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十一ぴきのネコ@紀伊國屋サザンシアター [theatre]

開演前から客席にネコたちがうろうろして、「おなか減った~」「何か食べ物ないかなあ」。
座席は2列目だったんですが、すぐ前の最前列にかわるがわるネコが座りにきて、隣の女性と世間話したり。
すっかり楽しい気分になったところで、一斉に「ニャー!」と鳴き声が響き渡って開演です。

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十一ぴきのネコ
作:井上ひさし
演出:長塚圭史
音楽:宇野誠一郎、荻野清子
出演:北村有起哉、中村まこと、市川しんぺー、粟根まこと、蟹江一平、福田転球、
大堀こういち、木村靖司、辰巳智秋、田鍋謙一郎、山内圭哉、勝部演之
東京公演:2012年1月10日(火)~1月31日(火)紀伊國屋サザンシアター
上演時間:約2時間30分(休憩15分)



原作は、絵本好きには有名な馬場のぼるの人気シリーズ。
これを井上ひさしが1971年に戯曲化したミュージカル作品なんですが、演出の長塚圭史といい、小劇場系の役者さんたちといい、どうみてもミスマッチ(失礼)なところが気になって、ミュージカルが苦手なくせに観に行ってしまいました。
でもでも、おもしろかったー!

いつもおなかを空かせている10匹の野良ネコたちのところに、同じく野良ネコのにゃん太郎(北村有起哉)がふらりとやってきます。
このままじゃ飢え死にするだけだと集団自殺を図ろうとする10匹に、大きな魚が住む湖へ冒険の旅に出ようと誘うにゃん太郎。
やっとたどり着いた湖で、みんなは力を合わせて大きな魚を仕留めるのですが・・・。

脚本も役者さんも力があるせいか、どのネコもキャラが立っていて愛嬌たっぷり。
テーマ曲っぽい「十一匹のネコが旅に出た」、にゃん太郎の教養が光る「シェイクスピア全作品」、無茶な歌詞が笑える「魚の子守唄」と耳に残るナンバーが多く、音楽の楽しさも満喫できます。
とくに印象に残ったのは、にゃん十一=山内圭哉のかっこよさと、にゃん太郎=北村有起哉の尋常じゃない汗の量。人間スプリンクラーのようでしたもん。(@_@;)

11匹は冒険のあと、野良ネコ共和国をつくります。そして10年が過ぎ、にゃん太郎はリーダーの座を追われる一方で、9匹のネコは権力の座にのぼりつめていく。
そして衝撃の結末。

ずっしーんときて、いろんな思いが頭を駆けめぐりました。
あからさまなメッセージとは違う、答えのない問いを投げつけられたような。
いまも胸がざわついています。


ところで、この作品には2種類の台本があって、今回は時代性の色濃いテアトル・エコー版が使われたそうです。
ゴーゴーを踊るとか、ベトナム戦争とか、赤尾敏の演説とか、確かに年代を感じさせるセリフも多かった。
そういえば昔、数寄屋橋でよく見かけたなあ、赤尾敏の演説。(←年バレw



[おまけ]

観劇前のランチは、トマトとシャンピニオンのガレット@ブレッツカフェ。
オーガニックのシードルがおいしかったー( ̄▽ ̄)=3 プハァー





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三谷幸喜イヤー・コンプリート [theatre]

先週の初め、パルコ劇場で「90ミニッツ」を観てきました。
(今週はシアタートラムで「その妹」を観たのですが、それはまたの話。)

キャストは西村雅彦と近藤芳正。あの「笑の大学」(舞台版)の2人です。
残念ながら上演当時(1996年、98年)は三谷さんの舞台に縁がなく、DVDでしか観てないんですけど、この2人のコンビがふたたび三谷作品にとなれば、期待しないほうが無理ってもんです。

今回の舞台は、ある大学病院の一室。
交通事故に遭った9歳の少年が運び込まれ、緊急手術をすれば命が助かる状態でありながら、父親は信仰上の理由で承諾書にサインをしようとしない。
なんとか彼を説得しようとする整形外科医(西村雅彦)と、輸血を伴う手術を拒む父親(近藤芳正)との激しいやりとりは、妥協点を見出せないままに時間が刻々と過ぎていく。
「90ミニッツ」=90分とは、少年の命を救う決断をするための、ぎりぎりのタイムリミットなのです。

コメディ的要素を封印し、場面転換もなく、どんでん返しもカタルシスもない舞台。
何度も攻守入れかわっては堂々巡りをする2人の議論の行く末だけが、物語を推し進めていく力となっているのですが、そのテンションがだんだんこっちにも乗り移ってくる感じ。
すっかり心拍数が上がってしまいました。

テーマがテーマだけに、内容は賛否両論あるようですけど、価値観をめぐる議論に勝ちも負けもないし、世の中に絶対的な正しさなんてない。その意味ではリアルな作品だったと思います。
価値観の違う隣人とわかり合うのはむずかしいけど、それでもなんとか共存していくしかないんですよね。
とても見ごたえのある、おもしろい舞台でした。



2011年は三谷幸喜生誕50周年を祝う「三谷幸喜大感謝祭」ってことで、演劇・映画・テレビ・小説合わせて7本の新作が発表される年でした。(詳しくは、こちらなど → 「演劇ライフ」記事
どうやら小説だけは執筆が間に合わなかったようですが、残り6本はこの「90ミニッツ」で終了。
わたしもどうにかチケットがとれて、無事6本コンプリートしました。(あっ、ドラマはまだ録画を観てなかった・・・)

新作舞台4本のうち、唯一ブログにUPできなかったのが「国民の映画」。
ナチス・ドイツで宣伝省大臣を務めたゲッペルスと、彼をとりまく映画人たちの、戦争と芸術をめぐる物語です。
小日向文世はじめ、段田安則、風間杜夫などキャストも魅力的で、深く余韻の残る作品でした。
ただ、これを観劇したのは3月17日。
まだ首都圏では余震が多く、電車のダイヤも大幅に乱れ、安全上の理由で公演を中止する劇場も数多くありました。
そんななか、どうにかたどり着いたパルコ劇場では、開演直前に三谷さん本人が舞台に登場し、観客にあいさつをしたのです。(全文は、こちら → PARCO劇場公式ブログ

「こういう時だからこそ、劇場のあかりを消してはいけないんだと、僕らは思いました」
この言葉にどれほど力づけられたことか。
迷ったけど、来てよかったと思いました。



文章ばかりじゃさびしいので、少しばかりランチ写真を。
しかしパスタばっかり食べてるなぁ。


下北沢「ラ・ベファーナ」のパスタランチ(ナイロン100℃「ノーアート・ノーライフ」観劇前に)。
写ってないけど、ドレッシングたっぷりのサラダやラザニアもおいしいです。




三軒茶屋「イル・ピッツァイオーロ」のパスタランチ(シス・カンパニー「その妹」観劇前に)。
パスタはもちろん、温野菜が美味! おみやげにお菓子までいただいてしまいました。



たぶん、この記事が今年最後の更新になると思います。
ではでは、みなさんよいお年をー♪


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奇ッ怪 其ノ弐@世田谷パブリックシアター [theatre]

またまたご無沙汰でございます。
前回更新してから約1か月がたち、風はすっかり秋めいてきました。
猛暑でもまったく食欲が落ちなかったのに、このままおいしい季節に突入してしまうなんて・・・。( ̄◇ ̄;)

8月後半は、ン十年ぶりに履歴書を書き、試験と面接を受けてきました。
一般常識とか漢字書き取りとか、ネットやiPhoneのアプリでにわか勉強した甲斐あって(?)、無事合格。
母の介護があるので在宅の仕事なんですが、つまり単価はかなり安いんですが( ̄ー ̄;
とりあえずほっとしましたー。

・・・近況報告はこのくらいにして。

先月末、世田谷パブリックシアターで『奇ッ怪 其ノ弐』を観てきました。
その1にあたる2009年の『奇ッ怪~小泉八雲から聞いた話』は観てなかったんですけど、ブログの感想とか読んでおもしろそうだなぁと思っていて、今回は行ってみることにしました。

[data]
現代能楽集Ⅵ 『奇ッ怪 其ノ弐』
作・演出:前川知大
出演:仲村トオル、池田成志、小松和重、山内圭哉、ほか
東京公演:2011年08月19日(金)~2011年09月01日(木) 世田谷パブリックシアター
上演時間:約1時間40分(休憩なし)

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 公演パンフレットより

手前に向かってゆるく傾斜した舞台には、いくつか穴があいていて、そこから時々亡霊らしき人々が。
ここは廃墟となった神社で、そこに神主の息子である矢口(山内圭哉)がやってきます。
勝手に住み着いていたホームレスの男、山田(仲村トオル)と話をしているうちに、再開発業者の橋本(池田成志)と、地質学者の曽我(小松和重)が登場。
数年前にこの村は大地震に見舞われ、地下から発生した硫化水素ガスで多くの命が失われていました。
最近父親の霊を見るので理由を知りたくて里帰りした矢口と、この村を温泉街として再開発したいと張りきる橋本らを前に、山田は昔語りを始めるのですが・・・。

作品のテーマは「鎮魂」、つまり死者の声に耳を傾けることで、さまよう霊を鎮めること。
突然の息子の死が受け入れられず、彼が臓器提供した相手を探さずにいられない母親や、妻をうつ病による自殺で亡くしたことから病院不信に陥り、にせカウンセラーになる夫。暴行される男性を見殺しにしたために、強い罪の意識にさいなまれる男。語り手と演じ手がくるくると変わりながら、死をめぐる短いエピソードが次々と展開していきます。
現在と過去を行ったり来たり、でも現在の4人の会話が軽妙でおかしいので、重さを引きずらずに物語がぽんぽん前に進んでいく。鮮やかです。
仲村トオルさんのトボケぶりも楽しいけど、池田成志さんは時々、そこにいるだけでおかしい(笑)。アドリブも快調なようで、途中、小松和重さんがツボに入って笑いがとまらなくなってました。

そして最後に語られるのは、神社の「あの日」の物語。
村人みんなで祭りの準備をしながら、笑ったりふざけたり、夢を語ったり。
そんな日常の風景が一瞬で失われるシーンでは、やはり大震災を思わずにいられませんでした。
死者は語ることで、生者はその声を聴くことで、やっと前に進むことができるのかもしれない。
深い悲しみの中にも、救いを感じるラストでした。

いわゆる「怪談」ではないけれど、異界と現世が入り組んだ構造になっていて、思い込みが何度もひっくり返されたり、亡霊たちの不思議なしぐさの謎が解けてアッと思ったり。
飽きさせない展開で、おもしろかったです。
「其ノ参」があったら観るぞー。



渋谷方面で芝居を観ると、帰りにかならず寄るのが表参道の「omo」。
今回はこんなお菓子を買ってきましたー。


左の「サクッと塩トマトスナック」は、すっぱしょっぱい味。後味はしっかりトマトなので、トマト嫌いにはおすすめしませんw
右は「クロワッサンラスク」のココア味。軽くてほんのりビターなところが、うんまいです。


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ベッジ・パードン@世田谷パブリックシアター(追記あり) [theatre]

待ちに待った「ベッジ・パードン」観劇の日。
どういうわけだか猛烈な眠気に勝てず、観客の拍手を聞いてハッと我に返りました。
しまった! 芝居の内容、ひとっつも憶えてない・・・。

・・・・

という夢を見ました。観劇の前日に。
まったくもう、いやな汗かきましたよ~(;´д`)


[data]
シス・カンパニー公演「ベッジ・パードン」
作・演出:三谷幸喜
出演:野村萬斎、深津絵里、大泉洋、浦井健治、浅野和之
公演期間:2011年6月6日(月)~7月31日(日) 世田谷パブリックシアター
上演時間:3時間5分(15分の休憩あり)



「三谷幸喜生誕50周年大感謝祭」の今年、舞台で上演される新作4本のうち3本目がこの「ベッジ・パードン」です。
作品は夏目漱石の英国留学中のエピソードをモチーフにしていて、世田谷パブリックシアター芸術監督の野村萬斎が、主人公の漱石役。
深津絵里とか大泉洋とか、周りを固めるキャストもあまりに魅力的で、チケットが取れるか心配だったのですが、先行予約で無事入手。見上げる首が痛くなるほどいい席でした。
4本目もこの調子でいきたいなぁ。

物語の舞台は、1900(明治33)年のロンドン。国費留学生として英国滞在中の夏目金之助(漱石の本名)が、新しい下宿に引っ越してきます。
そこには商社に勤める日本人のソータロー(大泉洋)も住んでいるのだけど、英語上達のためだからといって日本語を禁じられ、金之助はがっかり。
ソータローと違って英語が流暢にしゃべれず、引きこもりがちな金之助が、唯一安心して話せるのが使用人のアニー(深津絵里)。
下町生まれでコックニー訛りがきつい彼女は、"I beg your pardon?" が "bedge pardon?" に聞こえるというので、金之助は彼女に「ベッジ」というあだ名をつけ、次第に二人は親密な仲になっていきます。
ベッジの弟グリムズビー(浦井健治)も金之助を一方的に気に入るのですが、おかげで彼のとんでもない企みに金之助は巻き込まれることに・・・。

ストーリーはほろ苦いエンディングを迎えるものの、全体にはコメディな要素たっぷり。
野村萬斎の現代劇ってどうなのかなと思ったけど、ぎこちない物言いや独特の間のとり方といい、姿勢がミョーによすぎるところ(とくに首の角度)といい、英国にも英語にもなかなかなじめない金之助になりきってました。
深津絵里はもう、かーわいーい♪(デレデレ) 相変わらず声がいいんですよねー、声が。
教養はないけど真実を見通す目をもっているベッジを、愛情こまやかに演じてます。切ないです。
舞台は初見でしたが大泉洋、「笑いは任せろ」的余裕を見せつつ、ソータローの屈折した心情もよく伝わるいい演技でした。
浦井健治については、パンフレットに印象的なエピソードが。三谷さんに伝えたいことがあると、犬を主人公にした童話を書いて提出したんだそうです。彼って・・・もしかして不思議ちゃん?
そして、浅野和之さん(←突如「さん」付け)。脱帽です。
叔母との旅』で演じた10役を超えて、今回は11役に挑戦。三谷さんの並々ならぬ対抗意識を感じます。(笑)
下宿の大家さん夫婦にシェイクスピア学者、シャーロキアンにはおなじみのブラッドストリート警部、果てはビクトリア女王から飼い犬のミスター・ジャックまで、その演じ分けはお見事と言うほかありません。
彼がビクトリア朝のあらゆる英国人をたった一人で演じるのには、じつはワケがあるんですけどね。

ところで、この作品では「言葉」にまつわるコンプレックスとかアイデンティティというのがキーになっているのだけど、もうひとつ大きな役割を果たすのが「夢」。
ちなみに冒頭のわたしの「夢」は、正夢とならずにすみました。
こんなにおもしろかったら、眠たくなるわけないですもんね。
・・・でもよかったぁー(ホッ)


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 稽古風景。公演パンフレットより


[追記]
前売り券は終了していますが、当日券は全ステージ発売されるそうです。
公演日前日の電話予約方法は、↓こちら。
http://www.siscompany.com/03produce/33bedge/tojitsuken.html (シス・カンパニー)
http://setagaya-pt.jp/news/2011/05/post_163.html (世田谷パブリックシアター)



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黒い十人の女@青山円形劇場 [theatre]

仕事がひと息ついたので、お芝居の話を。
先月末、青山円形劇場でナイロン100℃公演「黒い十人の女」を観てきました。

1961年に製作された市川崑監督の同名の映画を、KERAが舞台化したもの。
映画のほうは未見なので、原作がどの程度アレンジされているのかはわかりませんが。
とりあえず言えることは、映画を観てなくてもオモシロイぞー! ってことです。

物語の舞台は1960年代のテレビ業界。
プロデューサーの風松吉(みのすけ)は、次々と降りかかる難題もするりするりとこなしていく有能な男、しかも女にはやたらモテる。
妻(峯村リエ)のほかにベテラン女優(松永玲子)、印刷会社社長(村岡希美)、CMガール(新谷真弓)、新人歌手(中越典子)、エレベーターガール(緒川たまき)など9人の愛人がいて、みんなおたがいの存在に薄々気づいている。
移り気な風に不満を持ちながら、なぜか風と別れられない彼女たちは、「いっそ彼が死んでくれたら」と風の殺害を共謀。
妻が経営するレストランに集まった10人の女たちと、殺害計画に気づいて妻に泣きつく風。そして妻がとった驚くべき行動とは――。


まず、人形と化した登場人物たちが倉庫から運ばれてきて台座に置かれ、彼らが動きだした瞬間に舞台上の時間が1960年代に飛ぶ、という冒頭の演出が秀逸。一気に引き込まれます。
「叔母との旅」や「ハーパー・リーガン」でも堪能した小野寺修二の振付は、今回もキレのいい動きがめちゃくちゃかっこよかった。

キャストもほぼ文句なし。
みのすけの風は、全然イケメンじゃないところが妙にリアルでした。マメで、優しくて、優柔不断で。
ふわふわとした存在感のなさに、ギョーカイ人の浮ついた感じとか孤独感がよく反映されてたと思います。
女優陣も期待どおり。
肝のすわりっぷりが頼もしい妻役の峯村リエ、哀れだけど笑いを誘う女社長の村岡希美、自己チューなCMガールの新谷真弓など、女性の内面を描くのが妙にうまいKERAさんだけあって、それぞれに説得力があります。
劇の後半で展開される女たちの復讐劇にはぞくぞくしました~。(ニヤリ)

あと登場人物でちょっと気になったのが、新進女優(奥村佳恵)とアナウンサー(小林高鹿)。
アナウンサーはイケメンなのに全然モテないタイプで、劇が進むにつれて皮膚病の手がどんどん悪化して大変なことに。これっていったいどんな意味がこめられているのでしょうねー。考えすぎか。(笑)
新進女優は一見ピュアで美しいんだけど、風松吉を女にしたような軽薄さと風にはない図太さをもっている。
結局、女って怖ーい、ということですね。(←強引なまとめ)


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公演パンフレットより。
舞台となった1960年代のテレビ番組表が載ってます。
懐かしい~と思った人。歳がバレますよ。(^^;


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ぼっちゃま@PARCO劇場 [theatre]

はじめはスルーするつもりだったんですけど、母が吾郎ちゃんを観たいと言うので、ダメもとで申込み。
意外にもあっさり当選して、しかも2列目センターという良席でびっくりです。
新国立の「象」は撃沈だったのになぁ。この差はなに?



[data]
パルコ・プロデュース公演「ぼっちゃま
作:鈴木聡
演出:河原雅彦
音楽&ピアノ:佐山雅弘
キャスト:稲垣吾郎、白石加代子、高田聖子、中村倫也、大和田美帆、谷川清美、福本伸一、小林健一、柳家喬太郎、梶原善
東京公演日程:2011年5月7日(土)~6月5日(日) パルコ劇場
上演時間:第1幕60分・休憩15分・第2幕75分


昭和25年の東京郊外で、旧・大地主の家に暮らす「ぼっちゃま」こと井上幸一郎(稲垣吾郎)が主人公。
父親の形見である骨董品を売ったお金で放蕩する彼を、唯一の理解者・ばあや(白石加代子)が優しく見守っている。
幸一郎はある日、日ごろ疎遠な姉(谷川清美)・弟(中村倫也)・妹(大和田美帆)との絆を深めようと彼らを呼び寄せるが、集まった3人の目的は、本家の長男幸一郎にお金を借りることだった――。

というような話なんですが、内容はもうコテコテのコメディ。
冒頭、舞台に登場する稲垣吾郎と白石加代子に拍手が起きちゃうんですよ。これは新喜劇か?(笑)
いかにもウケを狙ったセリフや演出が多くて(まあ実際よく笑いましたが)、この手の雰囲気にあまり慣れてない自分には、ちょっとおしりがモゾモゾこそばゆい感じ。
とはいえ、独特の美学と倫理観を持ち、膨大な量のセリフをハイテンションで撒き散らす主人公は、意外と(失礼)滑舌のいい吾郎ちゃんにぴったりではありました。

イケイケな世の中に反発し、かといって仕事をするわけでもなく、親の形見を売っては酒と女に費やす日々。
親父が道楽で買った器だから、その使い道として放蕩は正しいというような屁理屈を幸一郎は力説します。
むちゃくちゃなようでいて、妙に説得力もある。いわば「あぶく銭」ですからね。
愛人(高田聖子)を心から愛しているのに女遊びがやめられず、でも愛人の浮気には耐えられない。
矛盾を抱え込んで悩む幸一郎を、ありのままに全肯定するのがばあや。
AとBの選択肢があったとして、普通の人は一方を選んで迷いを切り捨てるけれども、ぼっちゃまはAもBも捨てずに持ちつづけている、そこがすばらしいんだというばあやの話(←かなり大ざっぱに端折ってます)、これまた納得できたりするのです。

白石加代子&柳家喬太郎(元太鼓持ちの骨董商役)のシニア組はさすがにうまい。軽妙かつ安定感のある演技が全体の重石になってます。
ステテコ姿の梶原善も哀愁漂っててよかったです。いちばん親近感あったかも。( ̄◇ ̄;)
あと中村倫也ってかわいいー。ちょっと注目してみようかな。

途中、「えっ、そーいう展開?!」的な幽霊シーンもありつつ、物語はハッピーエンド。
こそばゆい感じは最後まで消えなかったものの、出演者の細かい表情まで間近に見られて楽しかったです。






井上家の相関図@公演パンフレットより。
きょうだい全員、母親が違うという設定です。
そのわりに仲がいいんですけどねー。


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ろくでなし啄木@東京芸術劇場&銀河劇場 [theatre]

おひさしぶりです。
みなさまお元気でいらっしゃいますか。(硬っ)

まずは近況報告から。
今月半ばの連休を利用して、甥っ子(姉の長男)の結婚式のために福岡へ行ってきました。
ただ出席すればいいだけかと思ったら、遠方ということもあってけっこう準備がたいへん。体力だけが売りだったわたしも、1週間前にウイルス性胃腸炎で寝込んでしまいました。まあ、おかげで当日には体調万全でしたけどね。
友人でぎっしりの結婚式、子どもが走りまわるにぎやかな披露宴と、楽しい一日を過ごすことができました。
唯一の心残りは、もつ鍋も博多ラーメンも食べるチャンスがなかったことかなー。(゚-、゚)


 雪のちらつくチャペルにて。兄が撮った写真を無断借用。



そんな慌ただしいなか、この2か月で観劇した舞台は「大人は、かく戦えり」「焼肉ドラゴン」「ろくでなし啄木」の3本。
「大人は、かく戦えり」では芸達者な役者4人の激しい“バトル”を堪能できたし、「焼肉ドラゴン」では日韓の悲しい歴史を背景にした、ささやかで大きな物語に胸を熱くしました。

そして、「ろくでなし啄木」です。
脚本が三谷幸喜、出演が藤原竜也・中村勘太郎・吹石一恵の3人ときたら、アレですよ。
2004年NHK大河ドラマ「新選組!」(脚本:三谷幸喜)の、沖田総司・藤堂平助・八木ひでのトリオじゃないですか。
純正なる「組!」ヲタとしては、これを観ずに死ねるかってなもんです。
で、1月には池袋の東京芸術劇場、2月には天王洲の銀河劇場で、しかと目に焼きつけてまいりました。
お財布と運に恵まれたら、もっと観たかったくらいです~(T^T)



  [data]
  「ろくでなし啄木」
  作・演出:三谷幸喜
  出演:藤原竜也、中村勘太郎、吹石一恵
  東京公演:東京芸術劇場 中ホール 1/7(金)~1/23(日)、銀河劇場 2/17(木)~2/26(土)
  上演時間:第1幕75分、休憩15分、第2幕75分


舞台にまず登場するのは、テツ(中村勘太郎)とトミ(吹石一恵)。
石川啄木(藤原竜也)の没後10年に建てられた歌碑の前で再会した二人が、12年前のある一夜の出来事を回想するかたちで、このあと再現シーンが続きます。
東北の温泉宿を訪れたピンちゃんこと石川一(はじめ=啄木の本名)と、友人のテツと愛人のトミ。
3人でふざけているうちに些細なことから機嫌を損ねた一は、テツを騙して金をせしめようと、テツを誘惑しろとトミをけしかけます。
この企みが思わぬ結果を招き、一は失踪。
いったいこの夜にほんとうは何があったのかが、初めはトミの回想として、次にテツが知る真実として語られ、最後には幽霊となった一が、食いちがう二人の記憶の謎を解いてみせるのです。

なにしろ啄木の「ろくでなし」ぶりが半端じゃありません。
トミに気があるテツの前でわざといちゃつく、すぐに拗ねる、人にたしなめられると逆ギレする。
才能ある作家は品行方正であってはならないという、一種の強迫観念から暴走する啄木を、竜也くんはじつに魅力的に演じています。
いっぽう勘太郎くんのテツは、エネルギッシュに飛んだり跳ねたり、むちゃくちゃ元気。
旅費を3人分負担した挙げ句にお金を巻き上げられるお人よしだけど、人生の裏表を知りピンちゃんの弱さを鋭く追及するあたり、メリハリがあって巧いんですよねー。
吹石一恵さんも、初舞台とは思えないくらい堂々と、生き生きと演じていました。
なにしろ3人ともすごく楽しそう。やっぱり「組!」の友情はホンモノだなぁと、ひとり悦に入っておりました。(´_ゝ`)

ただ、1回目に観劇したときは、正直言って最後のほうの流れがしっくりこなかった。
啄木の独白シーンが少々重すぎるというか、失踪前と後の啄木像が分断されている感じがして、自分にとっては謎解きがちょっと消化不良な印象が残ったんです。
でも1か月後にもう一度観たとき、その印象はきれいに消えていました。
啄木はなぜ不可解な行動をとったのか、あの一夜が彼に何をもたらしたのか。
独白シーンに軽やかさが加わったぶん、テツとトミの存在感が引き立ち、あの一夜の意味がかけがえのないものに思えて、啄木の心にぐっと寄り添うことができたような気がします。
ラストに3人で言う決め台詞のトーンもすごく明るくなってて、一瞬えっ? と驚いたけど、それもまたよかったです。



ところで、2回目の観劇日は2月22日。
わたしにとっては親愛なる谷啓さんの誕生日であったわけですが、この日はもうひとつうれしいことが。
何回目かのカーテンコールで3人が上手に並んで立ったとき、「ちょっと待ったー!」の声が。
なんと、下手から三谷幸喜さんが、マイク片手に登場したのです。
どよめく観客に三谷さんは、本日勘太郎くんにめでたく長男が誕生したことを報告。
本人はマチネとソワレの合い間にすっ飛んで病院に行ってきたらしく、吹石さんによると「送られてきた写メールに、見たことのない顔をした勘太郎さんが写っていた」とか。
三谷さんから大きな花束を贈られた勘太郎くん、照れながらも超うれしそうでした。
見ているこっちも幸せな気分。最高の一日でしたー♡


 リハーサル風景。公演パンフレットより


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じゃじゃ馬馴らし@彩の国さいたま芸術劇場 [theatre]

先月の終わりごろに観てきたんですが、そのあと旅行に出かけたり、その後始末でバタバタしたりで、すっかり遅くなってしまいました・・・って、いったい誰に言い訳してるんだか(^。^;)



彩の国シェイクスピア・シリーズ第23弾『じゃじゃ馬馴らし』
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:蜷川幸雄
出演:市川亀治郎、筧利夫、山本裕典、月川悠貴、ほか
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
埼玉公演日程:2010年10月14日(木)~30日(土)
上演時間:第1幕1時間25分、休憩15分、第2幕1時間5分(合計2時間45分)



蜷川幸雄演出のオールメール(全員男優)によるシェイクスピア・シリーズ、これが5作目だそうですが、わたしが観るのは「お気に召すまま」に続いて2作目です。
「お気に召すまま」のほうは主演が成宮寛貴と小栗旬だったから、客席は女の子たちの異様な熱気に包まれていましたっけ。(観劇記事はこちら
今回の主演は市川亀治郎&筧利夫。うって変わって会場では、和服の女性も何人か見かけました。さすが歌舞伎業界でござる。

さて、シェイクスピアの「じゃじゃ馬馴らし」というのは、現代では何かしら演出を工夫しないと、上演がむずかしいと言われている作品です。
なぜなら、男が女を「馴らし」て従順な妻に変えるという、ありえない(?)設定の作品だから。
その「馴らし」も食べ物を与えないとか眠らせないとか、晴れの舞台で恥をかかせるとか、ほとんど虐待に近い。
でもそれが今回、じつに楽しい喜劇に仕上がっているのですよー。

物語は北イタリアのパドヴァが舞台。主な登場人物は、資産家バプティスタの娘であるキャタリーナ(市川亀治郎)とビアンカ(月川悠貴)の姉妹、ビアンカにひと目惚れするルーセンショー(山本裕典)、そしてヴェローナから来た絶賛婚活ちうの紳士ペトルーチオ(筧利夫)の4人です。
口が悪く気の強いじゃじゃ馬・キャタリーナと、淑女を絵に描いたような美しいビアンカ。キャタリーナに手を焼くバプティスタが、姉が結婚するまでは妹を結婚させないと言うものだから、ビアンカの求婚者たちは困り果ててしまいます。
そこにやってきたのがペトルーチオ。お金さえ持っていれば誰でもOKな彼は、キャタリーナと強引に結婚したあと、彼女を従順な妻にするためにあらゆる手で調教していくのですが・・・。

冷静に考えるとむちゃくちゃな話を、さらにむちゃくちゃな演出でねじ伏せたという感じ。もちろんいい意味で、です。(笑)
男優だけで演じるのはシェイクスピア時代にならったことだし、酔っぱらい男のスライに旅芸人一座が見せる芝居という劇中劇の枠組みも、戯曲にもともと書かれていること。そこは意外でもなんでもないのですが、蜷川版がこんなに楽しい作品になったのは、やっぱり役者個人のワザを存分に引き出した演出の力だろうなぁと思います。

市川亀治郎のキャタリーナは、歌舞伎の女形からくる所作の美しさもあって、言動は粗暴なのにかわいくて魅力的。すぐ近くの通路を通ったとき、うなじから背中にかけての美しさに見とれてしまいました。そのくせ、ときどき男の地声が出るし、見得も切る。なんでもアリって感じです。
対照的な妹を演じる月川悠貴がまたキレイなんですよ~。女を演じているというわざとらしさがない。しとやかなふりをして、じつはルーセンショーを意のままにする小悪魔ビアンカ、ステキすぎます。
そして筧利夫演じるペトルーチオ。登場シーンから長台詞を猛烈な早口でまくし立てて観客を唖然とさせ、クワガタムシみたいな珍妙な扮装で登場して爆笑を誘う。しかもこのハイテンション、ノンストップ。とんでもないヤツですよ彼は。
(クワガタの証拠写真は、筧利夫さんのブログに。とくとご覧くださいw)

クライマックスでは、すっかり従順な妻になったキャタリーナが夫の命令に従い、「妻は夫に仕えるべき」というスピーチを長々と語ります。
でもこの場面。ペトルーチオのお株を奪う長台詞をすらすらと、生き生きと話すキャタリーナは、ただ大人しいだけの妻に収まったようには到底思えないのです。途中、夫の剣を引き抜いて床に突き刺すところなんて、従順とは程遠いイメージで迫力たっぷり。
結局じゃじゃ馬を「馴らす」ことは、酔っぱらい男が見る一幕の夢に過ぎないのかも。なにしろ最後の場では、夫ルーセンショーに従わないビアンカという、新たなじゃじゃ馬も生まれていることだしね。

いやはや、じつに痛快な作品でございました。



公演プログラムより。月川さん、スッピンでも充分イケてます。


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叔母との旅/ハーパー・リーガン [theatre]

今月は偶然にも、旅をめぐる芝居を2本観ました。
1本目は「叔母との旅」。

シス・カンパニー公演「叔母との旅」
原作:グレアム・グリーン
劇化:ジャイルズ・ハヴァガル
翻訳:小田島恒志
演出:松村武
出演:段田安則、浅野和之、高橋克実、鈴木浩介
期間:2010年8月20日(金)~2010年9月19日(日)
会場:青山円形劇場
上演時間:2時間5分(休憩15分)

銀行の支店長を勤め上げ、ガーデニングにいそしみつつ引退生活を送る独身男ヘンリー。母親の葬儀の日、50年ぶりに叔母オーガスタと再会する。70代後半ながら若い恋人と暮らし、奔放な生活を送る彼女に誘われるまま、ヘンリーは旅に出ることに。ロンドンからブライトンへ、次はオリエント急行に乗ってパリからイスタンブールへ。果ては南米アルゼンチンからパラグアイへと奇妙な旅はつづく。叔母が語る波乱万丈な昔話に戸惑いながら、次第にヘンリーは人生に新たな輝きを見出していく――。



翻訳劇で、キャストはベテラン男優4人とくれば、もう観ずにはいられません。
なぜって、わたしの脳内には「海をゆく者」の記憶が刷り込まれているからです。
あの芝居でのおじさんたち(失礼)があまりに愉快でかわいくてステキだったから、「叔母との旅」もきっと楽しいに違いない!
そんな思い込みでチケットをとったのでした。

いちばんの見どころは、20役以上のキャラクターを4人だけで演じること、そしてヘンリー1人を4人で演じ分けること。
場面ごとに分けるんじゃなく、台詞がつづいている途中でどんどん役者が入れ替わっていくんです。
・・・すごい。
キャラが立っているから、たくさんの人物が入り乱れても、観ていて混乱することはありません。女役だって全然OK!(とくに浅野さんw)
ヘンリーに至っては、ひとつの旋律を何小節かずつ違う楽器で奏でているような感じ。
音色はさまざまだけど、ひとつながりのメロディとしてちゃんと響いてくるんですよね。

それと、息の合った流れるようなパフォーマンス。
これは振付家の小野寺修二によるステージングが見事というほかありません。
※参考までに、小野寺氏のパフォーマンスはこちら↓。
 「カンパニーデラシネラ ある女の家

さて物語のほうは、“ぶっ飛んだ叔母”に巻き込まれ、ヘンリーの人生はモノトーンから極彩色へ。
ありきたりでない終わり方も、なかなかよかったです。


◆◆◆◆


もう1本は、ひさびさのパルコ劇場で「ハーパー・リーガン」を。

パルコ・プロデュース公演「ハーパー・リーガン」
作:サイモン・スティーヴンス
訳:薛 珠麗
演出:長塚圭史
出演:小林聡美、山崎一、美波、大河内浩、福田転球、間宮祥太朗、木野花
期間:2010年9月4日(土)~2010年9月26日(日)
会場:パルコ劇場
上演時間:約2時間35分(休憩15分)

ハーパー・リーガンは父危篤の知らせを受け、上司に仕事を休ませてほしいと懇願するが、あっさり拒絶されてしまう。生活のため、娘の学費のために必死で働いてきた彼女だが、不意にその家庭を、夫と娘を残したまま、誰にも告げずに父親に会いに行く。2日間の短い旅のなかでさまざまな人と出会い、新たな「真実」に傷つきながら、彼女は自分の人生と向き合うことに――。



ブリティッシュロックが鳴り響く舞台に、主人公ハーパー・リーガン(小林聡美)が現れる冒頭のシーン。
この曲がカッコイイ~!(だれか曲名を教えて~)

シーンのほとんどはハーパーと誰かの対話で劇が進んでいくのですが、台詞と空間の間(ま)のとり方が心地よくて、話に引き込まれてしまいます。
物語の背景にあるテーマは、ネットに依存する社会や衰えるジャーナリズム、家族の断絶などなど。でも料理の仕方がスタイリッシュなせいか、重すぎておなかいっぱい・・・てなことにはなりません。
役者の演技も言葉も自然で、どのエピソードも身近に感じられました。

小林聡美のハーパーは、ほとんど感情をむき出しにしない静かな演技。だからこそ、語られる言葉が胸に響き、語られない言葉が胸を揺さぶるのかもしれません。

 ハーパー「人生に確かなことがひとつだけある。それは、人生に確かなものなんてひとつもないってこと」

そう、そうだよね。
人の数だけ、真実はあるのだから。

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8月の観劇は、初スズナリと黙阿彌オペラ。 [theatre]

今月観たお芝居は2つ。
1本目、「ジェットの窓から手を振るわ」は、初スズナリでもありました。
小さな空間にぎゅう詰めの観客。遅刻でもしようものなら、座席にたどり着けません。( ̄ー ̄;


ポスターの後ろの暗くて急な階段をのぼって2階へ。ちょっと小劇場ツウな気分?


  ●月影番外地その2「ジェットの窓から手を振るわ」
  作:千葉雅子
  演出:木野花
  出演:高田聖子、坂井真紀、宍戸美和公、渡辺真起子
  期間:2010年8月4日~2010年8月13日
  会場:ザ・スズナリ
  上演時間:2時間(休憩なし)


空港の売店の店長として軽食を売るあゆこ(高田聖子)を中心に、有機農家から野菜を届けに来る赤木(坂井真紀)、ウンチク好きな謎の常連客・与那嶺(宍戸美和公)、あゆこの同級生で元スッチーのキャリアウーマン(←死語?)渡瀬(渡辺真起子)という4人の40代女性の、「あたしの人生これでいいの?」的なストーリーがテンポよく展開されていきます。

世代が世代なので、もっと身につまされる痛いお話かと恐れていましたが、全然ダイジョーブでした。(ホッ
4人の「おひとりさま」の生き方は三者三様、いや四者四様ですが、どれも「あるある~」って感じ。
渡瀬だけは、どこかの連ドラで見たような人物造形でしたけど、みんなそれぞれ共感できるんですよね。
与那嶺役の宍戸さん、キャラが相当強烈なのに不自然さがないところがすごい!
ラストもこれが正解というんじゃなく、数ある選択肢のひとつに一歩踏み出してみたというような、軽やかな終わり方がよかったです。


◆◆◆◆


2本目は、井上ひさし作「黙阿彌オペラ」。
執筆を断念した新作戯曲「木の上の軍隊」の代わりに、井上さんが上演を希望したという作品です。
サザンシアターのロビーには幻の舞台、「木の上の軍隊」のポスターも。
以前、藤原竜也が出演したテレビ東京「ソロモン流」で、これの撮影風景が放送されていたっけなぁ。
もう新作を観ることはかなわないのだと思うと、悲しくなります。


プログラムは2種類あって、これは舞台写真が掲載されてるほう。
もう1種類は稽古風景が掲載されていて、一緒に観劇した姉はそちらを購入しました。


  ●こまつ座公演「黙阿彌オペラ」
  作:井上ひさし
  演出:栗山民也
  出演:藤原竜也、北村有起哉、大鷹明良、松田洋治、朴勝哲、熊谷真実、内田慈、吉田鋼太郎
  期間:2010年7月18日~8月22日
  会場: 紀伊國屋サザンシアター
  上演時間:約3時間40分(休憩15分)


時は幕末から明治にかけて、場所は両国橋西詰にある小さなそば屋。
狂言作家の二世河竹新七(のちの黙阿彌)と、そば屋で知り合った仲間たちが「株仲間」を組み、店に捨てられていた女の子・おせんを育てていくことになります。
文明開化の波に乗り、おせんは芸者を経てオペラ歌手になり、株仲間は国立銀行を設立。
そんななか、あくまでニッポンの歌舞伎・狂言にこだわる新七は・・・。

というオハナシ。
人情味あふれる中にも風刺がきいていて、流れるような日本語も美しく、おもしろい舞台でした。
新七を取り巻くお調子者4人は、バブルに踊らされ、グローバル資本主義に突き進んで大コケしちゃった現代日本人そのもの。
これをいま上演したかった作者の気持ち、わかるような気がします。

新七役の吉田鋼太郎はじめ、みんな愛すべきキャラクターを生き生きと演じていてよかった。
ムサシ」とはがらりと変わって、瞬間湯沸かし器な江戸っ子・五郎蔵を演じる藤原竜也も新鮮でした。
そば屋の女主人役・熊谷真実の声が聞きとりにくかったのと、おせん役の内田慈のオペラがいまひとつだったのが、ちょっと惜しかったかなー。
でも楽しかったです。カーテンコールの粋な演出も含めて。


母が買った缶バッジ。よく似てますよねー。


◆◆◆◆


[観劇の前に・・・]

ジェット編:

うなぎの煮こごり+志ら焼定食@野田岩

黙阿彌編:
soba.jpg
野菜天せいろ(二八そば)@小松庵
※芝居の舞台がそば屋「仁八そば」だということを、この時点では知りませんでした。あとでびっくり。

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