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偶然の音楽@世田谷パブリックシアター [theatre]

雨降りの日曜日に三軒茶屋へ。
世田谷パブリックシアターで、「偶然の音楽」を観てきました。


公演チラシ

3年前、仲村トオルと小栗旬の組み合わせで上演された舞台(観てませんが)。
今回は小栗旬に代わって田中圭が出演するというので、
チケットとりやすいかな~(失礼)と思ってたんですけど。
2階席でした・・・( ̄  ̄;)
以前、ここの3階席で脂汗[たらーっ(汗)]を垂らした経験を持つ高所恐怖症の私ですから、
この席(2階正面2列目)にはちょっと凹みました。
でも幕が開いてみたら、すごくいい席だったんです、この作品を観るためには。

チェス盤のようにも見える石畳の舞台は、幅が狭く客席側にせり出した形。
そこを出演者たちがチェスの駒のように縦横に動きまわることで、
時間の経過や走り去る景色、人々との出会いや別れを表現しているようです。

  物語の主人公、ジム・ナッシュ(仲村トオル)は妻に逃げられた消防士。
  ある日、行方知れずだった父親の莫大な遺産が転がりこんでくる。
  家も職も捨て、新車の赤いサーブを買い、あてのない旅に出るナッシュ。
  遺産を浪費しながら憑かれたように走りつづける彼の前に、
  ジャック・ポッツィ(田中圭)という傷だらけの若者が現われる。
  天才的ギャンブラーであるポッツィが言うには、
  数日後に大富豪二人とポーカーゲームをして大儲けする計画だという。
  旅を終わらせるために、ナッシュは遺産のすべてを提供して勝負に臨む。
  ところが、ゲームに負けたうえに借金まで背負った彼らを待っていたのは、
  ひたすら城壁の石を積みあげるだけの労働の毎日だった――。




公演プログラムより

寓話のように非現実的な、不思議な出来事の連続のなかに、
人間のリアルな心理をあぶり出すポール・オースターの原作。
制約の多い舞台空間で、あの距離感や大きさをどうやって表現するんだろう?
と興味津々でしたが、シンプルな舞台装置と小道具をうまく使いながら、
透明感のある物語世界が見事に再現されていました。

ナッシュとポッツィが考えるさまざまな「偶然」。
・・・もし娘を手放す前に遺産が手に入っていたら。
・・・もしポーカーでツイている最中にナッシュが席を立たなければ。
物事の起きる順番が違っていたら、まったく別の人生が待っていたかもしれない。

だけど、人間は「偶然」に翻弄されるだけの存在ではないはず。
人の一生のうちにはたくさんの分かれ道があって、
ひとつ選ぶたびに右へ大きく振れたり、また左へ揺りもどしたりするけれど、
その人の内面の方向性みたいなものは、あまりブレがないんじゃないかと思うんです。
「偶然」に逆らうことはできないけど、「偶然」に運命を操られる必要もない。

プログラムのなかに、仲村トオルのこんな言葉がありました。

なにか流れがあって、それに抗おうとしてもダメな時はダメだし、乗れる時は乗っていかなきゃ、という想いは僕の中にもあります。でも、ダメな時でも抗うことは決して無駄ではなくて。すごい激流を川上に向かって泳がなきゃいけない時も、流されつつ抗って泳いだ結果ついた筋肉はそのうち役にたつだろう、みたいな気もします。


流されつつ抗って泳いだ結果ついた筋肉・・・。うまいこと言うなあ。

ネタバレになるので書けませんが、ラストシーンもすごくよかったですよー。
「ナッシュが最後に見た風景」(白井晃)に、小説にはない救いがあって。
悲しみとともに、温かな余韻が残る舞台でした。

[data]
原作:ポール・オースター
構成・台本・演出:白井晃
出演:仲村トオル、田中圭、三上市朗、大森博史、小宮孝泰、ほか
公演期間:2008年9月14日(日)~2008年9月28日(日)
会場:世田谷パブリックシアター
上演時間:2時間15分(休憩なし)

原作本は、↓こちら。

偶然の音楽 (新潮文庫)

偶然の音楽 (新潮文庫)

  • 作者: ポール オースター
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 文庫


◆◆◆◆


[偶然つながり?]

いつだったか忘れましたが、今年も「ほぼ日アンケート2008」に回答したところ、
このたび「ほぼ日特製ステッカー」が当選しましたv



これ、椎名さんも当たったそうです。
フフフ、ステッカー仲間ですねw


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コメント 30

Kimball

あ、原作がポール・オースターさんなのですね。

なは。 お恥ずかしながら、文庫本を何冊か買いながら
まだツンドク中です....

うー、こんなヘビーなおはなしだったのかあ...\(^o^)/
---------------
ご紹介ありがとうございました!
興味深く読ませていただきました。

---------------
>でも幕が開いてみたら、すごくいい席だったんです、
>この作品を観るためには。

うふ。まさに「偶然の音楽」....?!\(^o^)/

by Kimball (2008-09-23 06:31) 

柴犬陸

これは自分との相性の問題なんですが、
白井さんの脚本・演出作品から、最近は遠ざかってしまって。。
それで、この芝居もスルーしてしまいました。
タイトルにもメッセージが込められているのでしょうか?
「偶然」という言葉には、いろいろなイメージが湧きます。

ほぼ日のステッカー、私にも届きました。
厳正なる抽選の結果、と書いてありましたけど、確率は高いようですね。笑
by 柴犬陸 (2008-09-23 13:30) 

たかち

「小説にはない救い」いいですね~~!!
そーゆー追加は大歓迎です♪

by たかち (2008-09-23 20:20) 

流星☆彡

ほほぅ!舞台の造りを想像すると あの劇場の2階正面2列目で 確かに
バッチリな感じですネ♪ 田中圭クン☆嵐の大野くん主演ドラマに出てたけど
(まずJohnny’s興味でスイマセン!(ーー;) )最近 人気急上昇らしい。
私は ちょいエロイ『東京大学物語』ってのに出てた彼に (なんで“エロイ”
映画 見てるんだ 自分…f(一_一;) )心奪われておりましたんですけど
ね。(^^ゞ

“その人の内面の方向性みたいなものは、あまりブレがないんじゃないか”
そう。思いもよらない出来事が起こったせいと 振り返ってみるんだけど結局
自分だから こういう結果に至った顛末だな…と思い至ること多いです。
確かに。。。

けっこう頻繁に劇場にいらっしゃる三茶に寄られる時 知らせてよ。
5分程でも立ち話でも したいな。(←自分はママチャリでの買い物帰りの
設定ですな。これは。。。ゞ( ̄∇ ̄;)ヲイヲイ)
by 流星☆彡 (2008-09-23 21:05) 

柴壱

舞台上の動きを楽しむには、後方席というか、2階席は格好でしたね。
もっとも、世田パブの2階席は、1階の最後列よりずっと見やすいという話ですけど。
仲村トオルの舞台って、ちょっと見てみたい感じです^^
by 柴壱 (2008-09-24 01:17) 

チヨロギ

◇Kimballさん◇
ポール・オースターの本をお持ちなんですね。
でもまだツンドク中でしたか(笑)
オースターの小説は、柴田元幸の翻訳もよくて読みやすいですし、
内容もそれほどヘビーではないと思います。
ぜひ今度、蔵書の中から一冊読んでみてください(^.^)
 >まさに「偶然の音楽」....
ほんとですね! すてきなコメント、ありがとうございます♪

by チヨロギ (2008-09-24 01:30) 

チヨロギ

◇みほさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-24 01:39) 

チヨロギ

◇柴犬陸さん◇
白井さんの作品は、いつも難解そうで観たことがなかったのですが、
今回はポール・オースターの名前に惹かれて申し込んでみました。
原作を知らなかったら、きっとまたスルーしていたかと・・・( ̄ー ̄;
「偶然の音楽」というタイトルには、何重もの意味が込められているようです。
あっ、でも「偶然」といえば、柴犬陸さんの専売特許でしたよねw

ほぼ日ステッカー、やっぱり届いてましたか!
もしや全員プレゼントだったりして・・・(笑)
by チヨロギ (2008-09-24 01:41) 

チヨロギ

◇たかちさん◇
小説は破滅的な終わり方なんですよ~。
でも舞台はもう少し、ナッシュの想いに寄り添った結末になっていました(^.^)
by チヨロギ (2008-09-24 01:42) 

チヨロギ

◇流星☆彡さん◇
キャストの縦方向の動きや、途中に出てくる街のミニチュア模型なども、
上からだとよく見えるんですよね。ラッキーでした♪
田中圭という人を私は全然知らなかったのですが(失礼)、
人気急上昇なんですか? しかも流星☆彡さん好みなんだ~(*´艸`)
チケット楽勝と考えた自分は、かなり甘かったわけですね(笑)

 >自分だから こういう結果に至った
自分の身に起きることは、ある程度自分が引き寄せているものであって、
時期の早い遅いはあっても、結局は起こることだという気がするんですよね。
「偶然」によって順序を狂わされたとしても。

 >5分程でも立ち話でも したいな
立ち話といわず、まったりとお茶でもいかがでしょう(笑)
今度三茶に行くときにはご連絡いたしますね♪
by チヨロギ (2008-09-24 01:45) 

チヨロギ

◇akistechさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-24 01:46) 

チヨロギ

◇柴壱さん◇
1階の最後列には座ったことがないのですが、
たしかに2階席のほうが見やすそうですね。
舞台との距離も近いし、傾斜も急ですから。
仲村トオルは、あの仲村トオルでした(←説明になってない? 笑)
by チヨロギ (2008-09-24 01:47) 

チヨロギ

◇shinwaさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-24 23:37) 

椎名

ふふふ。ステッカー仲間ですね♪
「パコ」の事、色々教えていただき、ありがとうございました~☆

来年こそは「ほぼ日手帳」デビューしようかな?と思ってたんですが、
値段の割に、そこまで使いこなさそうなので、やはり断念しそうです・・・。


by 椎名 (2008-09-25 03:05) 

チヨロギ

◇椎名さん◇
こちらこそ、おもしろそうな映画のご紹介、ありがとうございます♪

ほぼ日手帳は、使いやすいですよ~☆
予定を書くだけではなく、簡単な日記帳としても使えます。
チケットの半券を貼っておくのも楽しいです(^.^)
by チヨロギ (2008-09-25 23:00) 

チヨロギ

◇xml_xslさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-25 23:01) 

チヨロギ

◇さくママさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-25 23:02) 

Morimo

わたし、なかなかこの手のやつあたらないんです。チヨロギさんうらやましいです。
by Morimo (2008-09-26 00:39) 

janvierm

【流されつつ抗って泳いだ結果ついた筋肉はそのうち役にたつだろう、みたいな気もします。】
私もこの歳になってそんな考えを持つようになりました・・・・・

が;;;私はいつまで鮭な気分を味わってればいいんだろう・・・・・( -`Д´-;A)
by janvierm (2008-09-26 15:00) 

チヨロギ

◇Morimoさん◇
じつは、小モノはちょくちょく当たります。
でも大モノはさっぱりです( ̄ー ̄;
by チヨロギ (2008-09-27 00:49) 

チヨロギ

◇たねさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-27 00:50) 

チヨロギ

◇slashさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-27 00:50) 

チヨロギ

◇janviermさん◇
私は根が怠け者のせいか、抗って泳ぐ気力・体力がなく、
筋肉よりもぜい肉でぶよぶよです(涙)
 >いつまで鮭な気分を味わってればいいんだろう・・・・・
いやー、「鯉の滝登り」ということわざもあることですし、
ここは景気よく鯉で行きましょう!(笑)
by チヨロギ (2008-09-27 00:51) 

チヨロギ

◇いっぷくさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-09-27 23:37) 

みなみー

はじめまして!
柴犬陸さんのところで、いつもコメントを拝見させていただいております。
いつもステキなコメントされていらっしゃるので、訪問させていただきました。

この芝居、そそられていましたが、世田谷パブリックものだと、
やけに小難しいものが多くて、ハズスこともあるしな~
なんて思い買いませんでした(^▽^;)
でも、買ってもよかったな!と後悔いたしました。

また訪問させていただきます(*^^*)
by みなみー (2008-09-29 10:47) 

sara

とても興味深いストーリーですね。莫大な遺産、受け取ってみたい(笑)。
しかし、宝くじで三億当てた人と同じで、人生が何処かで尋常では無くなってしまうのでしょうね。金銭感覚もおかしくなるでしょうし。そうならないように気をつけても無理なのかな〜、なんて、要らぬ心配をしてしまいます。

ほぼ日のアンケート、今回は見逃してしまったんですよ。2年連続当選だったのに。
当選するというのは、何でも嬉しくて。忘れていたりすると余計に嬉しいですね☆
by sara (2008-09-29 17:56) 

チヨロギ

◇みなみーさん◇
はじめまして! ご訪問ありがとうございます。
柴犬陸さんのブログのコメント欄では、いつもお世話になっております(^.^)

白井晃さんの作品には取っつきにくいイメージを持っていましたが、
世田谷パブリックシアターは、見やすいので好きな劇場です。
最近では深津絵里さんの「春琴」がすごくよかったですよ~☆
「偶然の音楽」も観客の想像力をかき立てるような、印象的な舞台でした。

またどうぞ遊びにいらしてくださいね(^.^)
by チヨロギ (2008-09-30 01:14) 

チヨロギ

◇saraさん◇
一銭も使わないで銀行に預けておくか、湯水のごとく浪費するか、
両極端に走ってしまいそうですよね。何しろ、持ちなれない金額ですから(笑)
この作品の主人公は、旅を続けるうちにいつの間にか、
遺産を浪費すること自体が生きる目的になってしまうんです。

ほぼ日アンケート、saraさんは応募されているとばかり思っていました。
そうですか、やっぱり当選率は高いんですね(笑)
by チヨロギ (2008-09-30 01:19) 

aya

はじめまして。
何気なく「偶然の音楽」で検索をかけてこちらにたどりつきました。
私も「偶然の音楽」を観て、他の方の感想も知りたいなぁ、と思ったので。
すごく共感する感想だったので、コメント残させていただきます。

本当に音楽のような、流れるように美しい作品でしたよね。
「物事が起きた順序によって、人生の流れはすべて変わる。」
最初のナッシュのこのセリフで、まずグッときました。
何度でも観たいと思わせてくれる、数少ない舞台作品でした。

過去にチヨロギさんが書かれた舞台の感想も読ませていただきました。
私が見た作品も多くあったので、今更ながらnice!押させていただいてます。
コメントも書こうかな、と思ったのですが今更感が否めないので、とりあえずこちらへのコメントのみで失礼させていただきます。

私も舞台はよく見ているのですが、自分のブログには最近は全然感想を書いていません・・・
私もまた舞台を観たら感想を書こうかなぁ、と思わされました。

ではまたブログ拝見させていただきますね♪
by aya (2008-09-30 16:05) 

チヨロギ

◇ayaさん◇
はじめまして。ご訪問と、たくさんのnice!をありがとうございます^^
ayaさんも「偶然の音楽」をご覧になったのですね。
感想に共感してくださったとのこと、とてもうれしいです。
 >音楽のような、流れるように美しい作品でしたよね
本当にそうでしたね。白井さんの演出、すばらしかったです。
ナッシュが不意に賛美歌を歌いだすシーンもよかったですし。
ラストを見届けたときの感動は、いまでも忘れられません。

過去記事まで読んでくださって、ありがとうございます。
いつも好き勝手に(強引な解釈で)書いているのでお恥ずかしいですが(^^;
どんな舞台でどこに感動したのか、あとで楽に思い出せるように、
なるべくブログにUPするようにしています。すごく忘れっぽいものですから(笑)
今度、ぜひayaさんの感想も聞かせていただきたいです。

拙いブログですが、またぜひ遊びに来てくださいね^^
by チヨロギ (2008-09-30 23:19) 

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