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「12人の優しい日本人」@渋谷PARCO劇場 [theatre]

少し古い話なんですが、昨年暮れのあわただしい時期、渋谷のPARCO劇場へ『12人の優しい日本人』を観に行ってきました。
プレオーダーの抽選に当たり、しかも席は前から4列目のど真ん中! 舞台がやたら近かった。
おそらく去年の運はそこで使い果たしたと思うけど、宝くじを買う計画も、受験する予定もないから全然オッケーでございます。

ロビーではたくさんの花の真ん中に、香取慎吾さんからの赤い祝花が。いつの日か三谷幸喜さんの脚本で、ぜひ舞台に挑戦してほしいと思う人です。
劇場の中へ入ると、前方の端っこあたりの席に、八嶋智人さんそっくりの人を発見。本人でしょうか? 上演直前と直後、何気に後ろを振り返ってみせたりするところが本物くさいと思うんだけどな・・・。

さて、『12人の優しい日本人』とは、「もし日本に陪審員制度があったら」という想定のもとに書かれた一幕劇です。
無作為に選ばれた12人の陪審員が一室に集められ、ある殺人事件の被告が有罪か無罪かを評決するために討論します。ところが、すべて直感のみで判断する人、思いっきり私情をはさむ人、ゲーム気分で楽しんでしまう人など、被告の運命を任せるにはあまりに頼りない人ばかり。
ほんとにこれで評決が成立するのか? と初めは思わせながら、次第に議論は意外な方向へ展開していきます。

よく似たタイトルからもわかるとおり、この作品はヘンリー・フォンダ主演の有名なアメリカ映画、『十二人の怒れる男』から着想したもの。
テンポがよくスリリングな議論の展開にわくわくする、じつにおもしろい裁判映画ですが、あの作品と共通しているのは、12人の陪審員が話し合うという舞台設定のみ。三谷作品は完全なコメディだし。
でも、三谷さんもパンフレットで書いているように、『怒れる男』を見ておいたほうが舞台を何倍も楽しめることは確かです。

で、今回の感想は・・・おもしろかったー!
登場人物一人ひとりのキャラクターがしっかり立っていて、それぞれに見せ場があり、しんみりさせたり笑わせたりしてくれます。

お芝居が始まって、まず驚いたのが陪審員2号の生瀬勝久さんの声の強さ。
無理に声を張り上げるわけでもなく、美声とも違うんだけれど、ガツンと訴えかけてくるような声の存在感があります。
それにくらべると、陪審員11号の江口洋介さんは、ちょっと押しが弱い感じがしました。初舞台というせいもあると思うけど、もう少し共演者を食うぐらいの厚かましさがほしいところ。
といっても、役者として華があるし、声もいい。三谷さんが書いているように、演技力はTVドラマ『白い巨塔』で証明されていると思うし(わたしはあのドラマの総集編を見て、本編を見ていなかったことを猛烈に後悔しました)。これをきっかけに、どんどん舞台に挑戦してほしいものです。

女性陣では、陪審員5号の石田ゆり子さんのキャラクターがおもしろかった。
こうありたいという理想の自分と現実との間にギャップがあって、なのにそれを本人が一向に自覚していないというか。いろんな意味で、すごく親近感をもってしまいました。


日本でも近い将来、陪審員制度と似た「裁判員制度」というのがスタートします。
非常に個人的な話ですが、うちの父が生前、裁判官をしていたということもあって、一般市民が話し合いで有罪無罪を決めるのってどうなのかなー、と思っていました。
法律を知り抜いた専門家でさえあれだけの時間と労力を費やして、人が人を裁くことの極度のストレスのなかで仕事をしていたのに、同じことが裁判員の人たちにもできるんだろうかと。

でも、この舞台を見て、すごくいい制度なのかもしれないと思いました。
生きてきた環境も年齢も違ういろんな職業の人たちが、自分の経験と感性と、(願わくば)良心を総動員して被告の有罪無罪を議論する。劇中でもいろいろと脱線はあるものの、弁の立つ人も口下手な人も、頑固一徹な人も意志薄弱な人も、12人すべてがその責任を立派に果たしていました。

人が人を裁くことの限界は、人間にしか超えることはできない。そんな想いを強くした作品でした。


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コメント 11

たかち

見たいです~~~!
絶対wowowの録画を忘れないようにしなくては!!
楽しいだけじゃなく、なにか考えさせられるものっていいですよね。
by たかち (2006-01-09 19:08) 

渋谷PARCO劇場、懐かしいな~☆ 東京に居た頃で、随分昔ですが(20年前?)行きました。
「ピサロ」という芝居で、有名になる前の渡辺謙さんと、山崎努さんが出演された公演でした。
そうそう、結構あまり有名では無い役者さんとか、かなりいらしていたみたいでした。(^-^)
四列目のど真中なんて、凄いです~! (私の場合は、同じ状況でも「クラッシュ」のライブでした;

お芝居の方も、非常に良い公演だったようですね。解説が分かり易くて、観たくなりました~。
江口洋介さんは、本当に「白い巨塔」では、自然で人間味溢れる医者を好演されていましたね。
しかし、やはりドラマと舞台では声の出し方とかが違うのでしょうね。今後に期待出来る役者さんですね。
by (2006-01-10 00:01) 

チヨロギ

>たかちさん、wowowが観られるなら絶対おすすめですよ~!
わたしは契約してないんですけど、こういう時のために普段から手なずけている甥っ子に、すでに録画を頼んであります(笑)。
 >楽しいだけじゃなく、なにか考えさせられるもの
ほんとにそうですよね。大笑いしたあとにそういう余韻が残る作品って、繰り返し見たくなるし、見るたびに新しい発見があったりして飽きません。
舞台中継、いまから楽しみです♪
by チヨロギ (2006-01-10 01:42) 

チヨロギ

>saraさん、なんと渡辺謙さんと山崎努さんですか! それはまた貴重な公演ですねー。
20年ぐらい前のPARCO劇場というと、わたしが行っていたとすればニール・サイモンのコメディかな? 観た作品の記憶が定かではないんですが、当時はよくPARCO劇場に行ったものです。saraさんともどこかですれ違っていたりして(笑)。

記事をおほめいただき、ありがとうございます(^.^)
『白い巨塔』は総集編だけでも感動してしまいました。それと、江口さんがああいう人間を演じられるというのがとても意外でした。
舞台の江口さんもよかったんですよー。ただ、指先の動きひとつで観客の目を引きつけるような身ぶりとか歩き方とか、アクみたいなものがちょっとだけ少なかったかな、という印象です。
いずれにしても、楽しいお芝居でした。wowow放送後はDVDも発売されると思うので、機会があればご覧になってみてくださいね。
by チヨロギ (2006-01-10 01:43) 

降龍十八章

陪審員制度は民主国家の基本です!内閣が自分の都合のいいように選ぶ裁判官に自分の運命をゆだねるなんて大変危険です。特に政府がマスコミをコントロールするような時代にはなおさら必要ですね。
なお、日本には陪審員制度が無いのではなく、戦前の軍国政府により停止状態になっているだけです。本来、敗戦と同時に復活していなければならないものであります。実際に短期間ではありますが、日本でも陪審制で裁判が行われておりその記録も残っています。ドラマのペリーメースンで見られるようなシーンがわが国でもあったのです。
なお、詳しくは私のブログをお読みください。(なんちゃって)
by 降龍十八章 (2006-01-10 10:43) 

チヨロギ

降龍さん、こんばんは。
現状の最高裁判事・長官の選任手続きはたしかに与党寄りになる恐れがあり、フェアではないですね。ただ、高裁や地裁の裁判官の選任については、少しずつ市民参加が始まっているようです。あとはその権利を国民がどう生かすかだと思います。
マスコミ云々については、自ら世論を醸成できないマスコミのふがいなさにこそ原因があって、政府にコントロールされる以前に自分で自分の首を絞めている感じがしますね。
日本の戦前の陪審員制度や今度の裁判員制度の内容については、このお芝居のパンフレットにも資料が載っていました。「廃止」ではなく「停止」状態だったなんて、びっくり。本棚で埃をかぶっていた法律なんですね。
by チヨロギ (2006-01-11 00:20) 

柴犬陸

はじめまして。
「新選組!」にはまっていたと知って、お訪ねしました。
『12人の優しい。。。』チケット取れたのですね。ウラヤマシイ~。
私はパルコ会員だと言うのに、全滅でした。
鈴木砂羽さんを観たかったんですが、いかがでしたか?
「新選組!」での砂羽さんが印象深くて。
by 柴犬陸 (2006-01-11 13:44) 

チヨロギ

柴犬陸さん、はじめまして。コメントとnice!、どうもありがとうございます。
三谷さんの舞台は本当にとれないですよねー。今回はあまりにラッキーで、
自分が交通事故に遭わなかったのが不思議なくらいです。。。
『新選組!』の砂羽さん、明るさと哀しさを秘めた明里の演技がすばらしかったですね!
『12人』ではがらりと変わって、元気で人のいい(調子のいい?)ママ陪審員です。
みなさんそうなんですが、「いるいる、こういうタイプ!」と思わせるのがうまい。
とても楽しくて、あっという間の2時間でした。
by チヨロギ (2006-01-12 01:18) 

流星☆彡

なんだか私、「発掘探検隊」みたいに なってきました~☆(^^ゞ
でもっ!これ チケット GETできなかったんです~!\(-o-)/
なので、新年のwowow放映で や~っと観たところだったんです。
生で観られて いいな~!また舞台上演して欲しい作品ですネ。(#^.^#)
by 流星☆彡 (2007-02-26 16:12) 

流星☆彡

そうそう!戸田恵子さんの一人芝居『なにわバタフライ』を 観に行った時、
前ブロックの最後列に 小野武彦さんと 鈴木京香さんが 何気なく 居らして
4~5列 後ろに居た我らは それだけで ドキドキ(←なぜ!?)してました。
三谷さんの舞台って、三谷ファミリーの役者さん達が 結構 観にいらして
ますよネ。(*^_^*)
by 流星☆彡 (2007-02-26 16:25) 

チヨロギ

◇流星☆彡◇
発掘(?)してくださって、ありがとうございます~(^.^)
三谷さんのチケットは取りにくいので、そんなにたくさん観ているわけではないのです。
この舞台はほんとにラッキーでした~(^^♪
いろんなキャストでまた観てみたい作品ですよね。
あっ、「なにわバタフライ」をご覧になったのですか?
私、チケット取れませんでした~(T_T)
小野さんと京香さんとは、豪華な観客と対面なさいましたね!
三谷さんの舞台ではないのですが、先日こまつ座の公演に三谷さん本人がいらしてたそうです。
私が観に行ったのは同じ日の夜で・・・。残念!
by チヨロギ (2007-02-27 01:54) 

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