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ヘンリー六世 第二部・第三部@新国立劇場 [theatre]

三部作合計9時間半、無事観てまいりました~。
やー、おもしろかった!
複雑な人物相関図を見たときにはどうなることかと思ったけど、始まってみたらノープロブレム。
小道具を効果的に使って物語が視覚化されているので、脳みそのヘンなところ(どこだ)が疲れることもなかったし。
次のストーリー展開が待ち遠しくなる鵜山仁のテンポいい演出、それと鉄の草原のように荒涼として美しい島次郎の美術にも惹かれました。
三部作を1本ずつばらしてもそれぞれ見せ場があるし、3本通して観たからこそ見えてくるものもある。
がんばって観てよかったです、ほんとに。




劇場入口には、シェイクスピアの時代にロンドンにあったというグローブ座の模型が。当時と同じく、屋根がありません。


[第二部:敗北と混乱]
第一部のラストシーンで暗示されていたように、第二部では王妃マーガレット(中嶋朋子)とサフォーク(村井国夫)がすっかりいい仲になっちゃってます。
玉の輿に乗ったつもりが、まるで頼りない王ヘンリー(浦井健治)にいらだつマーガレットや、権力の座を狙う貴族たちにとって、摂政グロスター(中嶋しゅう)は目の上のたんこぶな男。
まずグロスターの妻エリナー(久野綾希子)がその野心ゆえに反逆罪で捕らえられ、グロスター自身は政敵・ボーフォート枢機卿(勝部演之)とサフォークの陰謀で暗殺されてしまいます。
彼の死を嘆くヘンリーは、民衆の抗議を受け入れるかたちでサフォークを追放。
いっぽう、王位を狙うヨーク公(渡辺徹)は、アイルランド遠征に赴く間に暴徒ジャック・ケード(立川三貴)らに反乱を起こさせ、イングランドを混乱に陥れます。
ようやく騒ぎが収まったところに凱旋したヨークは、公然と王位を要求。
王ヘンリーらランカスター家(赤薔薇)とヨーク家(白薔薇)は激しく対立、ついに薔薇戦争が始まります。

[第三部:薔薇戦争]
緒戦に勝利したヨークは議事堂でヘンリーに王位を要求し、弱気な王ヘンリーは、自分が死んだら王位をヨーク家に譲ると約束してしまいます。
これを聞いて大激怒したのが王妃マーガレット。
自ら軍を率いてヨークを捕らえ、なぶり殺しにしたあと、彼の首を城門にさらすよう命じます。(怖っ)
しかし形勢が逆転して、ヨーク家の長男エドワード(今井朋彦)がイングランド王に即位、ヘンリーはロンドン塔に幽閉の身に。
援軍を求めてフランスへ渡ったマーガレットは、大使として渡仏した敵方ウォリック伯(上杉祥三)と王宮で鉢合わせ。
ところがこのウォリック伯、エドワードの裏切りを知ったとたん、あっさりマーガレットと和解してしまいます。
ウォリックを味方につけて優位に立ったヘンリーは、いったんは王に復位するものの、またもや戦況が逆転。
ついにマーガレットは捕虜となり、ヘンリーはヨーク家の三男リチャード(岡本健一)にロンドン塔で暗殺され、ヨーク家の勝利で劇は幕を閉じます。



写真付きの関係系図。でも憶えてなくたってダイジョーブ。


第二部でも第三部でも、延々と権力闘争に明け暮れるイングランドの貴族たち。
国家の行く末なんて、だあれも案じちゃいません。
それは国民とて同じこと。
戦いの大義名分が何であれ、結局は手柄やご褒美や戦利品がお目当てだったりする。
ケント州の民衆も、ジャック・ケードを反乱のリーダーとして持ち上げておきながら、形勢不利とみるや簡単に彼を見捨ててしまうし。
民衆とはいつの世も残酷なものです。

あきれるほどの裏切り合い、殺し合いが続くなかで、真ん中にぽっかり開いた空洞のような存在、それがヘンリー六世。
ひ弱で無能な平和主義者という三拍子そろった(?)ヘンリーは、戦場で息子が親を殺し、親が息子を殺す悲劇を目の当たりにして、戦争の残酷さを嘆き悲しみます。
しかし結局は何事もなし得ないまま、ラストの手前で殺されることに。
「ヘンリー、どこまで無力なんだ~」とかわいそうになるけれど、シェイクスピアはそんな彼を映し鏡にして、戦いの愚かさ、虚しさを際立たせているのです。

キャストの中では、マーガレット役の中嶋朋子が主役並みの大活躍。
サフォークへの愛を切々と語る場面はなかなか美しかったし、強気で傲慢すぎるマーガレットや、鎧を着て戦うマーガレットもかっこよかったなぁ。
ヨーク公の渡辺徹は悪くはないけども、セリフにもっと言葉の重みがほしい、せっかくシェイクスピアなんだから。
あとリチャード役の岡本健一が、二枚舌の醜い悪人を生き生きと演じていたのが印象的。
リチャードはのちに兄たちを蹴落としてリチャード三世になるわけで、するとこの『ヘンリー六世』の続編といえるのが『リチャード三世』なんですよね。
そんなわけで、いま『リチャード三世』がものすごーく観たい気分なんですけど。
このカンパニーでもう1本、ぜひお願いしたいなぁ。


※第一部の感想と公演データは、こちら。→http://chiyorogi.blog.so-net.ne.jp/2009-11-08


◆◆◆◆


第一部観劇の日には工事中だったクリスマスツリー。
翌週にはもうイルミネーションで輝いていました。


正面のハートにさわると、てっぺんの鐘が鳴る仕掛け。
楽しそうでしたよー、子ども以上にお父さんが。(゚ー゚)


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きむたこ

きむたこも、パソ画面から♡をさわって、
鐘をならしたつもりに〜。
「カーンカーン」(なのか?・爆
by きむたこ (2009-11-25 02:01) 

柴壱

お疲れ様でした~(笑)
とても一日で3部すべて観るパワーはなく、さりとて3時間超ものを3回通う勇気もなく
しかも、洋画然りで、カタカナ名前に滅法弱い、ときてるもんですから
「9時間半制覇」というだけで、尊敬です。
そういえば、チケ取りから大変だったんですもんね、これ。
シェークスピアを意欲的にご覧になるチヨロギさんって、
もしかして学生時代は英文学(戯曲)専攻だったとか?

工事中だったツリーは立派に完成ですね。
左側に写ってる巨人の手を見ると、ツリーが小っこく思えるけど。
by 柴壱 (2009-11-25 11:13) 

みなみー

ハートに触りたい!
お父さんの気持ちがわかる。

全部無事に見終わったんですね。
すっげ~!
私は、きっと頭のいろんなとこが痛くなりそーです。
by みなみー (2009-11-25 13:39) 

aya

全部ご覧になったのですね!
私も見に行きたいなぁ・・・と思いつつ、いろいろバタバタしていたら、3部通しの日は売り切れてしまい、バラシで上演する日のところにはポツポツと予定が入っていて・・・結局見に行かないままになってしまいました。
来年は蜷川さんのヘンリー六世がありますね。
そちらはちゃんとチケット取って見に行こう!と思っています。
本当は両方見て比較したかったんですけどね(涙)
by aya (2009-11-25 13:56) 

柴犬陸

おたがいにお疲れさまでした^^;
私は3日連続の観劇でしたが、予想していたよりもずっと楽しめました。
この場面はちょっと長すぎるかも、と思ったところは、きっと蜷川演出でカットされるんでしょうね。
といっても、さいたま芸術劇場まで足を運ぶ勇気(?)はありません^^;
鵜山演出で充分満足しました。
彼が新国立から離れるのは、残念でなりません。
そのことを痛感しています。
by 柴犬陸 (2009-11-25 20:45) 

チヨロギ

◇きむたこさん◇
「カーンカーン」なのです、まさに!
ちょっとけたたましい音なもんだから、
鳴るたびにいちいちびっくりします。(笑)
by チヨロギ (2009-11-25 23:57) 

チヨロギ

◇柴壱さん◇
疲れよりも、お尻が痛くなりました~(とくに第三部は長めだったので)。
気力・体力が最後までもつかなぁと心配しましたが、
一部を観たら二部が、二部を観たら三部が早く観たくてしょうがないんです。
カタカナ名前については、むかしはいわゆる新劇しか観たことがなく、
日本人劇作家の作品をよく観るようになったのは最近のことなので、
あまり抵抗を感じたことはないですね。
逆に漢字の名前が苦手だから、時代劇とか中国映画とかはチンプンカンプン。
あと韓流スターの名前もまったく見分けがつきませ~ん。(笑)
シェイクスピア、たしかに講義を受けたことはありますが、
ちゃんと勉強したわけでは・・・(>▽<;;(汗)
by チヨロギ (2009-11-25 23:58) 

チヨロギ

◇xml_xslさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-11-25 23:59) 

チヨロギ

◇漢さん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-11-26 00:00) 

チヨロギ

◇みなみーさん◇
ほんとはわたしもハートにさわってみたかったんですが、
あと一歩の勇気が出ませんでした。(^。^;)
ヘンリー六世は、名前で覚えるのを途中からあきらめました。(笑)
それでも充分ストーリーに入り込めましたよ。
by チヨロギ (2009-11-26 00:01) 

チヨロギ

◇ayaさん◇
新国立劇場がいつになく宣伝に力を入れたせいか、
チケットは意外によく売れたようですね。
とくに後半の日程のチケットは早めに完売してしまったとか。
最初は少し迷ったのですが、思い切って観に行ってよかったです。
ayaさんは来年の蜷川版を観に行かれるのですね。
わたしは今回で完全燃焼しました。(笑)
ayaさんから感想を聞かせていただけたらうれしいな。
by チヨロギ (2009-11-26 00:03) 

チヨロギ

◇柴犬陸さん◇
大変お疲れさまでした~! おもしろい芝居でしたね。
三部のあと、短い時間ながら陸さんとお話できたのもうれしかったです(^.^)
来年の蜷川版では、ジャック・ケードのところは短くなっちゃうのかな?
6時間に圧縮しても、きっと魅力的な作品に仕上がっていることでしょう。
鵜山氏の演出はわかりやすく、観客を飽きさせない工夫も随所に見られましたね。
「戦い」をテーマにした今シーズンの幕開けにふさわしい作品でした。
新国立の芸術監督退任、ほんとうに惜しいですね。
by チヨロギ (2009-11-26 00:07) 

チヨロギ

◇今造ROWINGTEAMさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-11-26 00:08) 

向日葵

9時間半制覇!
凄いバイタリティですねぇ~!!

とても真似出来ません。。。
by 向日葵 (2009-11-26 02:52) 

チヨロギ

◇amaneさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-11-26 22:06) 

チヨロギ

◇向日葵さん◇
いやもう、ヘロヘロです~(; ̄ー ̄A
次は短めの、あっさりしたのが観たいですね(笑)
by チヨロギ (2009-11-26 22:23) 

チヨロギ

◇cocomotokyoさん◇
はじめまして。ご訪問ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-11-27 23:09) 

チヨロギ

◇@ミックさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-11-27 23:10) 

Kimball

あは、いま、韓国時代劇ドラマにはまっている
オヤジ、「マーガレット妃」を話を聞いて、
「おおお! 英国の千秋太后(ちょんちゅ・てふ)が
いたのかあ?!」なんて、妙に感動して
しまいました。
って、こういう感動をわかちあえる常連さんは
いらっしゃいますかね?\(^o^)/
by Kimball (2009-11-28 10:57) 

sara

お疲れさまでした~。三部作で合計九時間半とは見応えバツグンでしたね☆
私は先日、映画『沈まぬ太陽』を観てきたのですが、三時間半でインターバルありでした。
随分、映画を観てきたつもりですが、10分間の休憩が入った映画は初めてでした。

クリスマスイルミネーション素敵ですね! 中のハートを押すのですか? やってみたい♪

by sara (2009-11-28 12:29) 

チヨロギ

◇shinさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-11-29 12:27) 

チヨロギ

◇Kimballさん◇
マーガレット的な強い自我を持った女性は、国と時代を問わずいるのですね。
このあとマーガレットは『リチャード三世』にも登場し、リチャードを呪いまくります。
出てくれば、ほとんど主役を食うほどの存在感です。(役者にもよりますけど)
さて韓国ドラマですが・・・すみません、感動を分かち合えなくて。(>▽<;;
by チヨロギ (2009-11-29 12:30) 

チヨロギ

◇saraさん◇
はい、とってもおもしろくて見ごたえがありました~♪
saraさんは『沈まぬ太陽』をご覧になったのですね。お疲れさまでした!
休憩入りの映画、わたしも一度観たことがあります。
10年ぐらい前に観たケネス・ブラナーの『ハムレット』ですが、上映時間なんと4時間!
途中に20分ぐらい休憩が入って、たしか軽食つきでした。
たまにはそんな映画鑑賞も楽しいですよね。
オペラシティのクリスマスツリー、記念写真を撮る人も多かったです☆
by チヨロギ (2009-11-29 12:31) 

チヨロギ

◇yutakamiさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-11-29 12:32) 

Yuseum

なるほど、これがかの有名な薔薇戦争ですか!
世界史をとっていなかったので、この辺の英国の歴史はよく分かっていないYuseumですが^_^;、歴史的にもお芝居的にも興味深いです。
by Yuseum (2009-11-29 23:17) 

チヨロギ

◇たかちさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-12-01 00:07) 

チヨロギ

◇Yuseumさん◇
じつは高校の世界史選択クラスではブービー賞でした・・・。(;´Д`A ```
そんなわたしでも、ちゃんとついていけるわかりやすさなんですよ。
複雑な歴史劇も、生身の人間が演じると俄然おもしろくなりますね。
by チヨロギ (2009-12-01 00:07) 

チヨロギ

◇釣られクマさん◇
はじめまして。ご訪問ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-12-01 00:09) 

釣られクマ

おつかれさまです
さかのぼって記事読んできました
昔の大作映画アラビアのロレンスとか見たことあるんですが、
いい映画なんだけど長くて見終わったらすごい脱力しましたよ^^;
演出の関係で削れないんだろうけど9時間はすごいね
by 釣られクマ (2009-12-01 12:38) 

Morimo

9時間30分!大作ですね。しかも続編があるとは!
それだけ面白いコンテンツなんですね。
芸術性や集中度合いは違いますが、ゲームも長いですよね。
by Morimo (2009-12-01 18:21) 

チヨロギ

◇釣られクマさん◇
過去記事まで読んでくださって、ありがとうございます。
「アラビアのロレンス」は超大作ですよね!
といっても、観たことはないんですが・・・。( ̄ー ̄;
「ヘンリー六世」は9時間超の芝居とはいえ、三部がそれぞれ独立した作品でもあるので、
長いという感じはあまりしませんでした。おもしろかったですv
by チヨロギ (2009-12-01 22:58) 

チヨロギ

◇Morimoさん◇
イギリスの歴史を扱った大河ドラマみたいな作品なので、
スケールが大きくてドラマチックなんですよね。
観終わったときの達成感は、ゲームを全クリした達成感と似ているかも。( ̄ー ̄)
by チヨロギ (2009-12-01 22:59) 

チヨロギ

◇ほりけんさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-12-01 22:59) 

チヨロギ

◇coupleさん◇
はじめまして。ご訪問ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-12-03 01:24) 

チヨロギ

◇ゆううこさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-12-03 01:25) 

チヨロギ

◇ぽむさん◇
こちらでは、はじめまして。ご訪問ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-12-03 23:46) 

チヨロギ

◇janviermさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-12-06 00:37) 

チヨロギ

◇yukkyさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2009-12-17 00:57) 

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