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しとやかな獣@紀伊國屋ホール [theatre]

風の強い日曜日に、新宿・紀伊國屋ホールにて「しとやかな獣(けだもの)」を観劇。
演出家のKERAと女優の広岡由里子による演劇ユニット、
「オリガト・プラスティコ」の第4回公演となる今回は、
川島雄三監督作品「しとやかな獣」(1962)を舞台化するという。
オリガト・プラスティコを観たこともないし、川島監督の映画も未見だけれど、
新藤兼人が脚本を書いた異色のブラックコメディ、というところに惹かれてしまった(* ̄。 ̄*)



パンフレットより。左が広岡、右がKERA

時代は昭和30年代半ば、まだ東京オリンピックも開かれていないころ。
団地の一室を舞台に、ある四人家族の日常が描かれる。
父親の前田時造(浅野和之)は戦後、いくつかの事業に失敗して現在無職。
専業主婦の妻よしの(広岡由里子)とともに、
息子の実(近藤公園)と娘の友子(すほうれいこ)の稼ぎで日々暮らしている。
といっても、稼ぎ方が全然マトモではない。
実は勤務先の芸能プロの金を横領し、友子は有名小説家(大河内浩)の妾となるが、
時造はその手当てだけでは飽き足らず、小説家にたびたび金をせびる始末。
他人の金を巻き上げ、その金で贅沢三昧するこの一家もトンデモナイのだが、
さらに上を行くのが芸能プロの経理担当・三谷幸枝(緒川たまき)。
実を筆頭に、数々の男と関係を結んで大金を貢がせ、着々と旅館開業資金を貯めているのだ。
不正の証拠は一切残さず、前田一家も舌を巻くほどの手際のよさで。


・・・とまあ、ストーリーはこんな感じですが。
痛快でしたw
わっはっはと笑うよりも、腹の底からクックッとブラックな笑いがこみ上げてくるような。
もう、前田一家に弟子入りしたい~!(ウソ)
貧乏で卑屈になって、世を恨んだりグレたり絶望したりするんじゃなく、
「どんな手を使っても生きるのだ!」というパワーがすごい。
その対極にいるのが、幸枝のために法を犯す税務署員の神谷(玉置孝匡)。
愛する人に迷惑をかけまいと、すべての責任を一身に背負い去っていく。
でも、こういうのを美徳だなんて思っちゃいけない。
生きてこそ、の人生なのだから。

[data]
東京公演:2009年1月29日(木)~2月8日(日)紀伊國屋ホール
作:新藤兼人
演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)
出演:浅野和之、緒川たまき、広岡由里子、近藤公園、すほうれいこ、
 佐藤誓、大河内浩、玉置孝匡、山本剛史、吉添文子
上演時間:約1時間40分


タイトル部分に切り取り線があって、窓が開くようになっているんだけど、
もったいなくて切り取れない~(^▽^;)


若尾文子が幸枝役の映画版はこちら。↓ いつかぜひ、観てみたい。

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◆◆◆◆


[おまけ]

今回の舞台は、昭和30年代半ばの郊外の団地の一室とあって、
当時の生活感あふれる小道具を見るのも楽しかった。
  • ルノワールの絵 ←よく銀行とかのカレンダーに使われてた
  • 東郷青児の絵 ←人気ありましたね
  • チャンネルをガチャガチャ回すタイプのテレビ ←しかも白黒
  • 玉暖簾 ←うわ! 懐かし~
  • 籐製スツール ←真ん中が凹んでいるので鼓椅子ともいう
  • 竹製のステッキ ←いまもあるけど
  • ガーゼの寝間着 ←パジャマではなく浴衣スタイル
  • 越路吹雪、丸山明宏の歌 ←いまは美輪明宏ですね

自分としては、玉暖簾がいちばんのツボ☆
こういうのを懐かしいとか言ってると、トシがばれるなぁ~o( ̄ー ̄;)ゞ


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コメント 36

きむたこ

舞台だなんて、贅沢な時間だ〜☆☆
舞台のあとはおいしいも?
ソコも気になるくいしんぼうのきむたこでした・・・。(≧v≦)
by きむたこ (2009-02-04 17:40) 

janvierm

これを観たら今の自分に自信が付きそうですね(*´σー`)エヘヘ
【ブラックコメディ】は私も好きな分野なのでw
ぜひ観たいですねぇ~♪


by janvierm (2009-02-04 17:58) 

Yuseum

玉暖簾って何? と思ってググってみたら、、、
ああ、ありました、ありました! 我が家にも昔ありましたよ(^^)v
by Yuseum (2009-02-04 18:54) 

sara

チヨロギさん、最近お芝居に行かれる事が多いですね☆ 羨ましい限りです。
玉暖簾は、どこの家にもひとつは有ったような。東郷青児の絵も良く見かけました。
>「どんな手を使っても生きるのだ!」というパワーがすごい。
うーん、少し見習いたいものです。どうも控えめになってしまいますよね〜。
by sara (2009-02-04 21:09) 

さくママ

玉暖簾って何?(笑)
若いからわかりませ~ん!(爆)
by さくママ (2009-02-04 22:04) 

柴犬陸

今日、マチネを観てきました。
マチネのせいか、年齢層が高かったように思います。
そして、新藤兼人氏がちょうど客席にいらっしゃいました。
47年前の作品を、作者と同じ空間で観られたのは幸運でした。
暗転しないでいきなり芝居が始まり、そのあとで、「本日は、ご来場有難うございます、携帯や。。。」の放送が、芝居の一部のように流れて、おかしかったですね。
この辺はKERAらしいなぁって。
映画では絶対こんなシーンはありませんものね。
by 柴犬陸 (2009-02-04 23:14) 

チヨロギ

◇きむたこさん◇
ふっふっふ、もちろん帰りにはおいしいも!(゚ー゚)
食事するにはちょっと時間が早すぎたので、
デパ地下でお買い物して帰りましたよ~v
by チヨロギ (2009-02-04 23:41) 

チヨロギ

◇janviermさん◇
騙される人たちより、騙す側の面々に感情移入してしまいましたw
自分の中の“ブラック”成分が目覚めちゃったんでしょうか(笑)
janviermさんもきっとお気に召すと思いますよ~( ̄ー ̄)ニヤリ
by チヨロギ (2009-02-04 23:42) 

チヨロギ

◇Yuseumさん◇
おお、玉暖簾はYuseumさんのご実家にもありましたか~!(⌒~⌒)
一世を風靡した(?)インテリアですよね。
懐かしいでしょ?
by チヨロギ (2009-02-04 23:43) 

チヨロギ

◇saraさん◇
このお芝居は公演期間が短く、観劇日の選択肢が限られていたので、
前にとっていた「冬物語」と1週違いで行くことになってしまいました。
玉暖簾とか東郷青児とか、時代を感じさせる小道具が飾られていて、
開演前に見ているだけで楽しかったです^m^
主人公一家は楽して生きることに貪欲というか、
とにかくパワフルで可笑しいんですよ~(o ̄ー ̄o)
by チヨロギ (2009-02-04 23:43) 

チヨロギ

◇さくママさん◇
何なに? “若いから”わからないですって?
そういうトコ、かえって怪しいなぁ~( ̄一* ̄)(微笑)
by チヨロギ (2009-02-04 23:44) 

チヨロギ

◇柴犬陸さん◇
千秋楽あたりにいらっしゃるのかなと思っていましたが、今日でしたか。
新藤氏とご一緒だったとは、相変わらずツイていますね!
そうそう、場内アナウンスのあたりは浅野さんの迷演技に爆笑でした。
あと、近藤さんが水道橋博士に見えてしょうがなかったのは私だけ?(笑)
ストーリーを読んで、もっと毒のきつい作品かと思っていましたが、
意外とそうでもなかったですね。
でもあっけらかんとした悪人たちのやりとりは、楽しかったですw
by チヨロギ (2009-02-04 23:45) 

チヨロギ

◇greensさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-02-05 11:41) 

チヨロギ

◇たかちさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-02-06 01:26) 

チヨロギ

◇shinwaさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-02-06 10:04) 

チヨロギ

◇向日葵さん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-02-06 10:05) 

柴犬陸

さきほど、記事UPしたのですが、実は、パンフレットの窓を開けた写真が面白かったので、ついつい添付してしまいました。
チヨロギさんの記事をパクッた感じですみません。
ただ、切り取ってはいませんが。。。って、弁解にならないですね。
by 柴犬陸 (2009-02-06 19:37) 

チヨロギ

◇柴犬陸さん◇
パンフの窓を開けたんですね!
どんな具合に見えるのか、記事を読ませていただくのが楽しみです♪
パクッたなんて、とんでもありませんよー!!
そもそも私がKERAさんの芝居を観はじめたのは、
柴犬陸さんのパクリみたいなものですし・・・(笑)
わざわざお知らせくださって、ありがとうございました。
by チヨロギ (2009-02-07 21:36) 

チヨロギ

◇Kimballさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-02-07 21:40) 

Kimball

「玉暖簾」(たまのれん?)、
そうそう!! そういやありましたなあ...
いまとなってみると、あれは「流行もの」だったの
ですなあ....\(^o^)/

(’59erのつぶやき)
ふっふ。
TVといえば、昔(昭和30,40年代)は
高級大型(って、17型ぐらいなもん)TVは
観音開き扉のついた棚におさまっていましたなあ...
Oo。( ̄。 ̄ )y- ~
by Kimball (2009-02-08 08:24) 

チヨロギ

◇Kimballさん◇
玉暖簾って、当時はどこにでもありましたよね(笑)
TVのホームドラマでも、玉暖簾を片手でよけながら
エプロン姿のお母さんが出てくる、なんてシーンがよくありました。(たぶん)
観音開きのテレビは、わが家にはなかったんですが、
上に小ぎれいなカバーをかけていたような記憶があります。
大事にされてましたよね~(o ̄ー ̄o)
by チヨロギ (2009-02-08 18:07) 

ゆううこ

うちの実家、夏に行くとは未だに有ります玉暖簾((((汗
昭和で時が止まった家です・・・
>小ぎれいなカバー ←記憶にあります。ゴブラン織り?
昔は電話機に”もかわいいカバー”付いてました。
by ゆううこ (2009-02-08 21:10) 

チヨロギ

◇ゆううこさん◇
おお! 玉暖簾は健在でしたか。
きっとレトロな雰囲気のすてきなご実家なんでしょうね(; ̄ー ̄A
 > 記憶にあります。ゴブラン織り?
そんな感じでした! ゆううこさんのお家も?
電話機のカバーというのもありましたねー、敷物とおそろいでした。

by チヨロギ (2009-02-08 23:43) 

みなみー

柴犬陸さんと両方の記事を拝読し、かなり行った気気分が高まりました!
ますます映画が観たくなりました~

玉暖簾・・・
いまでもかけている家に遭遇すると、涙ちょちょぎれます。
by みなみー (2009-02-12 17:54) 

チヨロギ

◇みなみーさん◇
おもしろかったですよー、乾いたブラックコメディという感じでw
映画版も興味が湧きますよね。
若尾文子に山岡久乃、小沢昭一まで出ているんですから。
玉暖簾はしばらくお目にかかっていなかったんですけど、
舞台セットの中に発見したときは、もう感動モノでした!(T^T)
by チヨロギ (2009-02-12 23:44) 

aya

私も見てきました!
映画版も見てみたくなりましたね^^
這いつくばってでも、人を踏み台にしてでも、生き抜いていく・・・
あの時代の人間の生命力やたくましさを感じました。

by aya (2009-02-14 12:37) 

チヨロギ

◇ayaさん◇
やはりayaさんもご覧になりましたか。
あそこまで盗人猛々しいと、むしろ清々しさを感じますね(笑)
生きることへの執着が、いまの時代はとても希薄になっているから余計に。
映画版ともぜひ比較してみたいですv
by チヨロギ (2009-02-14 23:21) 

kobach

新参者です.
私の見たのは大阪公演.面白くて合格点と思ったけど,不満はある.映画版を先に見ている私には,主人公夫婦の迫力(映画では伊藤雄之助と山岡久乃)の足りなさが決定的だ.ともかく映画版をビデオ屋で借りて見て下さい.端役(小沢昭一やミヤコ蝶々)に至るまでその迫力の凄まじさ.やはり時代ですね.息子や娘は好演だが,現代に通じる人間像でその分得をしている.女経理係もやはり同じ得をしている.
by kobach (2009-02-15 12:03) 

チヨロギ

◇kobachさん◇
はじめまして。ご訪問ありがとうございます。
映画版を先にご覧になったのですね。
キャストの顔ぶれを見ると、たしかに映画版は個性が強そうで、とても興味を引かれます。
舞台版は思ったほど毒がきつくない気がしましたが、これがいまの時代性なのでしょう。
ともあれ、映画版を観てみないことには始まりませんね。
コメント、どうもありがとうございました。
by チヨロギ (2009-02-16 02:27) 

kobach

チョロギさん,新参者にすぐにコメントを返していただいてありがとう.
「迫力の足りなさ」と書いたので,迫力満点の空想のキャストを思いついた.昭和の終わりの文学座特別公演『しとやかな獣』です.
作;新藤兼人,演出;木村光一
キャスト
父;北村和夫,母;杉村春子,息子;江守徹,娘;小川真由美,経理係;平淑江,社長;加藤武,作家;小沢栄太郎(俳優座から客演),バーのママ;北林谷栄(民芸から客演),歌手;小沢昭一(映画と同じ),税務署員;これは誰でも良い.
いかがでしょう.

by kobach (2009-02-16 11:42) 

チヨロギ

◇kobachさん◇
空想のキャスト・・・これはまた昭和の匂いがぷんぷんする面々ですね~。
ただ、彼らがキャストにふさわしい年齢だった当時の文学座は、残念ながら観たことがありません。
(何しろ映画公開当時はまだ生まれておりませんので・・・。)
この中で息子役の江守徹は、若いころの舞台が観てみたかったなぁと思う俳優の一人です。
文学座つながりで言えば、太地喜和子の舞台もぜひ観てみたかった。
娘役にいかがでしょう?
などと、妄想は尽きませんね(笑)
by チヨロギ (2009-02-17 01:26) 

柴壱

昭和30年代後半の団地住まい経験者としては、大道具小道具に
大いに興味ありますね。
実はこの芝居、あまり動員がよくなかった、というウワサですが、
観にいきたい、と思ったら、紀伊國屋ホールは『夜の来訪者』に変わってました(>_<)
by 柴壱 (2009-02-19 12:36) 

チヨロギ

◇柴壱さん◇
懐かしいモノが舞台にいっぱいで、楽しかったですv
もちろん、芝居の内容も痛快でした。
動員ですが、ウワサどころか、今年に入ってからもKERAさんが
「チケットはまだある」とブログに書いていましたよ(笑)
by チヨロギ (2009-02-20 01:03) 

イチロ

なにがなんでも生きようとすること。
一つの美学ですね。
こういうことが現在のわれわれには希薄なものになってきているように思います。
by イチロ (2009-02-27 17:47) 

チヨロギ

◇イチロさん◇
本館にもご訪問くださり、ありがとうございます。
おっしゃるとおり、これは美学ですね。
 > こういうことが現在のわれわれには希薄なものになってきている
いまの時代にこの古い作品を上演することの意味も、
まさにそこにあるのだと思います。
by チヨロギ (2009-02-28 01:01) 

チヨロギ

◇ハーボット好きさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-04-23 23:38) 

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