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スポーツ報道について(ちょっと脱線気味) [TV, event, etc.]

今朝(3月2日付)の朝日新聞の文化欄で、スポーツプロデューサー・杉山茂氏が「狂騒より地道なTV報道を」と題してトリノ五輪報道を振り返っている。その文章が、昨日ちょうど職場で話していた内容と重なるところが多かった。おんなじことを感じている人は多いんだなー、と少し安心したりして。

一部を引用すると、

……冬の勝負は冷酷だ。タイムや評価点の非情さは、"爪の差" で明暗を分ける。その厳しさをテレビ側はどれだけわきまえていたか。事前報道でも日本人選手の好記録を追うばかりで、海外選手の底力を紹介する労を厭わなかったか。……
勝つ勝つと煽らねば、チャンネルを合わせてくれない。その不安が、報道する側のクールな姿勢を忘れさせてしまう。

今回のオリンピックの成績不振については、企業頼みの強化体制の限界などいろいろ課題はあるだろうけど、それは脇へおくとして、テレビ報道のひどさは目に余った。
気軽に取材に応じてくれる若い選手ばかり密着取材して、世界での本当のレベルは不問のまま、「メダル圏内」と煽る煽る。それで惨敗した選手をスタジオに呼んできて、「感動をありがとう」なんてお茶を濁している。
かつて同じスポーツ報道の狂騒が、若き千葉すず選手を傷つけた。あのときの教訓は、何も生かされていない。

杉山氏は、こういう作られた報道に裏切られた視聴者の失望が、視聴率低迷の理由だという。視聴率を追求するあまりに視聴率を失うとは、なんとも皮肉な話だ。
それで思い出すのが、経済学者・岩井克人さんの『会社はこれからどうなるのか』と『会社はだれのものか』。ちょっと唐突だが、ここに出てくる「株価至上主義」とテレビ局の「視聴率至上主義」、なんか似ている気がするのだ。
株価を上げるために手っとり早く売上げを伸ばそうとする会社と、短期的な利益にしか興味がない株主。
視聴率を上げるために根拠のない熱狂を作りだすテレビ局と、視聴率以外の尺度を持たない番組スポンサー。
どっちもお客さん/視聴者の視点は置きざりのままだ。

さらに、岩井氏は『会社はだれのものか』のなかで、

……短期的な株価至上主義の会社には、短期的な利益しか求めないような株主しか居着けない。ある面、自ら墓穴を掘っている。
それは製品を作るときでもおなじで、それに見合った消費者が出てくる。

と語っている。
うーん、やっぱりテレビと似てるなあ。
視聴率の稼げそうなタレント(キャスター&リポーター&選手)任せにして、地道に現場を追う努力をしなかった。それで墓穴を掘ってしまったわけだ。
問題の根は深い。最後に飛び込んできた「金」1つで、うやむやにならないといいんだけど。


(脱線のネタ元はこちら。↓)

会社はだれのものか

会社はだれのものか

  • 作者: 岩井 克人
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2005/06/25
  • メディア: 単行本

会社はこれからどうなるのか

会社はこれからどうなるのか

  • 作者: 岩井 克人
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2003/02
  • メディア: 単行本

 


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コメント 9

柴犬陸

この記事、私も読みました。
冬季オリンピックは、どうしても競技数を増やして開催日数を増やして、という傾向にありますね。
それにしても、オリンピックってこんなに注目されるんだ、ってあらためて感じました。世界選手権の方が価値があるのは、サッカーだけ?
岩井さんの本、面白そう。
by 柴犬陸 (2006-03-03 08:13) 

降龍十八章

世界陸上の織田裕二、テレ朝の松岡修三、本当にやかましいですね。
というか、アホまるだしというか。演技・演出かもしれませんが、ほんと情けないですね。国家の品格?関わります。
しかし、放送時間のズレもあり、今回は全く感動が薄かった。
by 降龍十八章 (2006-03-03 09:33) 

チヨロギ

>柴犬陸さん、お返事が遅くなって申し訳ありません。
ここ数日どうしてもログインできなくて。。。(泣)
冬季オリンピックの種目はずいぶん増えましたね。
放映権ビジネスとして見ると、スポーツほど旨味のあるソフトはないんじゃないかと思います。夏季のほうは逆に拡大しすぎて売りにくくなり、種目を減らす方向にあるようですが。
でもサッカーはそうですね、オリンピックではどうも影が薄い感じ。FIFAとIOCの力関係かしら?
岩井さんの2冊はとてもわかりやすくて、あっという間に読めてしまいます。
でも『会社はこれからどうなるのか』1冊で充分。『だれのものか』のほうはフジテレビ・ライブドア騒動に合わせて急遽出版されたもので、内容はちょっと物足りないです。
by チヨロギ (2006-03-05 11:42) 

チヨロギ

>降龍さん、お返事が遅くなって申し訳ありません。
やっとコメント欄に来ることができました。。。
本当に、「やかましい」キャスターは即退場してほしいですね。
キャスティングするテレビ局がおかしいと思うんですが、今回の視聴率低迷でもまだ民放は「司会者のおかげで多少とも盛り上がった」と総括しているようで、懲りてないなー、と驚いた次第です。
放送時間も見にくかったですね。アテネの時は毎日NHKばかり見ていたような気がするんですけれど。
by チヨロギ (2006-03-05 12:01) 

降龍十八章

キャスターもアホというより、最作側がアホを演じさせていると思うのですが、それにしても度が過ぎます。国家の品格ということですかね。
ホントに懲りない連中です。ホリエモンを批判する資格はないですね。
by 降龍十八章 (2006-03-07 11:00) 

チヨロギ

降龍さん
たしかに、そういう役回りを局から期待されていると思えば、雇われている身としては演じるしかありませんねー。ただ、松岡さんはどう見ても「天然」という気がします・・・。
あれじゃあまるで「スポーツバラエティ」か「スポーツワイドショー」番組ですよね。
by チヨロギ (2006-03-08 01:17) 

BAKU

でもでもさいきん長期的な見通しをたてれるようになってきているような・・・自然とか・・・。いな、長期的な視点を持たなければ、自然が終わり人が終わる。こっちが事実かも。
なにごとも長期的に見れることの需要が増えているように思います。
ODA改革でも、麻生外相は、長期的に日本の利益になることを、といってましたし・・・。
by BAKU (2006-03-09 23:47) 

チヨロギ

BAKUさん 
短期的な利益のみを追求すると、耐震強度偽装や東横インの一件のように、企業はモラルを失ってしまいます。
スポーツに限らず、長期的な視点に立つことはとても大事ですね。
「木を植えた男」のように。
by チヨロギ (2006-03-10 16:34) 

チヨロギ

◇yutakamiさん、過去記事まで読んでくださってありがとうございます。nice!、どうもです。
by チヨロギ (2006-12-28 01:09) 

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