オレステス＠シアターコクーン [theatre]
ちょっと時間が経ってしまいましたが、先週、渋谷のBunkamuraシアターコクーンへ行ってきました。
蜷川幸雄演出のギリシャ悲劇、《オレステス》の観劇です。
パンフレットより
［Cast］
オレステス：藤原竜也
エレクトラ：中嶋朋子
ピュラディス：北村有起哉
ヘレネ：香寿たつき
メネラオス：吉田鋼太郎
アポロン：寺泉憲
テュンダレオス：瑳川哲朗
［Staff］
作：エウリピデス
翻訳：山形治江
演出：蜷川幸雄
［Story］
トロイア戦争の英雄アガメムノンの息子、オレステス（藤原竜也）は、つい6日前に実の母を殺したばかり。夫の遠征中に不倫を犯した彼女は、愛人と共謀して夫アガメムノンを殺害していた。
アポロンの神託に従って、親友ピュラデス（北村有起哉）とともに父の仇を討ち、母殺しの大罪を犯したオレステスを、「復讐の女神」が責めさいなむ。心身ともに衰弱しきった彼を、姉エレクトラ（中嶋朋子）がつきっきりで看病するが、市民は彼らを許さない。
頼みの綱の叔父メネラオス（吉田鋼太郎）にも、祖父テュンダレオス（瑳川哲朗）にも見捨てられ、ついに死刑を宣告される二人。
どうせ死ぬ運命ならと、オレステス、エレクトラ、ピュラデスの3人は新たな企てをする。メネラオスの妻ヘレネ（香寿たつき）を殺し、娘を人質にとって取引をしようというのだ。
いよいよメネラオスとの決戦の時。突然、天からアポロン（寺泉憲）が出現して――。
（以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。）
古代ギリシャ悲劇としては、学生のころに昴の『オイディプス王』を観たぐらい。
蜷川さんのお芝居というのも、ずいぶん前にシェイクスピアの『テンペスト』（平幹二朗主演）を観て以来なので、とても楽しみでした。
冒頭から破裂するような太鼓の音で観客を劇世界に引きずり込み、客席も舞台もひっくるめて劇場を縦横に使い、役者も観客もハイテンションのまま最後まで突っ走るような演出。
いやはや、すごい迫力です。
天井から大量の雨が降り、その雨音に抗うように、中嶋朋子さんが強い声で台詞を語るのですが、繊細であってたくましく、慈しみ深さと冷徹さをあわせもった女性を、見事に演じきっていました。
しかしあんなにずぶ濡れになって、体力を消耗するだろうなぁ。それだけでもMVPの資格充分です。
もうひとつのお楽しみといえば、藤原竜也くん。
『新選組！』の沖田総司を観てから、いつか舞台もぜひ観てみたいと思っていたのですが、ようやくかないましたよー。
やっぱり華のある役者さんですね。今回、蜷川さんの指導で発声法を変えたそうで、とくに最初に台詞を聞いたときには、「意外に太い声なんだな」と驚くほどでした。
狂乱、嘆き、怒り、さまざまな感情の表現力も豊か。
しかもかなりの時間、彼は半裸状態なんですけど、なかなかいい体をしています（笑）
そしてお芝居の幕切れは、大団円を真っ向から否定するような演出。
突然アメリカ国歌が流れ、大量のビラが降ってくるんです。
右からイスラエル、レバノン、パレスチナ、アメリカのビラ。それぞれ国旗と国歌が印刷されています。
アメリカ以外の三国は、イギリスやフランス、アメリカが中東を長期支配できるように、いわば大国の都合で生み出された国（と自治区）。
多数派のイスラム教徒が国家を統一できないように、宗教によって民族を分断し、あえて紛争の火種を残したともいわれています。
ギリシャ悲劇の世界では神こそが「正義」であり、人間という無力な存在は神の意のままに運命を受け入れるしかありません。
翻って現代では、「正義」の名の下に数々の戦争を繰り返してきた超大国、それがアメリカです。
この舞台の唐突にも思えるラストは、そんな「正義」にNO!を突きつける、蜷川さんの強烈なメッセージなのでしょう。
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2007/04/27
- メディア: DVD
この日は仕事が休みだったので、少し早めの時間に渋谷へ出陣（？）しておりました。
いつもはぎりぎりの時間に会場へ滑りこむので、おなかが鳴りそうになるのをこらえつつ観劇し、芝居がはねたあとに遅い夕食をとるんですが、今回は観劇前に軽食をとることにしました。
お目当ては、《柴犬陸さんの記事》で教えていただいた《ヴィロン》。
ランチとディナーのはざ間、カフェタイムでしたが、ラストオーダー５時に滑りこみセーフ（またか！）。
１Ｆのショップで売っているパンを注文して、２Ｆへ上がります。
食べたのは、これ。↓
サンドウィッチ・デテ。訳すと夏のサンドウィッチ（たぶん）
期待どおりのおいしさでしたよー♪
バゲットにはさんであるのは、玉ねぎ、ツナ、トマト、グリーンオリーブ。
このグリーンオリーブがかなり自己主張しているんですよね。とても新鮮で。
ケイパーの酸味がしっかり利いているのも、わたし好みでした。
バゲットはほどほどの塩味があって、かむほどに味わいが出てくる感じ。
生地はわりとハードなタイプでした。そこにいろいろと具がはさまっているものだから、一人前食べ終わるころにはアゴが疲れましたが（笑）
どうやらディナー前に一時クローズするらしく、ほぼ満席だったお客さんがだんだんまばらに。
ぎりぎり６時までねばって、お店をあとにしました。
そうそう、カプチーノもおいしかったです。ごちそうさまでした！
goober walking
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舞台なのに、天井から大量の雨が降る演出ですか～、ビックリですね！ 最後まで突っ走るような演出は、凄い迫力だったと思います。
＞そんな「正義」にNO!を突きつける、蜷川さんの強烈なメッセージ
なるほど、素晴らしいメッセージが隠されているという事ですね。(^-^)
もうすぐ上映される映画『ワールド・トレード・センター』が今、待ち遠しい私です。監督が「プラトーン」のオリヴァー・ストーンですから。
そうそう、チヨロギさんお勧めの『太陽』ももうすぐ仙台で上映されます。今からとても楽しみです。イッセー尾形さんの演技が見物ですね☆
ヴィロンのカフェタイム美味しそうですね！ お腹が空いて来ました(笑)
by (2006-09-26 00:51)
◇saraさん◇
初めは雨の音で台詞が聞き取れないんじゃないかと思って、こっちも神経を集中して聞いていました。その雨がやんでも、役者さんたちのテンションが高いせいか、観るほうの集中が切れないんですよね。迫力でした。
ラストの演出には、「復讐の連鎖」を断ち切るための、蜷川さんなりの答えが込められているんだろうと思います。
『ワールド・トレード・センター』をご覧になるのですね。これといい、『ユナイテッド93』といい、911を題材にする映画が増えていますが、私はまだ心の準備が足りなくて・・・。というわけで、saraさんのレビューを楽しみにしています！
『太陽』も気に入っていただけるといいんですけれど。
ヴィロンのバゲット、おいしかったです。今度はぜひテイクアウトしなくっちゃ♪
by チヨロギ (2006-09-26 03:09)
も～、チヨロギさんは罪な方です(涙）
私はこんなに、舞台とか映画とか観たい！って思うことなかったのに・・・
チヨロギさんのお話はもうそれだけでワクワク胸が・・今すぐ観てみたい！！
んーんーパパ、いや誰でもいいから子供達見ててくでーー！
ママはこれが観たいぃぃぃ！！！o(≧∇≦o)(o≧∇≦)o（笑）
そしてこのサンドウィッチ、あごが疲れるほど噛みたいですぅ（笑）
by shikayu (2006-09-26 08:26)
TB有難うございました。
観ているこちら側にも、力が入る芝居でしたよね。
＞「正義」にNO!を突きつける、蜷川さんの強烈なメッセージ
ラストについてのチヨロギさんの考察、とてもストレートに伝わりました。
ところで、ヴィロンのバケット、私はテイクアウトしました。
お店でこの量を食べると、ちょっと辛いかも（笑）
１１月にコクーンへ行く時、また立ち寄ろうかと思っています。
私もTBさせてください。
by 柴犬陸 (2006-09-26 08:31)
これは迫力のある舞台ですね！
降った雨は舞台のどこに流れて行くんだ？とか余計な事を考えてしまうけど、実際に観劇してたらそんなこと微塵にも思わないんでしょうね！
藤原竜也君が出てきた頃、「なんだ女の子か？」などと思いあまり興味もなかったのですが、育ちましたね！（おばさん？！）
蜷川作品に出演するだけあって、どんどんいい味を出してきてますよね！
by たかち (2006-09-26 19:28)
◇shikayuさん◇
誘惑してしまって申し訳ありません！！（笑）
私もここ10年ほどは、仕事にかまけていて（？）舞台や映画をほとんど観ていなかったんです。それが、ブログでいろんな方の記事を読むようになってから、むくむくと興味が復活してしまいました。
でも、もうすぐイモちゃんたちもお留守番できるようになりますよ～♪ あとはパパ様をいかにおだてるかですね^^;
サンドウィッチはなかなかの強敵です。皮が硬い上に、ビッグマック並みの厚さですから！
by チヨロギ (2006-09-27 02:27)
◇柴犬陸さん◇
TBありがとうございます！
ほんとうに「力が入る芝居」でしたねー。舞台が暗転してひと息つくということもなく、緊張感が持続する濃密な舞台でした。
古い時代の演劇を、現代に上演することの意味って一体何なのか。演出家としてそれを表現しようとしたラストだったような気がします。
おや？ サンドウィッチはお店で完食しましたけど、何か？（笑）
11月は私もコクーンに行きます♪ 次回こそは、バゲットをテイクアウトしたいです。
すてきなお店のご紹介、ありがとうございました(^.^)
by チヨロギ (2006-09-27 02:28)
◇たかちさん◇
＞降った雨は舞台のどこに流れて行くんだ？
考えてもみなかったです！ しまった、終わってから見に行くんだった・・・。でもビラを拾うのに必死だったからなぁ（笑）
私も藤原竜也くんって、「ダウンタウンDXに出てきて妙なことを言う子」というイメージ（！）があったんですが、いまでは立派な役者さんに育ちましたよね～。ばあやは嬉しゅうございます（←誰？）
by チヨロギ (2006-09-27 02:33)
◇茅ヶ崎住人Rさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2006-10-09 03:15)
◇ayaさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-30 23:43)