視聴率(あるいはスポンサー)や観客動員数を手堅く得ようとするドラマや映画。リスクを極力避けて、コアなファンに訴えるよりも薄く広く確実にお客を取り込もうってわけですが、これじゃあまるで自分の足を食べるタコです。
「株主利益を最大化するのが企業の使命」みたいなことがよく言われますが、モノのつくり手たる制作者、それを伝えるメディアが利益拡大のための器にすぎないなら、オリジナルなものなんて永遠に生まれなくなってしまう。オリジナルほどハイリスクなものはないですからね。

リスクマネジメントは、あらゆるリスクを片っぱしから数値化します。「数字の持つ説得力はすごい」と『さおだけ屋』の著者も書いていました。
だけど、そういう数字だけではモノづくりの価値は測れないはず。誰にも真似できない何かを創りだす力は、一か八かのギャンブルを許すリスクの許容力にかかっているのですから。


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