りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ「冬物語」劇場版＠あうるすぽっと

暗闇の奥から、小さな火の玉を手にした白装束の人々が4人。
床に置かれた白い球体に、その火で次々と灯りをともしていきます。
舞台にぐるりと並んだ球体の数は、12個。
4と12、その数字が意味するものとは・・・。

公演チラシ

イギリスのシェイクスピア作品を、能楽堂という和の舞台空間で上演する試み、
「りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ」は、
新潟市民芸術文化会館・りゅーとぴあが企画・製作しているもの。
去年、「ハムレット」東京公演を観てきたイトコから話を聞いて、
行ってみたいなぁ、でも能楽堂で観るのはツライなぁと思っていました。
背もたれのない席で、2時間耐えられる腰ではありませんから（＾＾；

でも今回の「冬物語」は、東池袋・あうるすぽっとでの劇場公演。
ヨーロッパツアー用にアレンジした、劇場版「冬物語」なのです。
はりきって発売初日にチケットをとったら、最前列のど真ん中でした！
うれしすぎる・・・（感涙）


「冬物語」のあらすじは、りゅーとぴあの初演時のサイト（こちら）へどうぞ＾＾
簡単にご紹介すると、シチリアの王レオンティーズが王妃と親友の不倫を疑い、
嫉妬に狂って王妃を告発した挙げ句、愛する者すべてを失ってしまう。
16年間の悔恨の日々を経て、大いなる奇跡が訪れる・・・というお話です。

12個の球体以外、ほとんど何もない舞台。
その背景でしんしんと降りつづける雪の向こうに、
英語の字幕が大きく浮かび上がります。
まるで舞台全体が巨大な絵本であるかのように。

この作品で大きな役割を果たすもの、それが「言葉」と「時」です。
レオンティーズがいくら引き止めても帰国しようとした親友ポリクシニーズを、
王妃ハーマイオニは心のこもった言葉の力で、あっさり翻意させてしまう。
忠臣アンティゴナスの妻という身分でありながら、
王を恐れず真実を訴えるポーライナの言葉にも、迫力があります。
どちらも女性なんですよね、言葉の力を正しく行使できるのは。
そして、白装束の「言霊」たち。
舞台上で無言のまま静かに舞いつづける4人の「言霊」から、
彫像となったハーマイオニの16年間の悲しみが伝わってくるようでした。

12個の球体が表わしているのが「時」であり、
ここに火を入れた瞬間、物語が動きだすという仕掛けも見事。
それと、「時」を演じる役者が1幕の終わりに出てきて口上を述べるんですが、
その後の休憩時間中もずっと、「時」は立ち止まることがないんです。
いっぽう、時間を奪われたハーマイオニは2幕の間中、動かない彫像のまま。
こういう演出をする栗田芳宏氏もすごいけど、演じる役者さんもすごいなぁ。

ゆっくりとした無駄のない動き、声にならない叫び。
「静」の舞台だからこそ、感情の動きが際立ち、胸に迫ります。
クライマックスのハーマイオニの再生、そして再会の場面は美しく、感動的でした。
人間の愚かな過ちを大きく包み込むような、時の赦し。
母と子の幸せな語らいの中で、物語は幕を閉じます。


　　　　　　　　当日配られたチラシより


それにしても、シェイクスピアって懐が深いです。
能舞台との融合も、全然違和感がなかったし。
この日もらったチラシの中には、シェイクスピアものがこんなにありました。



「冬物語」も、来年はさいたま芸術劇場で蜷川版が上演されるんですよね。
チケット、どうしようかなぁ。


◆◆◆◆


［data］
作：ウィリアム・シェイクスピア
翻訳：松岡和子
構成・演出：栗田芳宏
出演：谷田歩、河内大和、山賀晴代
　荒井和真、横山道子、町屋美咲、大山真絵子、永宝千晶、横山愛
　塚野夢美、住田彩、塚野星美、磯野知世、栗田芳宏
東京公演：2008年8月28日（木）～8月31日（日）あうるすぽっと
上演時間：1幕1時間20分、休憩15分、2幕55分



初めて行った「あうるすぽっと」は、地下鉄東池袋駅と直結。
向こうにぼんやりと見えるのはサンシャイン60です。


1階通路がやけに広いのはなぜ？

あうるすぽっと

タグ：シェイクスピア 松岡和子 栗田芳宏 あうるすぽっと 池袋

コメント 28

つい先日、BSで黒澤明の「蜘蛛巣城」を放映していました。
あれは、シェイクスピアの「マクベス」ですよね。
もう５０年以上前の作品で、モノクロでしたが、思わず見入ってしまいました。
鈴木裕美さんの演出した「マクベス」が、この黒澤映画を参考にしているのではないかと初めて気付きました。
シェイクスピアは、いつの世にも魅力的であるようです。
「冬物語」は、りゅうとぴあの会員だというのに、すっかりスルーしてしまいました。
りゅうとぴあは劇場も観やすいですが、立派な能楽堂も備わっています。
蜷川演出でリベンジ？と思いましたが、さい芸なんですよね。。。（苦笑）
by 柴犬陸 (2008-09-05 17:09) 

チヨロギさんはじめまして！
チヨロギさんの記事で感動がよみがえってきました(^-^)

by pericles (2008-09-05 21:00) 

◇柴犬陸さん◇
そうです、「蜘蛛巣城」は「マクベス」で、「乱」は「リア王」の翻案です。
といっても、私は黒澤映画をほとんど観たことがなくて・・・(￣ー￣;
鈴木裕美さんにもクロサワは影響を与えているんですね。
「蜘蛛巣城」の放映、見逃して残念です(>_<)
シェイクスピア作品は普遍性が高いし、日本人好みでもありますね。
柴犬陸さんはりゅーとぴあの会員なのですか？
能楽堂というのは声がよく響きそうなイメージですけど、
じつはしっかり訓練を積んだ人でないと声が通らないらしいですね。
そのせいか、今回の役者さんたちの台詞はとても聞きやすかったです。
ポリクシニーズの河内大和さんがステキでした～♪
さて蜷川さんの「冬物語」、どうしましょう？（笑）
by チヨロギ (2008-09-06 00:25) 

◇shinwaさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-06 00:25) 

◇periclesさん◇
はじめまして！　ご訪問ありがとうございます。
periclesさんもご覧になったのですね。コメントをいただき、うれしいです(^.^)
とても幻想的で、すばらしい舞台でしたね。
by チヨロギ (2008-09-06 00:26) 

中学生の時、文化祭で、「ベニスの商人」の判事役をやらさせたのを思い出しました。
芝居は見るのもいいけど、やるのも楽しいですね。
もちろん私の演技は、立派な「大根」でした。ｗ
by shinwa (2008-09-06 13:09) 

なんか幻想的な感じの舞台ですね！

by たかち (2008-09-06 16:05) 

豪華な衣装のようですね。衣装だけでもすごそうです。
by Morimo (2008-09-06 17:54) 

◇shinwaさん◇
「ベニスの商人」の判事役を？　すごいですねw(ﾟoﾟ)w ｵｵｰ!
大根だって何だって（失礼）、舞台に立ってしまえばこっちのものw
と言いながら、私自身はあがり症でビビリ屋なので、
やるよりも見るほうが楽しそうです（笑）
by チヨロギ (2008-09-07 00:02) 

◇たかちさん◇
すごく美しい舞台で、息をするのも忘れてしまいそうでした！
by チヨロギ (2008-09-07 00:03) 

◇Morimoさん◇
もともと能舞台に合わせてデザインされたものだと思いますが、
とても豪華で舞台映えのする衣装でしたv
by チヨロギ (2008-09-07 00:04) 

◇さくママさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-07 00:05) 

幻想的で美しい舞台ですね☆　ヨーロッパ公演で高い評価を得た作品、素敵ですね。
最前列のど真ん中で鑑賞されたなんて、素晴らしい！　じっくり観たい作品ですね☆
私なんて、ハーマイオ二と聞くと"ハリー・ポッター"を思い出してしまいますが(^_^;
池袋のサンシャイン近くに、こんなところが有ったのですね。能舞台一度観てみたいです。近くに、薪能で有名な場所が有るのですが、いつもチケットがなかなか取れないんですよ〜。
by sara (2008-09-07 08:18) 

◇saraさん◇
そうなんですよ～☆
ハンガリーやルーマニア、ドイツなど5か国を回り、
当地のシェイクスピアファンに絶賛されたようです。
イマジネーションを刺激され、引き込まれる舞台でした。
池袋のあうるすぽっとは、まだ生まれて1年ぐらいの小さな劇場です。
能楽堂は、伯母が謡曲をやっているので何か所か行ったことがありますが、
りゅーとぴあのお芝居をやる能楽堂は平場席らしくて・・・(￣ー￣;
でも今回の会場は劇場なので、すわり心地はバッチリですv
薪能は、一度ぜひ行ってみたいのですが、やっぱり人気があるのですね。
by チヨロギ (2008-09-07 17:59) 

◇ぴーたろーさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-07 18:01) 

◇noricさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-07 18:02) 

シェイクスピア作品で初めて観たのが（映画です）【タイタス】やったんですが・・・・かなり狂気めいた作品にシェイクスピアの印象が・・・・；；；；


by janvierm (2008-09-07 21:18) 

◇janviermさん◇
タイタスですか！　そりゃまた大変な作品を・・・(￣□￣;)
あればっかりは舞台も観たことがありませんし、
映画だと、よりリアルに残酷なんでしょうね～(Ｔ-Ｔ)
by チヨロギ (2008-09-07 23:34) 

シェイクスピアは、どの作品も、いろんなプロデューサー、いろんな演出家によって
上演されていますね。
「冬物語」は3年くらい前に演鑑で平幹二郎バージョンを見ました。
1幕は、シビアな場面だったのに、2幕になったらコメディショーさながらの
軽い舞台に変わっていて「何だコリャ？」と思ったものです。
振付師の深沢敦氏がカマっぽい役で登場したりして
演鑑のオバサマたちには、2幕の方が受けてたんですけどね。
ところで、チヨロギさんは最前列OKの方ですか？
私は好きですけど、意外に嫌がる人多いらしい。
3月にコバさんの舞台を最前列で見たときは、ドキドキワクワク、感激でしたv
今週は、初めてサンシャイン劇場に行きます。迷わず行けるか、ちょっと心配＾＾；
by 柴壱 (2008-09-07 23:49) 

◇柴壱さん◇
現代に通じるテーマを持っているし、いかようにもアレンジできるところが、
シェイクスピア上演がこんなに多い理由なのでしょうね。
平さんのシェイクスピアは以前よく観ていましたが、
「冬物語」は観たことがありません。
2幕のコメディっぽいところというと、羊飼いの話あたりかな？
今回は演出の栗田さんがアンティゴナスと羊飼いの二役で出ていて、
ユーモラスな演技で観客の笑いを誘っていました。
最前列は、もちろんOKですよ～v
舞台全体を見渡すには正面5列目ぐらいがいいのかなと思いますけど、
役者さんに手が届きそうな近さというのは、
やっぱり柴壱さんと同じくドキドキわくわくします♪
サンシャイン劇場はむかし1度だけ行ったことが。すごい雪の日でした。
幸四郎の「世阿弥」だったかな？
有楽町線の東池袋駅からだと、すぐだと思いますよ(^.^)　
by チヨロギ (2008-09-08 01:17) 

素敵だねｗ
シェークスピア作品は舞台の王道だね。
みたいけど、お嬢達がもっと・・・あと１０年ぐらい大きくならないと見にいけないなぁ～（＾＾；）
宝塚ならチェリー嬢と一緒に何度か・・・（汗）
by さくママ (2008-09-08 10:47) 

◇さくママさん◇
10年も待たなくても、ぴったりの舞台がありますよ～♪
↓「子供のためのシェイクスピア＋チェーホフ」というカンパニーのホームページです。
http://homepage1.nifty.com/j-ishikawa/c-ro.html
人形や手拍子を使って、子どもも楽しめる演出にしてあるようです（＾＾）
ご家族そろって、ぜひv
by チヨロギ (2008-09-08 14:28) 

◇春分さん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-15 18:43) 

◇greensさん◇
はじめまして。ご訪問ありがとうございます＾＾
by チヨロギ (2008-09-15 18:46) 

なは。
「ハーマイオニー」という女性の名前はシェークスピア
だったんだあー、といまここで知ったおやじ...＼(^o^)／

小生、数年前に平幹次郎さんの「リア王」をみただけの
「永遠の」観劇初心者ですが、そのときに小舞台の演出の
すごさを実感しました。

え？　こんななんにもない舞台でどんなお芝居が
できるというんだい？？とがっかりした最初。
が、始まってみれば、そこが城内になり、寝室になり、
戦場になり、海岸沿いの崖になり....

ふえー、こりゃ、すごい！！と感動したあの日...

いやあ、演劇ってほんといいもんですねー！！
（あ、すんません、水野晴郎さん）＼(^o^)／

by Kimball (2008-09-23 06:55) 

◇Kimballさん◇
ハーマイオニは、もともとはギリシャ神話の登場人物のようです。
ただ、いまではハリポタのほうが有名になってしまいましたけど（笑）

　＞こんななんにもない舞台でどんなお芝居ができるというんだい？
わかります、その感じ！
大がかりなセットや小道具も、それはそれでおもしろいのですが、
そういうものに頼らない簡素な舞台のほうが
想像力をかき立てられて、感動も大きい気がします。
映画にはできない、舞台だからこそできることですよね(^.^)
by チヨロギ (2008-09-24 01:36) 

やぁ　チヨロギさんの記事は楽しい
読み逃すと損した気分です＾＾；
また来ますね～～～♪
by mizuiro (2008-10-04 04:56) 

◇mizuiroさん◇
お忙しいなか、たくさんのコメントとnice！をありがとうございました。
またいつでもお待ちしております～（＾ｏ＾）/~~~
by チヨロギ (2008-10-05 01:50)