SSブログ

ファウストの悲劇@シアターコクーン [theatre]

数か月前にチケットを買ったときには、まさかこんな芝居だとは夢にも思いませんでした。
シェイクスピアの同時代作家クリストファー・マーロウの、日本初上演作品。
悪魔との契約により、自らの魂と引き換えに万能の力を手に入れたファウスト博士が、あらゆる望みを叶えた末に破滅するまでを描いたお話です。
ゲーテの「ファウスト」の元になった作品だというし、タイトルも「悲劇」っていうくらいだから、もっと重厚な、暗ーい舞台なのかなと思ってました。

とんでもない。
シルク・ドゥ・ソレイユかプリンセス天功かっていうほど、イリュージョンたっぷりなのですよこれが。
いやー、たまげたのなんのって。

[data]
ファウストの悲劇
作:クリストファー・マーロウ
翻訳:河合祥一郎
演出:蜷川幸雄
出演:野村萬斎、勝村政信、長塚圭史、木場勝己、白井晃、ほか
日程:2010年7月4日~7月25日 Bunkamuraシアターコクーン
上演時間:1幕1時間20分、休憩20分、2幕1時間15分


公演チラシ。なんかちょっと怪しげ~

まず、日本の歌舞伎一座が「ファウストの悲劇」を上演するという、劇中劇の設定。
このため、舞台後方の楽屋と、舞台下の奈落が丸見えになってます。
上演中も同時進行で、出番のない役者が楽屋で着替えたり飲んだくれていたりするので、こっちは観るのが忙しい~。
ガラス張りの楽屋は光を落とすと鏡に変わり、そこに映り込んだ客席の中から、いきなり役者が登場することも。
悪魔や天使は始終空を飛んでるし、とにかくみなさんフル回転です。(笑)

学問の道を究めたファウスト博士(野村萬斎)は、さらなる力を求めて黒魔術にとりつかれ、悪魔のメフィストフェレス(勝村政信)を召喚。
魔王ルーシファーに魂を捧げる代わりに、24年間はメフィストフェレスを召使にして、望みは何でも叶えてもらうという契約を交わします。
世界をめぐる旅に出た二人は、透明人間になってローマ法王の食卓を混乱に陥れたり、騎士たちの頭に鹿の角を生やしたり、いたずらやり放題。
このファウストとメフィストフェレスとの関係が、なかなかにアレなんですよ。
地獄落ちの運命を共にする同志であり、片時もそばを離れない恋人のようでもあり。
情熱的なタンゴを二人で踊るシーンにはゾクッとしました。(←いい意味で!)
作者のマーロウという人も無神論者・同性愛者だったそうで、ファウストは作者自身の分身なのかもしれません。

メフィストフェレスの勝村政信は、笑いを誘う初登場シーンに始まり、なんとも魅力的な悪魔を好演。空を飛ぶわ客席を駆け回るわで走行距離が半端ではなく、いつ見ても汗だくでした。
いっぽう、ファウストの野村萬斎は汗ひとつかいてない。首が飛ぼうが足が引っこ抜けようが(そういうシーンがあるんです)、あくまで美しく苦悩する人でありました。
ファウストが最期を遂げたあと、再登場して口上を述べる歌舞伎一座の口上役(木場勝己)の背中には、いつの間にか黒い悪魔の羽が・・・。

あっけにとられ、度肝を抜かれ、悪魔に魂を奪われたかのような3時間。
芝居の意味とかメッセージとかはよくわからないけど(笑)、作者の破天荒なエネルギーが伝わってきて、とにかくおもしろかったです。


公演プログラム。マーロウがじつはスパイで最後は暗殺されたとか、ファウスト古今東西とか、観劇の楽しみが増す興味深い内容。


nice!(23)  コメント(30)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 23

コメント 30

そーすけ

こんにちはー
いやぁ暑いですね^^;セミも鳴き出したしね。
いやぁいつもながら、芝居素人の自分にも分かりやすい記事をありがとうございます。劇中劇という設定や、フル回転の舞台の様子がわかって楽しそう。
最後の挨拶の時に悪魔の羽が生えているなんて面白いですね。悪魔^^。

汗といえば、役者さんやダンサーさんてあまり汗っかきの人っていませんよね。むしろ汗はあまり見ない(見えないようになってるのかな)。汗っかきだったら困るでしょうが^^;
ダンサーさんなんかどんなに動いて歌っても涼しい顔してるもんねぇ。どうなってるんだろうと思うことがあります。

今日病院の待ち時間に、携帯からコメントをしていたら自分の操作ミスだと思いますが消えてしまって・・・、だから実は2度目のコメント^^;

by そーすけ (2010-07-31 16:44) 

柴犬陸

>作者の破天荒なエネルギーが伝わってきて
チヨロギさんのレビューからも、そのエネルギーがびゅんびゅん伝わってきます。
さすがの蜷川演出ですね~。
ファウストだし、萬斎だし、勝村だし、なんだか疲れそうって、さっさとスルーしてしまいました。
失敗、失敗。
でも、公演チラシを見たら。。。やっぱりスルーするだろうなぁ。(なんのこっちゃ)
by 柴犬陸 (2010-08-01 01:11) 

向日葵

「ちょっと」面白そうなお芝居ですね。

「野村萬斎さん!」と聞いたら、これは行かなくっちゃ!!

十二分に堪能なされたようで何よりでした!マル!

by 向日葵 (2010-08-01 07:33) 

チヨロギ

◇今造ROWINGTEAMさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-08-01 09:56) 

チヨロギ

◇xml_xslさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-08-01 09:56) 

チヨロギ

◇柳さん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-08-01 09:56) 

チヨロギ

◇きむたこさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-08-01 09:57) 

チヨロギ

◇そーすけさん◇
こんちはー♪
また暑さがぶり返してますねぇ。今年はセミも鳴いたり鳴かなかったりで。
この芝居はスペクタクルっていうか、イリュージョンっていうか。(>▽<;;
批評家でも学者でもないので、純粋に一観客として楽しんできました~♪
悪魔の羽が生える口上役は、冒頭に出てきた時から片目がつぶれているんですが、
これは目を刺されて暗殺された作者マーロウを表わしてもいるようです。( ̄ー ̄)

そうそう、ダンサーとか歌手の人とかは、顔だけ汗をかかないっていいますよね。
特殊な訓練でもしてるのかなぁ。そのコツ、ぜひ教えていただきたいです。

コメントが消えてしまったのですか? それはショック!(>o<")
わたしもiPhoneからコメントを書き込むのはとてもやりづらいです。
あらためてのコメント、誠にありがとうございました~<(_ _)>
by チヨロギ (2010-08-01 09:57) 

チヨロギ

◇yukkyさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-08-01 09:58) 

チヨロギ

◇amaneさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-08-01 09:59) 

チヨロギ

◇柴犬陸さん◇
蜷川さんの演出はいつもわかりやすいですねー。
今回の題材は悪魔とか救済とか、日本人には少々とっつきにくいところを、
劇中劇という形式でうまく処理してくれたなぁと思いました。
わたしも最初はシェイクスピアっぽい芝居を想像していたんですけど、
いい意味で見事に裏切られました。
勝村政信はハプニングをアドリブで切り抜ける場面もあって、大活躍でしたよ!
それにしてもこの公演チラシ、いかにも怪しすぎる~(笑)
by チヨロギ (2010-08-01 09:59) 

チヨロギ

◇向日葵さん◇
野村萬斎は狂言役者だからか、悲劇にはあまり向いていないような気もするんですが、
今回は逆にそれがよかったのかもしれません。
NHKのカメラが入っていたようですから、ご興味がありましたらTVでぜひ☆
by チヨロギ (2010-08-01 10:00) 

たかち

イリュージョン?!!
面白そーーー(^▽^)
メッセージが伝わらなくても、楽しければOK!(笑)
by たかち (2010-08-01 20:30) 

Morimo

Twitterだけではなく、ブログもきちんと更新されているチヨロギ さんすごいです!
by Morimo (2010-08-01 23:20) 

チヨロギ

◇janviermさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-08-03 01:15) 

チヨロギ

◇たかちさん◇
おもしろかったですよ~ヽ(^◇^*)/
地獄のことはよくわからないけど、楽しければ堕ちてもいいよね?!(笑)
by チヨロギ (2010-08-03 01:15) 

チヨロギ

◇Morimoさん◇
いやいや、ブログはついサボりがちです~。
iPhoneばかりいじってると、PCを立ち上げるのが億劫になってしまって・・・( ̄ー ̄;
by チヨロギ (2010-08-03 01:15) 

チヨロギ

◇galapagosさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-08-03 01:17) 

Yuseum

あっ、萬斎さんだ(o゜▽゜)
面白そうなお芝居ですねo(^o^)o
by Yuseum (2010-08-03 21:12) 

チヨロギ

◇Yuseumさん◇
萬斎さん、近くで見たらお肌がきれいでした♪
サーカス小屋に来たかと思うほど、にぎやか面白い舞台でしたよ~( *´艸`)
by チヨロギ (2010-08-04 00:13) 

チヨロギ

◇yutakamiさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-08-04 00:13) 

チヨロギ

◇PENGUINGさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-08-06 00:26) 

チヨロギ

◇AKIさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-08-06 00:26) 

ゆううこ

>ガラス張りの楽屋は光を落とすと鏡に変わり...
最近の舞台美術って空間が上手く使われてるんですねぇ。
6月にBSで観たブロードウェイミュージカル「ジキルとハイド」の
舞台空間の技のすごさに驚きまくり!
(普段、舞台を観ることが無かったので進化の過程が解ってないw)
by ゆううこ (2010-08-07 11:27) 

チヨロギ

◇マンチ軍団さん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-08-08 23:36) 

チヨロギ

◇ゆううこさん◇
そうですね、舞台美術に感動する作品も多いです。
大がかりな装置であっと言わせるものとか、映像と融合させたものとか。
逆にほとんど何も使わないシンプルな舞台も、想像が膨らんで刺激的です。
結局、演出次第なんですけどね。(^.^)
by チヨロギ (2010-08-08 23:37) 

チヨロギ

◇ごんちゃんさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-08-09 15:02) 

チヨロギ

◇柴壱さん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-08-30 00:36) 

チヨロギ

◇sonet会員さん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-09-06 01:54) 

チヨロギ

◇Kimballさん、nice!ありがとうございます。
by チヨロギ (2010-09-07 01:52) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。