SSブログ

遠くの富士山 [そぞろ歩き]

冬が近づいて空気が澄んできたせいか、最近は窓から富士山の見える日が増えてきた。
100km以上は離れているはずだけど(たぶん)、西南方向に向いた窓からは、天気のいい朝だとうっすら雪をかぶった富士山が、夕暮れ時は連山を従えた真っ黒いシルエットの富士山がよく見える。
それはもう、とにかく美しい。最近はその手前に高層マンションやアンテナがポコポコ立って邪魔しようとしているけど、まだなんとかだいじょうぶだ。

ところで、10年近く前、何度か富士登山に挑戦したことがある。
悪天候にたたられ、1度目は5合目で試合放棄。2度目は9合目まで到達しながら、強風で無念の敗退である。

頂上を踏むことができたのは、まさに3度目の正直。
ご来光をめざして真夜中に9合目の山小屋を出発し、果てしなく大渋滞の登山道をのろのろと登っていく。
夜明け前にひとまず登頂。真夏なのに長袖シャツやフリース、レインスーツなどを重ね着して、それでもガタガタ震えながら夜明けを待つ。

そしていよいよ、雲海を赤く染めて、太陽がゆっくりとのぼりはじめる。

みんな大歓声だ。そこらじゅうの人たちが全員、仲間同士になった瞬間。

絶妙のタイミングで休憩をはさみ、体力の弱った人をかばいながら、ツアーのみんなを無事登頂させてくれたベテラン登山ガイドさん。急な苦しい上り坂を、歌をうたって励ましてくれた看護学校の女子学生さんたち。2度と会うこともないだろう彼らだけど、この人たちと一緒に登れてよかったと心底思えた。


さて、ここまでの3回は旅行会社主催のツアーで、河口湖口から登ってきた。おそらく関東出発の富士登山ツアーの多くはこっちから登るので、オンシーズンの山小屋はどこもぎゅうぎゅうのすし詰めである。
なもんだから、仮眠をとる時は上下互い違いになって寝る。つまり、自分の頭の両脇に他人様の足がある。これはかなりつらい状況だ。
しかも、布団は湿気を含んで鉛のように重い。寝返りなんて打てたもんじゃないのだ。

そんなわけで、今度は静岡県の三島のほうから自力で登ってみようということになった。ご来光はあきらめ、その代わり山頂の郵便局や測候所をゆっくり見て、「お鉢巡り」を半周だけする計画だ。

山の南側は北側と違ってとても暖かく、ツアー客もあまりいなくて、マイペースで登れる。この日は親子三代の家族連れや、えらく軽装なヨーロッパ系外国人をずいぶん見かけた。
今度は山小屋でも、ちゃんと頭を並べて寝られる。特にご来光狙いの登山客が夜中に出発したあとはガラガラになるので、手足を伸ばして熟睡した。まあ、基本的にどこでも寝られる体質なんだけど。

↑山頂の郵便局で売っていた登山証明書。登山客にはけっこう人気らしい。

この年は偶然、「SMAP×SMAP」の罰ゲームも富士登山だった。
睡眠時間も準備も充分ではないだろうに、番組企画で登れちゃうのは若さだろうなぁ。
よく宇宙飛行士の人が宇宙から地球を眺めて人生観が変わったとか言うけど、富士登山も価値観ぐらいは変わるかもしれない。そのぐらいのインパクトはある。
罰ゲームの2人、中居くんと草なぎくんも、最初は2人きりでいることが居心地悪そうだったのに、登るにつれて次第に愛が芽生えていたような気がする(笑)。富士山の力はすごいね。


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。