天変斯止嵐后晴＠国立劇場小劇場

ついに、文楽初鑑賞です。

・・・と、言っていいものかどうか迷うところ。(￣ー￣;
なんたって、原作がシェイクスピアの『テンペスト』ですから。






［data］
9月文楽公演　第三部「天変斯止嵐后晴（てんぺすとあらしのちはれ）」
原作：シェイクスピア「テンペスト（あらし）」
脚本・演出：山田庄一
作曲：鶴澤清治
出演：竹本住大夫、竹本綱大夫、鶴澤寛治、鶴澤清治、吉田簑助、吉田文雀、ほか
公演期間：2009年9月5日(土) ～ 2009年9月23日(水)
上演時間：1時間57分（休憩なし）



国立劇場の外観


舞台を中世の日本に置き換えているので、登場人物の名前も純日本風に変えてあります。
たとえば、

• 弟の裏切りで国を追われたプロスペロー → 阿蘇左衛門藤則（あそのさえもんふじのり）
• その娘ミランダ → 美登里（みどり）
• プロスペローの宿敵の息子でミランダと恋仲になるファーディナンド → 春太郎（はるたろう）
• プロスペローに助けられた妖精エアリエル → 英理彦（えりひこ）
• 島の住人でプロスペローの家来キャリバン → 泥亀丸（でかまる）

てな具合。エアリエルが英理彦なんて、うまいネーミングだなぁ。

とりわけ秀逸なのは、タイトルの「天変斯止嵐后晴（てんぺすとあらしのちはれ）」。

　　天変　斯くて止み　嵐　后に　晴れとなる　（てんぺん　かくてやみ　あらし　のちに　はれとなる）

ストーリーを漢字七文字で表わしていて、見事と言うほかありません。



　　　　左から、公演プログラム、公演チラシ、「天変斯止嵐后晴」のみのチラシ。
　　　　手前はプログラムの付録、「床本集」。


まず冒頭、「暴風雨」の場で舞台に登場したのは三味線と琴を弾く7人。
孤島の窟（いわや）に暮らす阿蘇左衛門が方術を使って、海に大嵐を巻き起こしているわけですが、
邦楽のイメージとかけ離れた演奏が、迫力たっぷりなのです。三味線の音って、カッコイイ。

芝居が始まると、舞台上手に張り出した「床」に、太夫と三味線弾きが座っています。
物語と台詞を語る、太夫の言葉がイマイチ聞きとりにくいけど（こちらが慣れてないので）、
舞台左右に字幕が出ているのでだいじょうぶでしょう。

・・・と思っていたら、場面転換とともに「床」がぐるりと回って、太夫と三味線弾きが交代。
すると今度の語り、すっごく聞きやすくていい声なんですよ。
ちょうど美登里と春太郎が恋に落ちる場面でもあり、物語が俄然、生き生きしてくる感じ。
あとでプログラムを調べたら、豊竹呂勢大夫という人でした。
「ろせたゆう」って、なんかすごい名前だ。(ﾟｰﾟ☆

文楽好きな人がこれをどう評価するのか、興味のあるところですけど、
シロウトのわたしには、とっても楽しい作品でした。
だって、むかし懐かしNHKの人形劇みたいなんだもん。（笑）
妖精・英理彦が登場するときは、キラリラリン～♪ とテーマ音楽が流れるし、
仇を懲らしめる場面では、化け猫ならぬ化け鳥（！）たちが登場するし。
半獣人の泥亀丸が登場したときなんて、あまりのブサカワいさに客席がドッとうけてました。
ただ、携帯電話が登場するのはいかがなものかと思いましたが。(＞▽＜;;
（舞台を彩る異形の者たちの写真は、こちら。）

愛嬌たっぷりの妖精・化物たちに心和むいっぽうで、主役たちのかっこよさ、美しさにはうっとり。
「第四　森の中」の場では、美登里に気がある泥亀丸が彼女に迫ったり、
それを助けた春太郎と美登里がたがいにひと目惚れしたりと、
色っぽいシーンが続きまして、これがなかなかにリアル。
彼らがみな人形だということを忘れた瞬間でした。

クライマックスは太夫・三味線弾きの人数が増えて、演奏でも舞台を盛り上げます。
全員が元の窟に集まって事の真相を知り、大団円を迎えたあと、
方術を捨てた左衛門がひとり客席に向かって口上を述べる趣向は、まさにシェイクスピア。
こうして初文楽の楽しい一夜は幕を下ろしたのでした。

国立劇場

［おまけ］

ひとつ、びっくりしたこと。
客席でペットボトルのお茶を飲みながら観劇している人が、何人もいたんです。
文楽では客席があまり暗くならないから、丸見えだと思うんですけど。
これって、フツーのことなんでしょうか？？

タグ：文楽 国立劇場 シェイクスピア

コメント 32

翻訳？の方のセンスが光りますね☆
by amane (2009-09-23 00:08) 

こんにちは
文楽ですか～、残念ながら私観たことがありません。
なので興味深く読ませていただきました。
＞ 天変　斯くて止み　嵐　后に　晴れとなる　（てんぺん　かくてやみ　あらし　のちに　はれとなる）
自分なんかが言うのもなんですが、漢字七文字での表現はほんとお見事ですね。
それにリンク先の登場人物を見たら、NHKの人形劇という感想に納得＾＾。
異形の者たちかわいいじゃないですか＾＾、泥亀丸って・・・こんな犬いるよなぁって＾＾；
で、携帯電話が登場？え？ええ＾＾；？
それとペットボトルのこと。この辺のマナーについてはよく知りませんが、確かにそう思いますね。
あと聞いてみたいのは、それほどにかっこいい三味線！はい。
by そーすけ (2009-09-23 16:13) 

文楽でテンペストですか〜。楽しそうですね♪
人形劇もそうですが、人形に生命を吹き込む皆々様はすごいです。
by Yuseum (2009-09-23 17:37) 

文楽は、なかなか観る機会が少ないですね。
大阪には、昔盛んだったこともあってか、
国立文楽劇場という、専用の劇場があるのです。
是非、一度、そちらでも鑑賞なさってください！
ちなみに、お茶を飲んでいる人がいて、ということですが、
歌舞伎に近い感覚のせいでしょうか・・・？
休憩を挟んで4時間くらいを劇場で過ごすことになるため、
お弁当やお茶を座席でいただいちゃうのが普通なんですよね。
だからかなあ、と思いつつ。
ペットボトルって便利なんですけど、ＴＰＯは必要ですね。
by nekopoko (2009-09-23 18:23) 

「天変斯止嵐后晴」
すごいな・・・よく考え付いたな・・・（＾＾；）天晴れ！
劇場で飲んじゃダメでしょ！！
なかにはＯＫなとこもあるけど、映画館じゃないんだから！！
by たかち (2009-09-23 19:00) 

◇amaneさん◇
英語の音を生かした名前は、とくに巧いなぁと感心しますね。
by チヨロギ (2009-09-23 20:09) 

◇きむたこさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-09-23 20:09) 

◇cocoa051さん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-09-23 20:10) 

◇トメサンさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-09-23 20:10) 

◇そーすけさん◇
こんばんはv
古典芸能の世界はさすがに敷居が高いなぁと思っていたんですけど、
今回の作品はなじみのあるシェイクスピア作品だったので、
これはチャンス！　とばかりに、はりきって行ってまいりました。
タイトルの読み下し文、すごいでしょー？　表彰したいくらいです。（←何様？　笑）
リンク先も見てくださってありがとうございます。もう、みんな可愛くて♪
泥亀丸＝デカマルも味があって、悪さをしても憎めないキャラクターなんです。
携帯電話はね、なんと防水機能つきなんですよ。だから嵐の中でも壊れなかった（笑）
鑑賞中のペットボトルはびっくりでした。
客席が暗ければまだしも、明るい中で堂々とお飲みになっているので(￣ー￣;
そして三味線、断然カッコイイです！（きっぱり）
by チヨロギ (2009-09-23 20:11) 

◇もうさっさんさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-09-23 20:12) 

◇Yuseumさん◇
文楽も人形劇も、見ているうちに人間が動かしていることを忘れてしまうんですよね。
そして「語り」の美しさ、おもしろさも格別でした。
by チヨロギ (2009-09-23 20:12) 

◇nekopokoさん◇
大阪に行ったらぜひ、国立文楽劇場に行ってみたいです！
今回の「天変斯止嵐后晴」も、「夏休み文楽特別公演」の第三部として、
ひと足先に国立文楽劇場で上演されたんですよね。
文楽の本場・大阪のお客さんはきっと目が肥えているでしょうから、
その雰囲気の中で文楽を観たら、また違ったおもしろさが味わえそう。
　> 休憩を挟んで4時間くらいを劇場で過ごすことになるため、
　> お弁当やお茶を座席でいただいちゃうのが普通なんですよね
なるほど、客席でお茶を飲むのはそういう事情かもしれませんね。
第二部と第三部の間が30分足らずで慌しかったから、それも理由のひとつかな？
by チヨロギ (2009-09-23 20:13) 

◇たかちさん◇
うわー、そう読むのか！　って驚きますよね。お見事ですv
　> 映画館じゃないんだから！！
そうそう、映画館だとジュースにポップコーンが定番ですもんね。
でも文楽の劇場って客席が明るいから、お客さんの動きが目立つんです。
ほんの2時間足らずの上演なのに、我慢できなかったのかなぁ。
by チヨロギ (2009-09-23 20:14) 

文楽も壮大な人形劇だと思えば、楽しめますね。
まだ出かけた経験がありませんが。
それにしても、作者のセンスが素晴らしい。
クドカン顔負け、というと失礼かしら？（苦笑）
ペットボトルの件は、歌舞伎の観劇ではありえると思いますが、
文楽も似たような客層なんでしょうか？　年齢層も含めて。
芝居ではもちろん、原則ノーですよね。
でも、本多劇場辺りでは、見逃されるかも。
by 柴犬陸 (2009-09-23 22:55) 

「文楽」デビュー、おめでとうございます。
かくいうワタクシも未だ未経験です。

やはり敷居が高い、と言うのか、「とっかかり」が無くて－。

劇場でのペットボトルは、最近良く見かけますね。
普通のお芝居でも－。

劇場に寄ってはかなり煩く注意する所もあるようです。
と言って、そのお客さんを追い出す訳にも行かないので、
どうしても「毅然とした態度で」とはいかないみたいですが－。

昨今は授業中でも、教師の目の前でも、平気でペットボトルから
飲み物を飲んでいるそうですから、「劇場でのペットボトル」なども
その延長なのでしょうね。。

なんともはや。。
by 向日葵 (2009-09-24 06:54) 

◇柴犬陸さん◇
初めての文楽を観ていて、NHKの連続人形劇『新八犬伝』とか、
辻村寿三郎（ジュサブロー）さんの人形を思い出したんですが、
考えたら寿三郎さんは文楽から人形づくりを学んだ人なんですよね。
　> クドカン顔負け
えっ、「あべ一座」とか？　（違 （違
客層ですが、年齢層はさまざまでした。外国人も多かったし。
でも、第三部だけで客層を判断するのはやめておいたほうがよさそう(￣ー￣;
なるほど、本多劇場はOKっぽいですか。古めの劇場だと大らかなのかな？
by チヨロギ (2009-09-24 21:27) 

◇向日葵さん◇
はい、デビューしてしまいましたー☆
歌舞伎になじみのある人なら、文楽の世界にもすっと入れると思うんですが、
まだ一度も歌舞伎を観たことがなくて・・・。
伝統芸能の世界はまだまだハードルが高いです。
劇場のペットボトル、最近増えているんでしょうか？
携帯電話の電源については、開演前に係員からくどいほど注意がありますが、
これからは飲み物のことまでいちいち注意される時代になるかもしれませんね。
なんだかお子ちゃまみたい（苦笑）
by チヨロギ (2009-09-24 21:28) 

◇ayaさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-09-24 21:31) 

文楽、母と一度だけ観に行ったことが有ります。
母は歌舞伎や文楽が大好きで年中行ってますが、
あまり一緒に行ったことが無い。
わたしは古典より新し物の方が好きだからかな？

NHK人形劇って最近は無いですねぇ。
ジュサブロウの人形展は何回か行ったこと有ります。
すべての人形に命が宿っているような迫力が有ります。
by ゆううこ (2009-09-25 19:17) 

◇いっぷくさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-09-26 12:19) 

◇今造ROWINGTEAMさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-09-26 12:20) 

◇ゆううこさん◇
お母様は歌舞伎通・文楽通なんですね。いいなー。
そういう方と一緒に鑑賞したほうが、いろいろ教えてもらえて断然楽しいと思います。
「テンペスト」はよく知っている話だったから気楽に観られたけど、
いわゆる古典モノを楽しむには、ワタクシ圧倒的に教養が足りません。（笑）

ジュサブローの人形展、わたしも行ったことがあります。
今回の公演でも思ったことですが、人形が表現する色気とか怨念とかって、
ゾクゾクするほどリアリティを感じるものなんですねー。
NHKの人形劇ですが、10月12日から『新・三銃士』が始まります！
脚本は三谷幸喜です。どうぞごひいきにv(￣ー￣)
by チヨロギ (2009-09-26 12:20) 

◇エイジさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-09-26 22:46) 

◇漢さん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-10-01 22:27) 

私は、一度見たことあります。それっきりとなっておりますが・・・
ペットボトルはよく見ますが、休憩までまつべきではないかと思うのでありますが。
by みなみー (2009-10-02 15:24) 

◇みなみーさん◇
今回は文楽を観たというより、シェイクスピアの翻案を楽しんだという感じでした。
ペットボトルは、やっぱり休憩時間中に飲んでほしいですよねー。上演中は目立つから。
by チヨロギ (2009-10-03 14:53) 

◇janviermさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-10-04 16:44) 

うわ～ん！！素晴らしい！！
「文楽の神様」に祝福されたのですねえ！！＼(^o^)／
-------------------
人形劇といえば、いよいよはじまりますね？

三谷幸喜脚本の人形劇「新☆三銃士」　NHK教育
http://www.j-cast.com/tv/2008/10/24029173.html


by Kimball (2009-10-07 19:54) 

◇Kimballさん◇
「文楽の神様」ですか、いいですね～。
またチャンスがあれば違う作品も観てみたいものです。

「新・三銃士」、Kimballさんもご存じだったんですね！
今週から「カウントダウン!! 新・三銃士」が始まったので、
欠かさず（録画して）観ております。本編も楽しみです♪
by チヨロギ (2009-10-08 00:09) 

◇yutakamiさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-10-10 02:33) 

◇Morimoさん、nice！ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-10-13 00:02)