シャープさんフラットさん（ブラックチーム）＠本多劇場

もう1週間以上前になりますけど、ナイロン100℃のお芝居を観に下北沢へ行ってきました。
タイトルは「シャープさんフラットさん」。
劇団結成15周年を記念して、ダブルキャストの2本立て興行になってます。
大倉孝二主演のブラックチームと、三宅弘城主演のホワイトチームのうち、
わたしが観たのはブラックチームのほう。
ナイロン100℃は初観劇で、劇団員の個性とかもよくわからないので、
知っている名前がより多いチームを選びましたv（←単純～）


［data］
作・演出：ケラリーノ・サンドロヴィッチ（KERA）
出演：大倉孝二、犬山イヌコ、みのすけ、峯村リエ、三宅弘城、
　小池栄子、坂井真紀、住田隆、マギー、ほか
公演期間：2008年9月16日（火）～10月19日（日）　下北沢 本多劇場
上演時間：2時間30分（休憩なし）


公演チラシ第1弾（左）と第2弾。左のはチラシのデザインラフに似せた凝ったつくり。
マスキングテープやトレペ、DICのカラーチップなどがすごくリアル！

◆◆

KERAの自伝的作品ということで、主人公は人気劇団を主宰する劇作家。
時代は1980年代後半から90年代前半、
ちょうどバブルの絶頂から崩壊までの数年間にあたります。
ナンセンスコメディを書いている辻煙（つじ・けむり＝大倉孝二）は、
自分と周囲が求める「笑い」の質が微妙にズレてきていることに悩み、
仕事を投げ出して超高級サナトリウムに入所。
そこでお笑い芸人・園田研々とその妻、お笑い好きな社長とその生意気な娘、
研々の元相方・赤坂などと出会うことで、煙にとって「笑い」って何なのか、
彼が何にこだわって生きてきたかが浮き彫りになってくる・・・というお話。

タイトルの「シャープさんフラットさん」は、音程が半音ずれている、
つまり世間一般とはちょっとズレた人たちを意味するということが、
あるシーンの中で明かされます。
サナトリウムはまさに、シャープさんフラットさんの巣窟。
でも、ズレた人同士の音程がぴたっと合うこともある。

恋人（小池栄子）も劇団員もわかってくれない煙の「笑い」を、
ただ一人、完璧に理解してくれるのが女芸人の赤坂（峯村リエ）。
二人が延々とナンセンスなかけ合いを続けるところとか、
煙が妄想の中で、イタい現実をコメディに変えてしまうシーンには大笑いしたけど、
全体としてはシリアスな作品でした。
夫・園田研々（住田隆）の芸は最高におもしろいんだと盲目的に信じる妻（犬山イヌコ）と、
煙の唯一の理解者・赤坂との対比も興味深かった。
物語を彩る印象的なエピソードは創作だとしても、
煙が抱えてきた孤独や焦燥、覚悟みたいなものには、
きっとKERA自身が投影されているんだろうなと思いました。

途中、「ボケ老人で笑わせるなんて」と過去の作品を批判され、
「世の中に笑っちゃいけないことなんてないんだ！」と反論する煙。
この言葉がラストへの伏線にもなっているんだけれど、
それでふと思い出したのが、昭和の終わりの「自粛」ブームです。
テレビは連日、昭和天皇の容態を流しつづけ、
くだらないバラエティ番組は不謹慎だとして放送自粛。
巷ではお祭り行事が中止されたり、縮小されたり。
いま考えても、あれはほんとうに異常でした。
人には「笑う自由」がある、どんな悲惨な状況でも、むしろそんなときにこそ。
煙の言葉には、そんなメッセージも込められているのでしょうか？

不安と自信が交互に顔を見せる大倉孝二の演技が印象に残りました。
ホワイトチームの公演では、若干ラストが違うんだとか。
うーん、気になる～！！

◆◆

買おうかどうしようか、すっごく迷ったんですけど、
芝居がおもしろかったので、結局買ってしまいました。
公演プログラムに15周年記念ブックがついて、2500円。



↑ 見て見て、この厚さ！
読んだらあっという間でしたけどね(￣ー￣;

タグ：ナイロン100℃ KERA ケラリーノ・サンドロヴィッチ 本多劇場 大倉孝二

コメント 36

うわ～、先越されちゃった！！
私もブラックチーム観てきたんですよ。
記事にしようと思ってました。

パンフ、高かったので考えた末にやめたことが悔やまれます。(^▽^;)
つまらないとこでケチった私がバカだった・・・

ホント、ホワイトチームも観てみたくなりますね！
by みなみー (2008-10-08 09:23) 

うわ～、みなみーさんも観劇済でしたか。
私は今週と来週の土曜日に、ホワイト・ブラックの順で観る予定です。
そもそものティストもラストも違う２つの芝居をつくるなんて、KERAは面白すぎます。
前評判も上々なので、期待が高まるばかりです。
チヨロギさんのレビュー、とても分りやすくて、雰囲気がよく伝わりました。
笑わせどころ満載なのに、泣けてきそうです。
ナイロンのプログラムって、いつも凝っていて、規格外だったりするから、ちょっと高くても、これで元がとれるのかな？と思わせます。
写真集のようなプログラムと比べれば、中身充実ですよね？ね？笑
by 柴犬陸 (2008-10-08 10:10) 

このテーマは、柴壱的に、大いに興味ありますわぁ。
＞人には「笑う自由」がある、どんな悲惨な状況でも、むしろそんなときにこそ。
去年、井上さんが『円生と志ん生』『ロマンス』の中で訴えてきた話にも繋がりそうですし。
困難なことも、笑いを加えることで乗り越えていこう、ってね。
たしかに、昭和の終わりの自粛ムードは異状でしたよね。
もっとも、最近の「お笑い｣は、笑いの質そのものが問題な気もしますけど。
来週いっぱいくらいまでお仕事のつもりだったので、スルーしてしまいましたが
2週間も早く終わってしまったので、今はチョイプー。
こんなことなら、チケットトライしておけばよかったですわ。
でも、白黒両方見たくなりそうですよね。
by 柴壱 (2008-10-08 11:33) 

コメントも面白いので コメント共々また読みに伺いますぅ♪ (^^ゞ
by 流星☆彡 (2008-10-08 15:03) 

>マスキングテープやトレペ、DICのカラーチップなどがすごくリアル！
↑ ここ、凄く懐かしくて、しみじみ〜。（昔の商売道具でした。(^-^ゝ）
読んでいて、私はどちらかというとシャープかな、なんて考えたりして(笑)。
笑いの自粛、ますます暗くなりそうな気がします。公の場は分かりますが、
個人では、そこまでしなくても良いのではないかと、考えてしまいました。
>イタい現実をコメディに変えてしまうシーンには大笑いしたけど
こういう笑い、ハマりそうな気がします。面白そうなお芝居ですね〜☆
プログラムの厚さ、凄いですね！これは秘蔵版として置いておきたくなりそう。
by sara (2008-10-08 17:58) 

シャープさん・フラットさんは１９７０年頃までやっていたＮＨＫの番組かと
思ったのだが。その上、そのことをコメントする人たちもしらないようだが。
by 春分 (2008-10-08 18:33) 

「シャープさんフラットさん」
これは日常生活で使いたい！！！
多分、おいらもシャープさんフラットさんの一人です（笑）
by たかち (2008-10-08 20:54) 

↑春分さんが言っておられる番組を知っています。（歳がバレバレです。笑）
イントロを聞いて、題名を当てる音楽番組でした。
NHKらしく、クラシックから歌謡曲まで幅広いジャンルにわたっていました。
最近になって、友人の叔父さんが出演したことがあったと聞いてビックリ。
きっと、KERAもその番組を知っていて、それをあえて違う意味に置き換えているのではないかと推測しています。
そのあたりは、プログラムの中で、触れているのではないかと。。。
by 柴犬陸 (2008-10-08 22:45) 

「シャープさんフラットさん」（ＮＨＫ）知ってますよん♪ やっぱり “この世代”は
この番組 思い出しちゃいますよね。(*￣ｍ￣)
また覗きに来…ちゃったりして。。。ゞ(￣∇￣)ｦｲｦｲ
by 流星☆彡 (2008-10-09 01:15) 

◇みなみーさん◇
お先に失礼します～m(__)m・・・っていうのもヘンですが（笑）
みなみーさんもブラックチームをご覧になったのですね。
ぜひ感想を聞かせていただきたいです！
パンフはKERAと全出演者のインタビュー中心で、
なかなかおもしろかったですよ～。
それにしても、ホワイトチームが気になってしょうがありません(￣ー￣;
by チヨロギ (2008-10-09 02:23) 

◇柴犬陸さん◇
両方ご覧になっての感想を、ぜひお聞きしたいです！
すごいですよね、ストーリーが同じとはいえ演出もラストも違う作品を、
2本同時に上演してしまうなんて・・・。いやはや。
観ているときは笑ってしまうシーンが多かったと思うんですが、
観終えてからじわじわと、いろんな想いがこみ上げてくる感じ。
うまくまとまらなくて、感想を書くのに時間がかかってしまいました(+_+)
プログラムはたしかに凝ってますね～！
ダンボールの箱を組み立てて2冊を箱詰めにするだけでも、
ずいぶん手間ひまがかかっているはずです。
　＞写真集のようなプログラムと比べれば
そういうのが多すぎますよね！　やたら上質な紙で、字が少なくて。
その点、このプログラムはしっかり読み応えがあります。どうかご安心を（笑）
by チヨロギ (2008-10-09 02:24) 

◇柴壱さん◇
私にとっては初ナイロンでしたが、おもしろかったですよ～♪
「笑い」というテーマは井上さんの作品にもくり返し出てきますね。
「タブーなき笑い」という意味では、『藪原検校』もそうでしたし。
ちょっとでもタブーに触れそうなものは何でも自粛するというのは、
近年のマスコミの悪い傾向だと思います。
　＞最近の「お笑い」は、笑いの質そのものが問題
ほんとにそうですねー、見ていて全然笑えませんから(￣ー￣;
今回の作品では、とくに大倉孝二さんが観てみたかったので、
すんなりブラックチームに決めてしまったのですが、
両方観るとまた別のおもしろさがありそうですよねー(^.^)
by チヨロギ (2008-10-09 02:24) 

◇xml_xslさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-10-09 02:25) 

◇流星☆彡さん◇
了解！　またのお越しをお待ちしております(≡￣ー￣≡)
by チヨロギ (2008-10-09 02:26) 

◇saraさん◇
このチラシ、貼ってあるテープとか付箋とかが立体的に見えて、
とてもよくできてるんですよ～！　ぜひsaraさんにもお見せしたいですv
なんでもかんでも自粛してしまう傾向は、かえって危険という気がしますね。
笑いたいことも笑えないなんて、窒息してしまいそうです(@_@)
ナイロン100℃のお芝居を生で観るのは今回が初めてでしたが、
テーマはシリアスでありながら、笑える小ネタもいっぱいで楽しかったですw
プログラム、じつは仕舞い場所に悩んでおります・・・（笑）
by チヨロギ (2008-10-09 02:26) 

◇春分さん◇
おっ、そっちへ来ましたか（笑）
ご指摘どおり、NHKの番組名をそのままいただいちゃってます。
私は見ていませんでしたが、番組の存在は知っております。
そんな年齢です(;￣ー￣A
by チヨロギ (2008-10-09 02:28) 

◇たかちさん◇
うまい使い方ですよね（笑）
私もシャープさん・・・いや、フラットさんかな？？
by チヨロギ (2008-10-09 02:28) 

◇いっぷくさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-10-09 02:28) 

◇柴犬陸さん◇
番組内容を詳細にご紹介くださって、ありがとうございます！
すると、「ドレミファドン！」の元祖みたいな番組なのかな？
私もKERAと同世代ですから、番組名だけは憶えているのですが、
わが家では当時NHKをほとんど見なかったので、内容は知りませんでした。
柴犬陸さんのご友人のように親戚が出演したら、絶対見ていたのに！（笑）
プログラムを一読したところ、番組にはとくにふれていないようです。
これをタイトルに持ってきた真意を知りたいですね～。
by チヨロギ (2008-10-09 02:30) 

◇流星☆彡さん◇
番組、やっぱりご存じでしたか(*´艸`)
ということは、けっこう視聴率が高かったのかな？
by チヨロギ (2008-10-09 02:30) 

残念ながら番組知りません；；；；

「シャープさんフラットさん」・・・私か(●ﾟ，_･･ﾟ)
なんて思っちゃいましたｗ

by janvierm (2008-10-09 13:52) 

私は先月ブラック見て来ました～
今週末にホワイト見てきます。
パンフは主人が買ったので見せてもらいました(゜▽゜)
ナイロンは10年くらい前から見てますが、最近の作風が一番好きかもです。
今回の作品もほんとにいろいろ考えさせられる、密度の濃い舞台でしたね(＾＾)
by aya (2008-10-09 13:57) 

シャープさんフラットさん、懐かしい響きだな～。
by noric (2008-10-09 16:51) 

◇janviermさん◇
私も名前は知っているけど、番組を見た記憶はないんですよ～。
別に若ぶっているわけじゃないんですが（笑）

janviermさんもシャープさんフラットさん仲間？
人とちょっとぐらいズレているほうが楽しいですよねw
by チヨロギ (2008-10-09 23:01) 

◇ayaさん◇
ブラックとホワイト、両方ご覧になるんですね。
どちらも評判がいいようで、これはすごいことだなぁと思います。
10年前・・・私はナイロンの存在すら知りませんでした(￣ー￣;
「どん底」がすごくよかったので、ナイロンも観てみようかなと思ったのです。
ホワイトを観たあとにでも、感想を聞かせていただけたらうれしいです♪
by チヨロギ (2008-10-09 23:02) 

◇noricさん◇
お！　番組をご存じですねw
なんだか私も見てみたくなってきました・・・。
by チヨロギ (2008-10-09 23:03) 

◇たねさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-10-11 01:15) 

あ～やっぱり...
どうも聞き覚えがあると思ったら...
大昔ＮＨＫでやっていた番組名でしたか...
って、内容はさっぱり記憶にありませんが...＼(^o^)／
「シャープさん、フラットさん」という響きだけが
しっかりのこっていますわい。
by Kimball (2008-10-11 17:21) 

◇shinwaさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2008-10-12 00:52) 

◇Kimballさん◇
そうなんです、大昔のNHKの。
舞台の内容は番組とは直接関わりがありませんが、
強いて言えば共通点は、ブラックとホワイトの2チームに分けたところかな？
シャープチームとフラットチームにしなかったところが、
いちおうオリジナル（？）ということで(^.^)v
by チヨロギ (2008-10-12 00:59) 

こってますね～。こっている物見るの大好きです。その人の仕事っぷりを見ているようで。。。肩はこりたくないですけどね。
by Morimo (2008-10-13 00:58) 

◇Morimoさん◇
このチラシはほんとに凝ってて、細かいところまで見てると楽しいです。
Morimoさん・・・もしかして凝り性？
by チヨロギ (2008-10-14 00:45) 

今 朝日新聞の夕刊に演劇評が出ているので、それを読みながら こちらに。
（新聞のモニターやってて、最近は記事を選ばず必死で（!）読んでる日々
でして。。。f(^_^;) ）
タイトル…“６０年代ＮＨＫで放送された番組だが、ここでは主人公を含め
時代の動きからずれてしまった人たちを意味する”…って、私も含まれてる
のか…↑身に積まされる解説で。。。(A-_-;)＼(＾ー＾＊)ﾏｧﾏｧ
坂井真紀さんって “あの”坂井真紀ちゃんが出てるのかな。キャストでは
小池栄子ちゃんしか知らない…小劇団☆素人の私ですが、こちらが
きっかけで 好奇心を 大いに くすぐられました～♪

by 流星☆彡 (2008-10-14 17:18) 

◇流星☆彡さん◇
新聞のモニターなさってるんですか？　それはそれはお疲れさまです～！
夕刊の劇評、教えてくださってありがとうございます。
私もいま読んだところです(^.^)
この芝居の時代設定はバブルの前後なんですけど、
あのころって、マニアックな深夜番組が流行りましたよね。
笑いがどんどん先鋭化して、排他的になっていって・・・。
舞台を観ながら、そんなことを想い出していました。
坂井真紀は、あの坂井真紀ちゃんですよ～♪
サナトリウムの健気な職員役が、とてもよかったです。
主人公の恋人役の小池栄子も、堂々たるものでした。
私も小劇団はまったくの素人で、恐る恐る観に行ったのですが、
とても楽しかったですv
by チヨロギ (2008-10-15 00:56) 

劇団にも詳しくなく 観てもいないのに 興味津々で 失礼いたします。f^^;
小池栄子ちゃんは ドラマ「大奥」で 意地悪な でも実は不安な側室役で
主役女優達（藤原紀香さんとか）を 完全に“食って”しまった怪演に 魅せられて
いたんですけど、こんな舞台で活躍してたんダ♪ とか嬉しかったりして。
バブル前後のマニアックな深夜番組って どんなのでしたっけ？！ちょうど
古～い社宅で妊婦してた頃で バブルとは無縁な生活してたんだけど…。
「ボキャブラ」とか？
by 流星☆彡 (2008-10-15 01:33) 

◇流星☆彡さん◇
いえいえ、コメントどうもありがとうございます(^.^)
私は小池栄子がドラマに出ているのも見たことがなく、
ウリナリ社交ダンス部の印象ばかり強かったので（笑）、
しっかり舞台女優さんしてるのを見て、びっくりでした。
バブル当時の深夜番組というと、「カノッサの屈辱」とか、
「カルトQ」とか、「たほいや」とか・・・。
もっといっぱいあった気がするんですけど、忘れました。すんません（笑）
by チヨロギ (2008-10-15 02:00)