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夏の夜の夢 [theatre]

今年の夏至は6月22日。それまでにはupしたかった記事なのに、
またいつものごとく遅くなってしまった・・・(>_<)
夏至は英語で「midsummer day」、その前夜が「midsummer night」。
A Midsummer Night's Dream――『夏の夜の夢』を、
夏至には少し早い16日に観てきた。

[staff]
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:ジョン・ケアード

[cast]
アテネの公爵シーシアス/妖精王オーベロン:村井国夫
アマゾンの女王ヒポリタ/妖精の女王ティターニア:麻実れい
ライサンダーに恋するハーミア:宮菜穂子
ハーミアに恋するライサンダー:細見大輔
ハーミアに恋するディミートリアス:石母田史朗
ディミートリアスに恋するヘレナ:小山萌子
妖精パック:チョウソンハ
豆の花:神田沙也加

[data]
公演日程:2007年5月31日(木)~6月17日(日) 新国立劇場 中劇場
上演時間:1幕1時間15分、2幕1時間35分(休憩20分)

[story]
アテネの公爵とアマゾンの女王の結婚式を間近に控えたある夜。貴族のハーミアは許婚ディミートリアスとの結婚を拒絶し、相愛のライサンダーと共に妖精の住む森へと駆け落ちする。ハーミアを追いかけるディミートリアスと彼に片想いするヘレナも2人の後を追う。一方、妖精の住むアテネ近郊の森では妖精の王と女王が小姓をめぐり喧嘩の真っ最中。そこにいたずら好きの妖精パックが登場し、王の命令で「惚れ薬」を手に女王にいたずらを仕掛ける。女王はロバの頭をした職人ボトムとの不思議な一夜を過ごす。アテネからハーミアたち若者4人も森へとやってくる…。
妖精と人間、男と女、日常と夢の世界、一夜の楽しい恋の大騒動の結末はいかに。(ホームページより)

 稽古風景

 

++++

 

今回の観劇は、個人的に初めて尽くしだった。
まず、新国立劇場が初めて。
シェイクスピア作品は好きだけれど、『夏の夜の夢』は初めて。
役者さんたちも全員、生で初めて見る人ばかり。
で、「主役降板」というのも初めての経験である。
プレオーダーした時点では、主役は村井国夫ではなく江守徹だったのだ。
江守さんのシェイクスピアを一度聞いてみたくてチケットを取った演目だが、
階段を昇ったり降りたり、果てはダンスシーンまであるこの役、
病み上がりの江守さんは降りて正解だったと思う。また倒れちゃ大変だ。

幕が開く前、座席から後ろを振り返ると、すり鉢状にかなりの勾配がある。
前の人の頭も気にならないし、オケピで生演奏をする人々の姿も見える。
客席にせり出した舞台が、とても近く感じられた。


いま読んでいるえのきどいちろうのコラム集『サッカー茶柱観測所』の中で、
この新国立劇場ではなく、三宅坂の国立劇場についての
中村勘九郎(いまは勘三郎ですね)の発言が出てくる。

歌舞伎を見る人ならすぐにわかることだけど、三宅坂は場所も冷え冷えしてるし、劇場のたたずまいも冷え冷えしてるし、客席も冷え冷えしている。勘九郎さんは歌舞伎座の熱さとの対比を言ってて、それとは又、別の熱さを求めて渋谷のコクーン歌舞伎を始めたりしたんだろうけど、国立劇場に関しては確か「あそこは何を演っても冷えちゃう」と言い切っていた。(「冷え冷え反対のこと」46ページ)

サッカー場で言えば「熱い仙台スタジアム」と
「冷え冷えした宮城スタジアム」にたとえられるという。
仙台スタジアム》って、何しろいい競技場らしい。
1週間ぐらい前、ラグビーの日本代表対サモア代表戦を見るために
はるばる仙台スタジアムへ駆けつけた知人たちも感動していた。
客席に適度な勾配があり、フットボールに邪魔な競技用トラックもなく、
ピッチとスタンドがとても近い。
観客と選手が一体になった濃密な空間がそこにある。


ええと、話がそれてしまったが、新国立劇場もそういう意味ではいい劇場な気がする。
『夏の夜の夢』の初めのほう、少々ミュージカルっぽいノリに引き気味だったのだが(笑)、
徐々に客席があったまってきて、最後のほうは楽しくてしょうがなかった。
もっとも、最初にノリきれなかったのは衣装があまりに現代的だったせいもある(→こんな感じ)。
シェイクスピアなんだもの、もっと潔くコスプレしてくれなくちゃ困ります。

セットは回り舞台で、昼の世界(アテネ)と夜の世界(森)が背中合わせ。
妖精パックに惚れ薬をかけられて、違う相手に恋する破目になった恋人たちも、
夜明けを前に魔法を解かれ、元のさやに納まって昼の世界へ帰る。
ところが、一人ディミートリアスだけは魔法がかかったままなのだ。
夢から醒めて現実にもどったはずが、夢に浸食されて現実が変容している。
あるいは、夢を通して初めて心の真実を見たということか。

鮮やかなのはラストシーン。
セットがぐるっと回転すると、なんとベニヤ板や鉄骨がむき出しになっている。
後ろの幕もとり払われ、奥の舞台裏まで丸見えだ。
そして、妖精パックは一人の舞台役者となって観客に最後の挨拶をする。

「ここでご覧になったのは、うたた寝の一場のまぼろし。
 たわいない物語は、根も葉もないつかの間の夢――」

パック役のチョウソンハは、公演途中で肩を脱臼したというが、
右腕を吊った不自由な身体をものともせず、やんちゃな妖精を演じきっていた。
だからよけいに、最後の口上が感動的だったのだ。
彼の芝居を観られたことが、この日いちばんの収穫だった。

 

++++

 

[夏の夜のおまけ]

休憩時間(午後7時過ぎ)にロビーに出てきたら、ちょうど夕暮れ時。
バルコニーがあるようなので外に出てみた。
よく見ると喫煙所だったのだが、夕焼けを見に出てきた人たちでいっぱいだ。

2週間あまりの公演の中で、この日だけが18時開演だった(残りの夜公演は19時)。
平日は昼公演中心なので、やむを得ずこの日にしたのだけど。ラッキーでした。

 

人気がなくなった劇場入り口。

 

どこかに妖精が・・・?

 


 

シェイクスピア全集 (4) 夏の夜の夢・間違いの喜劇

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  • 作者: W. シェイクスピア
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1997/04
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コメント 23

流星☆彡

私が このキャストの中で観た事あるのは 『レ・ミゼ』での村井国男さんだけ
ですが、超ミーハーの私が気になるのは…神田沙也加ちゃんの演技☆
マスコミにも 沙也加ちゃんの“白いドレス姿”(←この衣装でしょ !? )が かなり
露出されてましたけど、ど~でしたか?声とか通るのかな?!聖子ママさんの
若い頃の声量は 見事でしたもの♪こういうミーハー人の話題に頼らず 真の
舞台女優になるのが、彼女の希望でしょうけど。。。(~_~;)ゞ

このところ、ブログ記事で 夕焼け景を よく見かけます♪夕暮れが綺麗な時期
なのよね~☆そんな情緒を 楽しまなくっちゃね~。(*^m^*)
by 流星☆彡 (2007-06-24 23:46) 

椎名

椎名がこのお話を知ったのって、「ガラスの仮面」でだったんですよね。
未だにシェークスピアの原作は読んだことないんですけども・・・(^。^;)ゞ

「ガラスの仮面」では、この舞台を上演するまでに様々な困難が降りかかって、その上で上演されるので、こう手に汗握るというか。
椎名的に思い入れがとても強いストーリーです。
「ガラスの仮面」の中で、結構好きなストーリーなんですよねぇ。

1度、生の舞台も見てみたいものです♪
特に妖精パックを見たいですねー。
by 椎名 (2007-06-25 01:14) 

took

へぇ~、なんだか面白そうですね★
地方だと、なかなかこういった劇場に行く機会はありませんが、いつか見に行ってみたいものですね♪
by took (2007-06-25 06:11) 

柴犬陸

新国立はとても好きな劇場です。
中劇場は、舞台の奥行きがすごく広くて、劇団☆新感線の「髑髏城の七人」でそれを実感しました。
エントランスや周辺の風景がゆったりしているところ、それにチケット代が割安なのも、さすが国立と思わせます。
永井愛さんが小劇場でよく公演をされ、あの「こんにちは、母さん」もここでした。
芝居が跳ねた後のシアタートークも楽しみの一つです。
それにしても、平日の昼公演が中心とは珍しい、これはちょっとね。
チョウソンハさんてどこかでお名前を聞いたことがあるのですが、思い出せません。
最後のセリフ、とても胸を打ちました。

※えのきどいちろうさんの名前があって、ちょっとドキッとしました。
夫が彼のラジオ番組をよく聞いています。
ファンと言って良いと思います。笑
by 柴犬陸 (2007-06-25 10:16) 

たかち

おいらシェークスピアの本を読むと眠くなるんですよね~~
お芝居なら置きてられるかな?
by たかち (2007-06-25 15:27) 

新国立劇場ができてもう10年になりますか。正直、まだ行く機会を持っておりませんでした。HPを覗いてみたのですが、三宅坂の国立劇場とは違った雰囲気で急に行ってみたくなりました。
by (2007-06-25 19:04) 

茅ヶ崎住人R

シェークスピア戯曲全集
なんていう本を持っていたりします。
読んだなぁ。
by 茅ヶ崎住人R (2007-06-25 21:17) 

チヨロギ

◇流星☆彡さん◇
『レ・ミゼ』をご覧になっているのですね。
演出のジョン・ケアードは日本で『レ・ミゼ』と『ベガーズ・オペラ』を
演出している人なんですよ~☆
さて沙也加ちゃんですが、聖子ママゆずりの澄んだ声質が妖精っぽかったです。
声量はママの若い頃にはとてもかなわないけど、意外と通る声でしたね。
表情も豊かで、あとはダンスをもう少しレッスンすれば、
いい舞台女優さんになるんじゃないかなー、と思います。
夕焼け空は遠くの連山まで見えて、ほんとにきれいでしたよー♪
いいお土産をもらって帰った気分です(^.^)
by チヨロギ (2007-06-26 01:18) 

チヨロギ

◇椎名さん◇
おぉ、「ガラスの仮面」ですか!
遠い昔、連載開始当初(古っ!)は時々読んでいたのですが、
細部はほとんど覚えていないです・・・^^;
たしかドラマ化もされていましたよね。
「夏の夜の夢」の原作自体、劇中劇を使った多重構造になっていますけど、
さらにそれが「ガラスの仮面」で演じられるのはおもしろそうですね。
妖精パックはすごく魅力的です!
新国立劇場の公演はもう終わってしまいましたが、
毎年のようにどこかで上演されている作品なので、
いつか機会がありましたら、ぜひ生舞台を♪
by チヨロギ (2007-06-26 01:21) 

チヨロギ

◇tookさん◇
作品によっては、地方を巡回公演するものもあると思います(^.^)
劇場で観るお芝居は格別です! いつかぜひご覧になってみてくださいね☆
by チヨロギ (2007-06-26 01:21) 

チヨロギ

◇柴犬陸さん◇
なかなか行くチャンスがなかった劇場ですが、
柴犬陸さんの記事にたびたび登場するので、
いつかぜひと思っておりました!
足もとのゆったりした座席、奥行きのある舞台、客席と舞台の距離感など、
想像以上にいい劇場だなぁと思いました。
チケット代も割安でありがたいです。ほかもこのぐらいだといいのに~(笑)
永井愛さんの作品も、いつか必ず観に行こうと思っております。
シアタートークも憧れなんですが、こちらは時間的にむずかしそう;;
チョウソンハさんのお名前は全然知らなかったのですが、
最後のシーンはじーんときました。すごくよかったです!

えのきどいちろうさん、好きなんですよ~♪
スカパーで放送していた「ワールドカップジャーナル」の大ファンでした。
ご主人様によろしくお伝えくださいませ(笑)
by チヨロギ (2007-06-26 01:23) 

チヨロギ

◇たかちさん◇
戯曲はけっこうしんどいかもですねー。とくに昔の翻訳だと。
でも現在刊行中の松岡和子さんの訳は、とても読みやすくていいですよ!
なかでも女性の台詞が生き生きしています。
もちろん、生の舞台はさらに楽しいと思います(^^♪
by チヨロギ (2007-06-26 01:28) 

チヨロギ

◇cocoa051さん◇
私も新国立劇場はなかなか行くチャンスがなかったのです。
(国立劇場のほうは未だに行ったことがありません^^;)
入り口もロビーも座席も、全体に広々としていて、とても心地いい劇場でした。
ぜひ一度、ご覧になってみてください^^
by チヨロギ (2007-06-26 01:29) 

チヨロギ

◇茅ヶ崎住人Rさん◇
うわー、さすがですね!
私は学校の授業のあんちょこ(←死語?)として買ったもの以外、
ほとんど持っていないと思います。
・・・読んでないなぁ(笑)
by チヨロギ (2007-06-26 01:29) 

◇ちょうど一週間のオペラシティーが新国立劇場だったという訳ですね。
「夏の夜の夢」、私はずっと「真夏の夜の夢」だと思っていました。(^^ゞ
あぁ、思い違い(笑)。ここで気がついて良かったですわ~。。(汗。
私も、「ガラスの仮面」の方は漫画も見ていたし、お芝居も観ました♪

>「熱い仙台スタジアム」と「冷え冷えした宮城スタジアム」
流石はサッカーにもお詳しいチヨロギさん。宮城県人より詳しいです☆
確かに、宮城スタジアムは場所的に盛り上がり難いかもしれません。
仙台スタジアム、一度行ってみたいです。あ、楽天の試合も見たいなっ!
by (2007-06-26 02:45) 

shikayu

本当だ~衣装が・・・(笑)(笑)現代風(笑)
新国立は観劇にはいい感じなんですね!
ちょと前に叔母が、国立のほうで(三味線のおっしょさんなんですが)
舞台してました、なんとか流の(笑)披露会というのかしら(笑)
saraさんの「真夏の夜のユメ」に激しく反応してしまったです(笑)
シーにも「劇場」ありますが、私はここに入ると
「ああ舞台見れる~」ってワクワクしちゃいます、雰囲気もとってもたいせつですよね( *^∇^)(^・^* )
by shikayu (2007-06-26 16:49) 

noric

生舞台、観てみたいですね。
by noric (2007-06-26 22:40) 

チヨロギ

◇saraさん◇
そうなんです、1週間違いで! 惜しかったですよね^^;
タイトルですが、坪内逍遥は「真夏の夜の夢」と訳していたので、
saraさんの思い違いではないんですよ~!^^
福田恒存が初めて「夏の夜の夢」を使ったんだそうです。
私も昔は「真夏」で覚えていました^^

仙台スタジアムは、私自身は行ったことがないんですが、
まるでヨーロッパのスタジアムみたいな造りだそうです☆
宮城スタジアムのほうは、W杯で日本がトルコに負けた場所ですよね^^;
いつか私も仙台で試合を観てみたいなぁ。できれば牛タンとセットで(笑)
by チヨロギ (2007-06-27 02:23) 

チヨロギ

◇shikayuさん◇
ねねね、そうでしょう? あのスーツといいパジャマといい(笑)
もっと言うとヘアスタイルも! リーゼントはいかがなものか?
shikayuさんの叔母さまは“冷え冷え”の国立劇場でいらしたのですね。
お風邪を召しませんでした? いや、そういう意味じゃなくて~(笑)
あぁっ! またもやシカオさんの曲が!
ここんとこ狙ったように次々と来ますね。操られてる?(笑)
劇場は、舞台と客席の一体感がなんともいえませんよね(^.^)
by チヨロギ (2007-06-27 02:24) 

チヨロギ

◇noricさん◇
はい、ぜひ!
最近はDVD化も多いですが、やっぱり劇場で観るのが一番です(^.^)
by チヨロギ (2007-06-27 02:25) 

柴壱

midsummer nightが夏至前夜のこととは知らなかったですわ。
「夏の夜の夢」といえば、遠い昔、といってもお子様ではなくなっている頃に
「三越お子様向け劇場」のようなので観たことがありました。
でも、シェークスピアなんですよね(笑)
今回の新国立の巻は、神田沙也加が出るという情報だけが記憶に残っていて
全くノーチェックでした。麻実さんに村井さんとは、豪華キャストだったんですね。
でも、平日はほとんどマチネとはどういうことなのでしょう?…
…と思って新国立のサイトを見たら、平日は学生団体が入るとのこと。なるほど。
チヨロギさん、ソワレ選んで正解だったかも、ね。
by 柴壱 (2007-06-28 00:02) 

チヨロギ

◇柴壱さん◇
「三越お子様向け劇場」、なんとなくわかるような気がします(笑)
シェイクスピアは基本的に、どんな層にもわかりやすいですもんね。
今回は江守さん目当てだったので、神田沙也加出演はあとから知りました。
村井さんは身のこなしが軽いし、麻実さんもラブリーだったし(笑)、
結果的にはなかなか楽しかったです。
平日は学生団体が? なるほどー、国立ですもんね。
学校の芸術鑑賞といえば、劇団四季を観に行ったのを思い出します。
当時の四季はまだミュージカル路線じゃなかったんですよね。懐かし~♪
by チヨロギ (2007-06-28 02:37) 

チヨロギ

◇かのとさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2007-07-04 02:28) 

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