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NODA・MAP「ロープ」@シアターコクーン [theatre]

2006年のお芝居も、これで見納め。
野田秀樹作・演出、NODA・MAP第12回公演「ロープ」を観てきました。

[CAST]
タマシイ:宮沢りえ
ヘラクレス・ノブナガ:藤原竜也
JHNDDT:渡辺えり子
カメレオン:橋本じゅん
グレイト今川:宇梶剛士
AD:三宅弘城
サラマンドラ:松村武
入国管理局ボラ:中村まこと
明美姫:明星真由美
レスラー北:明樂哲典
レスラー南:AKIRA
D:野田秀樹

[STORY]
舞台は、とある弱小プロレス団体のリング。
その四角いリングの真下に、ひとりの女が人知れず棲みついている。
彼女の名はタマシイ(宮沢りえ)。未来からやってきたという。タマシイは目の前で起きることを、何でも臨場感たっぷりに実況するのがうまかった。
そんな彼女を発見するのが、引きこもりのプロレスラー、ノブナガ(藤原竜也)。彼は「プロレスは八百長ではない」と信じ、自分が八百長試合に組み込まれることを拒絶しているのだった。
やがて、リング上では試合が始まる。1試合ごとに次第にエスカレートしていくガチンコ勝負を、リングサイドから克明に実況するタマシイ。
彼女が実況するリングはいつしか、現在から過去、過去から未来へと場面を転じていく――。

 パンフレットの表紙 

 

(以下、一部ネタバレを含みますのでご注意ください。)

題名の「ロープ」とは、プロレスリングの四方に張られたロープのこと。
プロレスにはあってアマチュアレスリングにはないこのロープが、ここでは見世物としてのプロレスの象徴であり、社会の「内」と「外」を隔てる境界線にもなっています。

物語の鍵を握るのが、コロボックルを自称し、なぜか実況中継がうまいタマシイという存在。
少年のように身のこなしが軽く、澄んだ声でよどみなく実況し、感情表現が重苦しくない宮沢りえさんは、この役にぴったりはまっていました。

なぜ題材がプロレスなのか。
なぜレスラーの名はノブナガなのか。
タマシイの正体は誰なのか。
物語が進むにつれて、それぞれの意味が次第に明らかになっていきます。

プロレスリングという戦場で繰り広げられる、どこかで見たことのある暴力の光景。それは、いじめや虐待、DVから、テレビの中の戦争と言われた湾岸戦争、9・11、そしてイラク戦争に至るまで、あらゆる「暴力」がすべてパラレル(相似形)なのだと訴えているかのよう。
これらの暴力を目の前にして、リングの内側で起きていることしか伝えられないメディアには、当事者意識が決定的に欠けています(パンフレットの野田秀樹さんの言葉によれば、「リアリティーに対する距離感のなさ」)。
だからこそ暴力の真実は、リングの外にある残酷で理不尽な現実を、無力な一市民の声で「実況」することでしか見えてこないのです。

タマシイが語る、耳を覆いたくなるほど凄惨な暴力の実況中継を経て、すべての謎が解けたとき、突きつけられたメッセージの重さに打ちのめされるような思いでした。
でもラストシーンは、希望へのかすかな道筋を暗示しているようで、はりつめた緊張がふっと和らいだ感じ。
それは野田さんが、結局のところ人間というものを信じているからなのかもしれません。

最初と最後に流れるギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン」がヒットしたのは1972年。
ベトナムではアメリカが北爆を再開し、日本では沖縄がアメリカから返還された年です。
同じアジアの片隅で生きている自分が、いま「未来」のためにできることって何だろう。
野田さんから渡された宿題を手に、途方に暮れています。


====


お芝居が終わった時間が意外と早かったので(9時ごろ)、帰りにちょっと寄り道して表参道を歩いてきました。

 

表参道のイルミネーション、《akarium》(アカリウム)。右が表参道ヒルズです。

 

 

ヒルズにある期間限定のSMAP SHOP。この日はすでに閉店していました。残念!

 

8年ぶりに復活したというイルミネーションは、発光ダイオード(LED)を内蔵した高さ6メートルの塔。
これが約1キロのケヤキ並木をほんのりと照らしています。

でも正直、少し寂しい。時間が遅くて人が少なかったせいもあるのですが。
やっぱり昔みたいに、ケヤキの木のイルミネーションが見たかったな。


====


NODA・MAP「ロープ」概要 http://www.nodamap.com/02rope/gaiyou.htm

 

新潮 2007年 01月号 [雑誌]

新潮 2007年 01月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/12/07
  • メディア: 雑誌

↑新作戯曲「ロープ」が掲載されています。

 

アローン・アゲイン

アローン・アゲイン

  • アーティスト: ギルバート・オサリバン
  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 2004/06/16
  • メディア: CD

↑余談ですがこの曲、兄の結婚披露パーティのBGMとして、ピアノ演奏させられた覚えがあります。
いま思えば、めでたき日に信じがたい選曲(笑)


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コメント 18

kakora

キャストを見ただけでも 行きたくなるようなお芝居です
最後に緊張がほぐれ・・・人間を信じているような・・・ますます見たいです
先日東京に行ったときに 時間があれば子供たちも表参道に行きたいとも
行っていたのですが・・・
なんと閉会式だけど2時間 とても無理でした
チヨロギさんに見せていただいて よかった(^-^)
by kakora (2006-12-21 02:56) 

たかち

プロレスの話ってのはなんとなく知ってたんですが、やっぱり奥が深そうですね~~。
新作の戯曲がもぉ雑誌に掲載されてるんですね!早いな!!
ちょっと雑誌を立ち読みしてみたい。
by たかち (2006-12-21 20:51) 

何故に「ロープ」なのか、チヨロギさんのお話で凄く良く分かりました。確かに、実際の出来事がメディアによって見世物になっているような気がしてしまいますよね。つまりは、他人事のように・・・。
私は、今日『硫黄島からの手紙』を観て来ましたが、本当に考えさせられる映画でした。他人事で済ませてはいけないと感じました。
表参道の夜の風景、綺麗だけどすっかり変わってしまいましたね。私が良くROCKのコンサート等に行っていた頃とは随分違います。
ソネブロは、今日もまだ重いですね; 早く普通に動きますように。
by (2006-12-21 22:34) 

柴犬陸

チヨロギさんのレビューが的確に伝わりました。
キャストもとても魅力的だし、野田氏らしいテーマのようですね。
でも、正直なところ私には苦手で、「オイル」以来観ることがありません。(すみません)
竜也はどうでしたか?それをお聞きしたくて。。
by 柴犬陸 (2006-12-21 23:41) 

柴壱

キャッ!!
私も、19日に所用で原宿へ出かけたので、夕方暗くなるまで待って
写真撮ってきたんですよ。アングルは違うけど、全く同じ場所で!!(笑)
やっぱり街路樹のイルミネーションに比べると、ちょっと寂しい感じですね。
5時半頃でしたけど、SMAP SHOPは、「一体なに、コレ?」という大行列でした。
整理券まで配られていたみたいで。期間限定なんですね。
同潤会の雰囲気をそのまま残した同潤館の外観は、趣があっていい感じでした。
最後の写真は、歩道橋の上でしょうか…? 同じことやってます(^^ゞ
ヒルズの中も撮ったのですが、相変わらず「撮影禁止」になってました^^;

あらあら、NODA MAPの話に全く触れないうちに長くなってしまいました。
by 柴壱 (2006-12-22 00:17) 

チヨロギ

◇kakoraさん◇
おっしゃるとおり、キャストを見ただけで行こうと決めてしまいました(笑)
テーマは重いですが、台詞のやりとりは漫才みたいでゲラゲラ笑ってしまうし、後味もよく、とてもおもしろいお芝居でした。
表参道は、せっかく近くまでいらしたのに時間の余裕がなくて残念でしたね。
あまり絵になっていない写真ですが、少しでも雰囲気がお伝えできたならよかったです(^.^)
by チヨロギ (2006-12-22 04:06) 

チヨロギ

◇たかちさん◇
私もプロレスの話という以外、ほとんど予備知識なしで行ったんです。でも始まってみたらわかりやすくて、とても共感できる作品でした。
雑誌掲載、早いですよね~! 会場に売っていたので買ってきたのですが、最後のところを読むたびにジーンときています(涙)
by チヨロギ (2006-12-22 04:07) 

チヨロギ

◇saraさん◇
テレビカメラやスクリーン越しに見る出来事は、おっしゃるように他人事になりがちですね。伝える側に、痛みに対する感受性がなければ、結局は事件の表層しか捉えることができないという気がします。
「あったことをなかったことにしてはいけない」というタマシイの台詞があるのですが、saraさんがご覧になった『硫黄島からの手紙』にも当てはまりそうな言葉ですね。レビューを読ませていただくのを楽しみにしています。
表参道は昔のほうが、断然雰囲気がよかったです。今度のイルミネーションも、スポンサーの名前が下に入っていて、広告塔みたいなんですよ~(苦笑)
by チヨロギ (2006-12-22 04:09) 

チヨロギ

◇柴犬陸さん◇
私のほうは食わず嫌いで、NODA・MAPは初観劇だったんですよ~。いままでは野田さんへの勝手な先入観があったり、松たか子さんが苦手だったり・・・^^;
今回は何といってもキャストでした!
まぁ、『新選組!』の勝海舟で野田さんに親しみを持ってしまったというミーハーな理由もあるのですが(笑)
竜也くんは、まだ完全にこなれていないような印象でした。もちろん演技自体はうまいのですが、何かが足りないような。(何だろう?)
by チヨロギ (2006-12-22 04:11) 

チヨロギ

◇柴壱さん◇
おぉ、なんという偶然でしょう(笑)
やっぱりイルミネーション、寂しいですよね。シンプルすぎて、盛り上がりに欠けるというか。
SMAP SHOPはすごいことになってるんですねー! いったい何を売っているんでしょう?
最後の写真、そうです! 歩道橋の上です。私のほかにも何人か、同じことをしてる人がいました^^;
ヒルズはいまも「撮影禁止」なんですか? でもみなさん撮ってますよね。あの札に何の意味があるのか・・・(笑)
by チヨロギ (2006-12-22 04:12) 

noric

プロレス団体の舞台って珍しい?
by noric (2006-12-22 18:26) 

チヨロギ

◇noricさん◇
しかも! 本物のプロレスラー(AKIRAさん)が出演しているんですよー。これはめずらしいかも。
by チヨロギ (2006-12-23 11:30) 

shikayu

変ったテーマのお芝居ですね~!!
でも野田秀樹さん・・・どんな感じなのかな・・
いつも思うのですが、チヨロギさんがお芝居や映画を鑑賞する際
「これを観よう」と決める理由って、ありますか?
私のようにまったく知識もないものは、
行ってみたいけどどれに行こうか決めることも難しいので・・・(笑)
出ている役者さんや興味あるタイトルとかで決めてもいいものですか(笑)
チヨロギさんのご覧になるものは皆ワクワクで・・・
それもこれもチヨロギさんの話術のせいですが(笑)
あっ「せい」、じゃなくて「おかげ」ですヽ(∇⌒ヽ)(ノ⌒∇)ノ(笑)
by shikayu (2006-12-25 10:10) 

チヨロギ

◇nakashiさん、はじめまして。
nice!をありがとうございます。
by チヨロギ (2006-12-26 02:02) 

チヨロギ

◇shikayuさん◇
私も野田さんは今回が初めてだったんです。
もっと人を煙に巻くようなタイプかと思っていたんですけど(笑)、この作品に限ってはメッセージがストレートで、すごくわかりやすかったです。
渡辺えり子さんとのからみも軽妙で、夫婦コントを見ているようでした。
 >出ている役者さんや興味あるタイトルとかで決めても
まさにそれで決めてます!
なんたって私の場合、ミーハーが服を着て歩いてるようなものですから^^;
ただ、自分が何かのテーマに興味を持っていると、お芝居でも本でもそのテーマに引きつけて見て(読んで)しまう癖があるので、たとえば芝居通の方とは見るポイントがかなりズレているかもしれません。
でも本人が楽しければそれでいいんです!(笑)
だから、私の言うことはあまり信用しないほうがいいかもしれませんよ~^_^;
by チヨロギ (2006-12-26 02:08) 

チヨロギ

◇yutakamiさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2006-12-28 00:50) 

チヨロギ

◇ビッケママさん、nice!をどうもありがとうございます。
by チヨロギ (2007-01-02 13:29) 

チヨロギ

◇ayaさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-30 23:39) 

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