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7 Days Judgement―死神の精度@シアタートラム [theatre]

ひさびさの芝居見物であります。
三軒茶屋のシアタートラムで、「7 Days Judgement―死神の精度」を観てきました。

[data]
石井光三オフィスプロデュース『7 Days Judgement―死神の精度』
原作:伊坂幸太郎(文春文庫刊)
脚本・演出:和田憲明
出演:香川照之、中川晃教、鈴木省吾、ラサール石井
公演期間:2009年08月21日(金)~2009年08月31日(月)
上演時間:約2時間10分(休憩なし)



公演ポスター


最初はスルーしていたんですが、香川照之の舞台を急に観てみたくなって、チケットをとりました。
彼が演じる主人公は「千葉」と名乗る死神。
予定された人間の死が妥当かどうかを7日間調査するのが仕事です。
妥当なら判定は「可」、そうでなければ「見送り」・・・といっても、ほとんどが「可」だそうですけど。

今回の調査対象となる、昔気質のヤクザ・藤田を演じるのはラサール石井で、
その藤田の任侠ぶりに心酔する若いチンピラ・阿久津が中川晃教。
もうひとりの出演者・鈴木省吾は、千葉の死神仲間です。
藤田は敵対する組の者に兄貴分を殺され、敵討ちの機会を狙っている。
いっぽう藤田と阿久津の間には、阿久津の両親の死をめぐる謎があり――というお話。

伊坂幸太郎による原作も読んでいないし、金城武が主演した映画も観ていないのですが。
ひじょうにわかりやすく、口当たりのいい作品だなーという印象。
予定調和的なストーリーが、正直言って物足りないかなぁ。
ただ舞台としては、笑いとシリアスのバランスがちょうどいい感じで、なかなか楽しい。
トラムという小劇場の空間にもジャストフィットな気がしました。

死神たちはみんな、人間界で「ミュージック」を聴くのが何よりも大好き。
ローリング・ストーンズの「ブラウン・シュガー」にとろけそうな表情で聴き入る香川さん、かわいすぎですw
ラサールは最初こそヤクザに見えなかったけど、藤田の知的な面や父性みたいなものを感じさせて、
なかなかの貫禄でした。
鈴木省吾さんの死神は飄々としていて、じつはいいヤツです。死神なのに。
中川くんは、ビビったりキレたり落ち込んだり、なんとも頼りないチンピラを好演。
声が妙に細くて子どもっぽいのも、まあ役柄には合ってるし。

後味爽やかなエンディングのあと、カーテンコールが何度か。
ここからがおもしろかった。出演者が4人並んで、舞台あいさつを始めたんです。(あいさつしたのは3人)
まずラサール石井が座長らしくひと言。
(和田)憲明さんの舞台は、いや~な感じで終わるものが多いので、今日はこんなに拍手をもらえてうれしい。
これも中川効果でしょう、と。(彼がそんなに人気あるなんて知らなかったなぁ)
続いてその中川くん。
「ようこそおいでくださいました。この作品で、阿久津という男を演じています」
これには会場が爆笑。いままで2時間観てきたんだもの、みんなわかってますって(>▽<;;
ラサール「中川くんのあいさつは、半分は情報ですから」(笑)
そのあと、自分と「真逆」な今回の役との向き合い方、みたいな話をまじめに語る中川くん。好感がもてます。
最後は香川さん。
稽古場は毎日つらくて真っ暗(な気分)だった。公演半ばにきて、やっと息ができるようになった気がする。
そんな苦労話をして、温かい拍手への感謝を述べたあと、死神らしく観客をJudgeしてくれました。

「みなさん、『見送り』です!」





平日のマチネだったので、三茶のご近所在住ブロガー・流星☆彡さんをお誘いして、
喫茶店で待ち合わせをしました。
初対面にもかかわらず話がはずみ、アイスカフェオレ一杯でねばりました2時間半( ̄ー ̄;
書店で売り切れ続出という貴重な本、「私服だらけの中居正広増刊号~輝いて~」もじっくり見せていただきました。
タイトルどおり、SMAPの中居くんの私服写真がいっぱい掲載されているんですが、
何ページおきかに入ってる自筆イラストがもう、わけのわからない傑作ぞろい(笑)
そのむかし、「三波伸介の凸凹大学校」(東京12チャンネル)という番組で、
ずうとるびの江藤博利が描いてみせた迷イラストを思い出しましたよ。
・・・って、わかる人いるかなぁ(汗)

流星☆彡さん、楽しい時間をありがとうございました(^.^)




出会いの記念に、SoftBankの「のりかえ顔メーカー」で似顔絵を描いてみました。
左がワタクシ、右が流星☆彡さんだそうですが・・・。えーと、ノーコメントということで(>▽<;;

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薪能「百萬」@相川春日神社 [theatre]

金山の町・相川で薪能を見ることになったのは、まったくの偶然でした。

家族が佐渡に行きたいと言うので、旅行社から佐渡のパンフレットをかき集めてきたら、
その一枚に小さくこんな文字が。

  ●おすすめの相川イベント:春日神社薪能……6/20(土)

ちょうど20日から佐渡に2泊する予定を立てていたのです。
これはもう、「相川に行け」という天の声にちがいない。そうに決まってます。(←強引)
そんなわけで、旅行を申し込んでからすぐに薪能の事務局に電話して、チケットを予約したのでした。



15世紀に世阿弥が配流されたことや、17世紀に初代佐渡奉行が能楽を奨励したこともあって、
佐渡では庶民の生活の中に能が浸透しているのだそうです。
6万5千人の人口に対して、能楽堂が30以上。
実際、島内を車で移動する途中、いくつも能楽堂を見かけました。

宝生流の能を習っている伯母に聞いた話では、佐渡の人は素人とは思えないほど巧いんだそうで。
といっても、ろくに能を知らないわたしには、上手下手が判断できないんですけど( ̄ー ̄;

この日訪れた相川の春日神社は、佐渡の能の発祥の地。
だんだん衰退して能舞台もなくなっていたのを、地域の人たちの熱意により、
民間の助成金と「瓦1枚運動」の寄付金を得て2006年に再建にこぎつけたとのこと。
そのせいかスタッフの人たちも、集まるお客さんたちも、どこかアットホームな雰囲気でした。

演目は第一部が佐渡の郷土芸能いろいろ、そして第二部が薪能「百萬」。
吉野の男が途中で拾った幼子を連れて嵯峨の寺を訪れると、百萬という狂女が現われます。
生き別れたわが子を捜し求め、神仏に舞を捧げる百萬。
幼子は彼女が自分の母であると気づき、それを聞いた男が二人を引き合わせると、
百萬は正気に戻って喜び、親子連れ立って奈良の都へ帰っていく・・・というお話です。




会場入り口では、音声ガイドを無料で貸し出してくれます。内容は今日の演目「百萬」の解説。



舞台の前は芝生になっていて、前方にゴザ席、その後ろに椅子席があります。


日がとっぷりと暮れるころ、開演。


第一部は相川音頭とか佐渡おけさとか、郷土芸能の部。


海謡会(観世流)による仕舞「松風」と、なんともユーモラスな神事芸能「つぶろさし」。


第二部は羽茂・昭諷会(宝生流)による能「百萬」。幼子の役は、子どもが演じています。
声も滑舌もいいし、かわいかったなぁ。


シテ、百萬登場。能面をつけていても、言葉がはっきり聞きとれるのはさすがです。

かがり火が闇を照らし、ときおり薪がはぜる音を聞きながらの約1時間半。
幽玄の世界をたっぷり堪能しました。


春日神社能舞台・公式サイトはこちら。→http://kasugajinja.com/


春日神社



タグ:佐渡 相川
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流れ去るものはやがてなつかしき [theatre]

世田谷の住宅街を突っ切って走る2両編成の路面電車、東急世田谷線。
中学1年のときに一度だけ、担任の先生の家に遊びに行くのでクラスメートたちと乗ったことがあって、
フツーの家の庭先を行くおもちゃみたいな電車にびっくりしたものです。

ひさしぶりに見た世田谷線は、相変わらずおもちゃみたいでした[電車]




世田谷線の始発駅・三軒茶屋駅のすぐ横には、小劇場シアタートラムがあります(トラム=路面電車のこと)。
先月、ここで『楽屋~流れ去るものはやがてなつかしき~』というお芝居を観てきました。
作は『雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた』と同じ、清水邦夫。
でもいちばんのお目当ては、小泉今日子・蒼井優・村岡希美・渡辺えりという豪華キャストでございますv


劇場入り口と、プログラム表紙


舞台の上は、チェーホフの「かもめ」を上演する劇場の楽屋という設定。
一心に化粧をしながら出番を待ちつづける女優A・Bと、この日「かもめ」で主役ニーナを演じるベテラン女優C、
そして彼女のプロンプターを務めていた若い女優Dの身に起こる、一夜の出来事が描かれます。

役がもらえない鬱屈や、報われない努力や、女優たちのさまざまな想いがぶつかりあう舞台。
でも演出が生瀬勝久のせいか(?)、コミカルな動きや台詞に笑ってしまう場面もしばしば。
女優たちがいろんな劇中劇を演じるのも楽しくて、なかでも渡辺えり扮する「斬られの仙太」は、
独特の台詞回しがきりっとしてカッコよかったです。時代劇、それも男役なんですけどねw
キョンキョンも控えめな存在感がよかったけど、何より驚いたのは蒼井優の迫力。
彼女が演じる女優Dは自己チューで精神不安定で、でも女優スイッチが入るとすごいオーラを放つんです。

3人の女優が楽屋でチェーホフの「三人姉妹」を演じるラストシーンには、ほろり。
女優としての業の深さ、それと裏腹にある孤独、演じる(生きる)ことへの渇望。
約80分と短いなかに、女優を生業とする人びとの、そしてキャスト4人の魅力がたっぷり詰まっていました。
それにしても、清水邦夫の女優への視線って、あったかいな。


◆◆◆◆


同じ週の週末は、学生時代の友人たちと1年ぶりの再会。
友人Aの「学校に行ってみない?」という提案に乗っかって、なんと校舎前のベンチで待ち合わせをしました。
5人そろってキャンパスを歩くなんて、卒業式以来ですよ~。って、何年ぶり?( ̄∇ ̄;)
見慣れない新校舎がそびえ立っているのにはびっくりしたけれど、
昔とちっとも変わらない風景もあって、懐かしいというか、ほっとするというか。

当たり前ですけど、記憶しているポイントがそれぞれ違うのがおもしろかった。
「薬師丸ひろ子が映画のロケに来たんだよね」
と思い出したのは、友人B。
おお、すっかり忘れてた。
ロケ現場は見られなかったけど、同じころに地下鉄千代田線の中で、偶然彼女を見かけたんです。
小柄だけど目が印象的で、すごくかわいかったー。

私がしっかり憶えてるのは、学食のお気に入りメニュー( ̄ー ̄)♪
日替わりの和定食(330円)というのがあって、われわれビンボー学生にはリッチなお値段でしたが、
水曜日の「すき焼き丼」(どんぶりじゃないんだけど)が兆おいしかったんですよーv
あと、ボリューミィなカツ丼もよく食べたっけ。いつの時代も若者は腹が空くのです。
ひさびさに食堂の中をのぞいてみたかったけど、貸切で入れませんでした。残念。

すっかりおのぼりさん気分の私たち。校舎をバックに写真を撮りたくなって、
たまたま通りかかった男性にシャッターをお願いしました。
さっきの学食で卒業50周年のパーティがあったんだそうで、つまりはずーっと上の先輩です。
明るくて茶目っ気のある、すてきな方でした。先輩、どうぞお元気で。

そんななか、友人Cがトンデモない発言を。

  C 「私たち、学生に見えないかなあ♪」
  残り全員 「見えないって、絶対」(爆笑)
  C 「えーっ? そうかなあ。下むいてもダメ? 顔隠しても?」
  友人D 「あのねぇ、若さのオーラがないから!」

どうがんばっても、学校の下見に来た父兄にしか見えないと思うよ(笑)

その後、行きつけだった居酒屋がまだ営業しているのを見つけ、ちょっと一杯のつもりで延々5時間近く。
昔もよく注文したBFFT、しょっぱく感じるのはトシのせいでしょうか。うーむ。
最後に会計してみたら、あまりの安さにびっくり。
だから行きつけだったのか...(>▽<;;



やっぱり見えないなー、学生には(笑)

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北千住の「ひとり」と渋谷の「三十人」を観る:「三十人」篇 [theatre]

承前。

「ひとり」篇の翌週は、清水邦夫×蜷川幸雄作品、「雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた」を観てきました。



空襲で散り散りになった幻の少女歌劇団を題材にしているというので、
なんとなく宝塚チックな世界を想像していたのですが。
おなかにズンズン響くハードロックが流れるなか、電飾キラキラの大階段をおりてきたのは、
白いタキシード姿の化粧したおじさんたち(古谷一行・石井愃一・磯部勉・山本龍二&横田栄司)。
そーいう趣味の人たちかと思ったらそうではなく(笑)、かつて歌劇団の熱狂的ファンだったという、
「バラ戦士の会」の面々なのでした。
歌劇団の元娘役トップ、風吹景子(三田和代)の頭の中は、空襲のショックで時間が止まっている。
そんな彼女の妄想につきあって、バラ戦士たちは夜な夜な「ロミオとジュリエット」の稽古に励むのです。

このあと、再集結を呼びかける新聞広告に応じて、元団員たちが続々と集まってきます。
すでに若くはない彼女たちが再会をよろこび、私服のままダンスを踊りだすシーンは感動的。
ニナ・ハーゲンのパンクロックを熱唱する元歌姫役の毬谷友子なんて、もうカッコよすぎです☆

狂気と正気、少女と老婆の境を危うげに行き来する、三田和代の迫真の演技。
そして彼女が待ち焦がれる、男役トップ・弥生俊=鳳蘭は、頭のてっぺんからつま先まで「スター」そのもの。
ついに再会した二人が演じる最高の「ロミオとジュリエット」は、しかし衝撃的な結末を迎えて・・・。

横たわる美しいロミオとジュリエットが象徴するものは、無垢な青春、過去の栄光、それとも届かない夢?
ラスト、何かにとりつかれたように踊る「三十人のジュリエット」たちに、
青春の屍を踏み越えて「いま」を生きてゆけというメッセージを見た気がしました。

感動の余韻をかみしめる間もなく、カーテンコールで流れてきた「デイ・ドリーム・ビリーバー」(ザ・タイマーズ)。
これには思わず涙が・・・(┯_┯)
芝居とリンクするような歌詞と忌野清志郎のやわらかな歌声が、胸に沁みてたまりませんでした。



公演プログラムより

[data]
作:清水邦夫
演出:蜷川幸雄
出演:鳳蘭、三田和代、真琴つばさ、中川安奈、毬谷友子、石井愃一、磯部勉、山本龍二、横田栄司、
 ウエンツ瑛士、古谷一行、他
公演日程:2009年5月6日(水)~30日(土) Bunkamuraシアターコクーン
上演時間:1幕1時間20分、休憩20分、2幕1時間15分

◆◆◆◆

[おまけYouTube]

歌姫・毬谷友子さんが歌ってたニナ・ハーゲンの「Naturträne」(←読み方がわかりません)。



まさかこんな化粧はしてませんでしたが(>▽<;;
毬谷さんの4オクターブの歌唱力を堪能しましたv

*「ひとり」篇は、こちら

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北千住の「ひとり」と渋谷の「三十人」を観る:「ひとり」篇 [theatre]

1週間の間隔をおいて、対照的な2作品を観劇。
楠美津香ひとりシェイクスピア「超訳コリオレーナス」を北千住の労音東部センターで、
雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた」をBunkamuraのシアターコクーンで観てきました。

まずは「超訳コリオレーナス」から。
3月に「超訳リチャード三世」を観てすっごいおもしろかったので、二度目の「ひとりシェイクスピア」です。
(「超訳リチャード三世」の観劇記事は、こちら。)
沙翁に惚れこんだひとりコント芸人・楠美津香が、全37作をひとりで上演してしまおうというこのシリーズ。
2000年にスタートして、今度のコリオレーナスが30作目になります。

「超訳リチャード三世」は何度目かの再演だったし、もともとよく知っているストーリーでしたが、
今回はまったく未知の領域です。
というのも、ワタクシ「コリオレイナス」がどんな話だかまったく知りません。
以前、唐沢寿明の主演舞台をせっかくテレビで放送していたのに、途中から爆睡してましたから・・・。
しかも今回の超訳は新作だし。

そんな不安は、楠センセイによる冒頭の黒板授業で吹っ飛びました。
「コリオレーナス」とは、名誉のためなら戦場に息子を喜んで送り出すというトンデモ母親と、
ママにほめられたい一心で戦争でも何でもやっちゃうマザコン息子の物語なんだそうで。知らなかった(笑)

主人公コリオレーナス、何しろ口が悪い。のっけから民衆を罵倒し、反感を買っています。
そのせいで、戦争で英雄的働きをして執政官になれそうなところを、支持を得られず失脚。
市民が彼を嫌った最大の理由というのが、彼が慣習に逆らい、大衆に媚を売る態度をとらなかったから。
政治家の実績や能力を見ずに、甘い言葉やおいしいキャッチフレーズを好む愚かな市民・・・って、
ハテどこかで聞いたことがあるような。

ほかに登場するのはヒップホップMCな護民官ブラザーズとか、東北訛りのキツイ親友の淳三郎とか、
いつもコンニャクをちぎりながらしゃべる妻とか、相変わらずキャラ設定がとってもヘン( ̄ー ̄;
ジェロの「海雪」をBGMにしての戦闘シーンは、ひとり女剣劇という感じ(違うか?)。
それでもやっぱり、世界観はまぎれもなくシェイクスピア。
楠さん、今回もオトコマエでしたよ。

◆◆◆◆

[おみやげ]


左:もらったチラシの中に、ダンナさんのモロ師岡氏のチラシも入ってました。
右:「無敵の電磁波を送る太陽をデザイン」したクリアファイルと、超訳薔薇戦争てぬぐい。


こんなてぬぐいをつくる楠さんも楠さんだけど、それを買ってる私っていったい・・・(笑)
よろしければ、クリックで拡大してご覧くださいw

「三十人」篇につづきます。


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ナイロン100℃「神様とその他の変種」@本多劇場 [theatre]

この芝居のタイトルになっている「神様とその他の変種」(Gods and Freaks)とは、
もともとケラ&ザ・シンセサイザーズが2007年にリリースしたアルバム、「15 ELEPHANTS」の1曲でした。


フィフティーン・エレファンツ

フィフティーン・エレファンツ

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: インディーズ・メーカー
  • 発売日: 2007/03/28
  • メディア: CD
解説によると、象をモチーフにした15曲が収録されているそうな。(Amazonで試聴できます)

余談ですが、それより17年前の1990年。
ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)プロデュースによる「ヤマアラシとその他の変種」が発売されてます。
斎木しげるやら温水洋一やら巻上公一やら、やけに豪華メンバーが参加してのオムニバス盤。
コントあり歌ありの、くだらなくも楽しい一枚となっています( ̄ー ̄)


ヤマアラシとその他の変種

ヤマアラシとその他の変種

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ブリッジ
  • 発売日: 2007/11/23
  • メディア: CD
※これは2007年に再発売されたもの。

さらにもうひとつ余談。
一風変わったこのアルバムタイトルは、同じく90年発売の『レイモンド・カーヴァーの子供たち』という
アンソロジーに収められた、エミリー・リストフィールドという作家の短編のタイトルでもあります。


レイモンド・カーヴァーの子供たち

レイモンド・カーヴァーの子供たち

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1990/04
  • メディア: 単行本

この短編集にカーヴァー自身の作品は入っていないけれど、
当時のKERAがカーヴァーの作品にも親しんでいたことは間違いない・・・はず。
(その理由は、柴犬陸さんのこちらの記事に)
カーヴァーといえば、日常の中の孤独や悲しみ、ささやかな救いを描く短編の名手。
では、今回KERAが描いた作品は?



パンフレット表紙より

[data]
NYLON100℃ 33rd SESSION「神様とその他の変種」
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:犬山イヌコ、みのすけ、峯村リエ、大倉孝二、廣川三憲、長田奈麻、藤田秀世、植木夏十
 水野美紀、山内圭哉、山崎一
東京公演日程:2009年4月17日~5月17日(下北沢・本多劇場)
上演時間:1部1時間20分、休憩10分、2部1時間30分



物語は、小学生のサトウケンタロウ(みのすけ)と、その両親(峯村リエ、山内圭哉)と祖母(植木夏十)が住む、
3階建ての古びた洋館が舞台。
家庭教師として雇われた女(水野美紀)は記憶喪失で、憶えているのは自分がかつて小学校の教師だったということだけ。
学校でいじめを受け、不登校になっているケンタロウの話し相手は、家の目の前にある動物園の動物たち。
そこに動物園の飼育係のユウチャン(大倉孝二)や、ケンタロウの担任教師(藤田秀世)、
わが子がケンタロウに殴られたといって話し合いに来たスズキサチオの両親(犬山イヌコ、山崎一)、
おしゃべり好きな隣家の主婦(長田奈麻)らが次々とやってきます。
ところが、ケンタロウの母親との話はまったくかみ合わないばかりか、なぜか訪問者が次々と行方不明になっていき――。

という、ちょっとサスペンスタッチの話なんですが、後半は思わぬ方向に話が展開します。
どこかバランスを崩した登場人物一人ひとりの想いがじわじわと伝わってきて・・・。
なんていい脚本を書くのでしょう、KERAという人は(´;ェ;`)(涙)

わが子を守りたい一心で暴走していく母親と、あまりにも不器用なやり方で彼女を守ろうとする夫。
峯村リエと山内圭哉の夫婦が、キャラクターも演技もすごくよかった。
前半と後半で状況ががらりと変わってしまう、犬山イヌコと山崎一のスズキサチオ両親。
幸せな親であるということを唯一の支えにしてきた二人の、途方に暮れる姿を見ると、
人間はなんともろくて不完全な生き物なのだろうと、切なくなります。
それは水野美紀演じる家庭教師も同じこと。

といっても、重くて暗い話なわけじゃないんです。
登場するたびに浮きまくるさぶい「神様」(廣川三憲)も出てくるし(笑)
ナンセンスコントみたいな笑えるシーンを随所にはさみつつ、人間存在の危うさをあぶりだしていく、
その緩急のつけ方が抜群。
音楽の使い方もカッコいいなぁ、好きだなぁと思ったら、音楽が「どん底」と同じ朝比奈尚行でした。なるほどね。
(「どん底」の観劇記事は、こちら。彼は俳優・あさひ7オユキとして出演もしています)

別役実の不条理劇の文体をマネしてみたい、とKERAはパンフレットで語っていて、
どうやらカーヴァーの小説とのつながりはなかった模様( ̄ー ̄;
ただ、不条理劇という印象でもなく、そんなジャンル分け自体からはみ出している気もします。

カーテンコールは3回、ほんとはもっと拍手したかったけど、
演出上の理由で役者さんたちが風邪引きそうな状況だったので、あきらめました。
3時間の長さをまったく感じさせない舞台。もうしばらく観ていたかったな。

◆◆◆◆

ところで、劇場に行くとかならず配られるのが、大量の演劇チラシ。
この日も、約80ページにおよぶ大判パンフレット(2000円)との相乗効果で腰にきそうなくらい(苦笑)、
たっぷり受けとりました。
東京を拠点にする劇団の数の多さにも驚くし、もっとびっくりなのがチラシの紙質のよさ。
いったいいくらかかるんだろう・・・なんていうのは余計なお世話ですが。

最近読んだKERAの『映画嫌い』という本の中に、チラシの話が出てきます。
彼が監督した映画「罪とか罰とか」の宣伝チラシはメインが10万枚、マニア向け(「黒リコ」というらしい)が2万枚、
合計12万枚刷ったそうですが、その少なさに監督びっくり(/・ω・)/
ナイロンのチラシなんか、いつも十五万枚とか二十万枚とか刷ってるのに。チラシを十二万枚しか刷らないのに全国動員目標十五万人っていうのもよくわからない(笑)。演劇の場合は最低でも動員の十倍ぐらいはチラシ刷るからなあ。(『映画嫌い』183ページ)

演劇の場合はチラシの宣伝効果が大きいと思うし、観客にとっても大事な情報源だけれど、
映画はテレビとかネットとかで情報仕入れることが多いわけで。
とはいえ、動員目標人数よりチラシの枚数が少ないって、やっぱり不思議。


映画嫌い

映画嫌い

  • 作者: ケラリーノ・サンドロヴィッチ
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2009/03/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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シュート・ザ・クロウ@新国立劇場小劇場 [theatre]

4月17日付の朝日新聞夕刊に出た劇評の見出しは、「リアルで切ない喜劇」。
何か月も前に初めてチラシを見たときから、ずっと気になっていた作品でした。
劇評を読んだらやっぱり行きたくなって、ネットでチェックしてみたら、あっさりチケット入手。
というわけで、「シュート・ザ・クロウ」の千秋楽を観に、新国立劇場の小劇場[THE PIT]へ行ってきました。

[data]
シリーズ・同時代【海外編】vol.2 「シュート・ザ・クロウ
作:オーウェン・マカファーティー
訳:浦辺千鶴、小田島恒志
演出:田村孝裕
キャスト:
 ソクラテス(39歳)‥板尾創路
 ランドルフ(19歳)‥柄本佑
 ピッツィ(36歳)‥阿南健治
 ディン・ディン(65歳)‥平田満
公演日程:2009年4月10日(金)~26日(日)
上演時間:約1時間40分(休憩なし)

※公演写真は、こちら

■あらすじ
北アイルランド、ベルファストの建築現場で働く4人のタイル貼り職人の1日。今日を最後に仕事をやめるディンディンは、大量のタイルを盗み、売りとばすことをランドルフに提案する。が、同じころ別室のソクラテスとピッツィもタイルを盗む計画を立てていた……。(「シュート・ザ・クロウ」チラシより)




思ったより早く着いてしまったので、ほぼ開場直後に劇場の中へ。
ステージには建築現場のセットが組んであって、向かって右にひと部屋、左にも階段を上ってひと部屋。
中央には下り階段があり、外部(=セットの屋上)につながっているようです。
この何層にもなった舞台装置を、4人の男たちが行き来している。
なんと開演30分前から芝居は・・・っていうか、タイル貼りは始まっていたのでした。

彼らはむき出しのコンクリートの壁に、実際にタイルを貼っていくんですけど、
右の部屋の板尾創路と阿南健治の手際のいいことったら。
千秋楽ですからね、すでに年季が入ってます。
いっぽう、左の部屋の平田満と柄本佑は、いかにもていねいな仕事っぷり。

紛争の歴史をたくましく生き抜いてきた北アイルランド人の気質なのか、
この作品ではタイル貼り職人たちの貧しく悲惨な状況が、ユーモアたっぷりに描かれています。
再就職の資金がほしいディン・ディン(+ランドルフ)組と、娘の留学資金がほしいピッツィ(+ソクラテス)組。
タイル泥棒計画をめぐって2チームが駆け引きをするなかで、
4人のああ言えばこう言う、テンポのいい掛け合いが痛快です。

たとえば「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」での演技(?)しか見たことがなかった板尾創路。
人生について哲学する男の役ですが、ちょっと浮いてる感じ(笑)が不思議な味わいをかもし出してます。
バイク好きの無邪気な若者を演じる柄本佑も、口調や動作に舞台くささがないところがとてもリアル。

暴露と大ゲンカと和解を経て、うまくいきそうだった彼らの計画は、やがて失意の結末を迎えます。
いつまでもかなわない夢、終わらない仕事。
のしかかる厳しい現実に、彼らは向き合っていくしかないのです。

ピッツィ「オレたちは食べていかなきゃならねぇんだ」
ソクラテス「人生には仕事よりも大切なことがある」

「仕事」って、なんだろう・・・などと、柄にもなく考えてみたりして。


◆◆◆◆


タイル職人のお話ということで、劇場のロビーでは小ぢんまりと「ヨーロッパのタイル」展が開かれていました。




素朴な味わいのあるスペインのタイル。


デルフト・ブルーが美しいオランダのタイル。



1枚1枚が紋章のようなイギリスのタイル。


こういうタイルが似合う家に住んでみたいものです・・・。




[追記]
「ヨーロッパのタイル」展にタイルを展示しているのは、INAXの「世界のタイル博物館」。
公式サイトのアドレスは、こちらです。→ http://www.inax.co.jp/museum/


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ムサシ@彩の国さいたま芸術劇場大ホール [theatre]

上演期間が長いから、まだいいやと後まわしにしていたら、観劇から3週間以上経ってしまいました。
いかん、忘れてきてる・・・・・Σ( ̄⊥ ̄lll)・・・・・

藤原竜也と小栗旬の共演で話題のこまつ座「ムサシ」、3月に観てきたんです。

楽しかったですよ~♪
歴史劇で、コメディで、ファンタジーで、青春劇。
吉川英治の『宮本武蔵』を読んでない人(わたしのことです)でも、物語にすっと入り込める間口の広さ。
井上ひさしって、すごいや。

[data]
作:井上ひさし (吉川英治『宮本武蔵』より)
演出:蜷川幸雄
音楽:宮川彬良
出演:藤原竜也、小栗旬、鈴木杏、辻萬長、吉田鋼太郎、白石加代子、大石継太、ほか
公演日程:2009年3月4日~2009年4月19日
上演時間:第1部1時間45分、休憩15分、第2部1時間35分



公演パンフレットより



物語は、宮本武蔵(藤原竜也)と佐々木小次郎(小栗旬)の決闘の後日談という設定になっています。
小次郎がじつは生きていて、鎌倉の禅寺にいる武蔵をついに探し当て、ふたたび決闘することに。

寺には沢庵和尚(辻萬長)と僧侶の平心(大石継太)、徳川家の兵法指南役・柳生宗矩(吉田鋼太郎)、
それに大檀那の木屋まい(白石加代子)と筆屋乙女(鈴木杏)も集まり、
ちょうど寺開きの参籠(=寺に泊り込んで祈願する修行)が始まろうとしています。
参籠が明ける3日後が決闘の日。
その間、なんとかふたりの決闘をやめさせようと、5人が奇想天外な手を使ってくるわけです。

たとえば、沢庵和尚や柳生宗矩が発案する摩訶不思議な修行。
たがいの足を縛って五人六脚を始めたり、剣術の稽古をしているはずが全員でタンゴを踊っていたり。
ベタなコントだな~と思いつつ、笑いっぱなしです。

能楽の使い方もうまい。
舞台となっている禅寺の造りがまるで能舞台なんですが、柳生宗矩が無類の能好きで、
ちょっと油断するとすぐ能を舞いだしてしまう、それが滑稽そのもの。
もと猿楽の舞手だったという木屋まいが見せる舞狂言「蛸」も、
料理して食べられちゃったタコの幽霊が成仏を願うという、なんとも珍妙なお話。
でも、あとでわかるんですが、これにはちゃんと意味があるんです。

それから、親の仇討ちをしたいといって武蔵と小次郎に剣術を習いだした筆屋乙女が、
結局は仇を赦すことで、恨みの鎖を断ち切る尊さを説く場面。
このあたりから後半に向かって、報復は無意味だというメッセージがだんだんあからさまになっていき、
ちょっとくどいかな・・・と思いはじめたところで、筆屋乙女のセリフにはっとします。

(雷鳴がとどろくなかで)「あの音は苦手でした、私が生きていたころから」

能を多用したのは、こういうわけだったのか。
能楽堂の形をした寺は、まさに幽玄の世界だったと。
やられました。

吉田鋼太郎を筆頭にベテラン陣がしっかり笑いをとるなかで、
主役の藤原竜也と小栗旬には華があり、作品のテーマを体現するだけの存在感がありました。
こっちが照れてしまうほどにストレートな「生きろ!」というメッセージは、
まだ人間として役者として生意気盛りな彼らが演じてこそ、胸に響くものがあったと思うんです。

あと、最近の蜷川作品には欠かせない大石継太、今回も大活躍。
なのに、こまつ座のサイトにもホリプロのサイトにも名前がないのはどーいうわけなんでしょう?
ラストの平心のセリフ、彼のよく通る高音が、まだ耳に残っているというのに。


彩の国さいたま芸術劇場



大ホール入り口



今回はグッズも買ってしまいました。

これ!



鞘を抜くと・・・。



耳かきでございますw



よーく見ると、小さく「MUSASHI」の文字。
まあ、それだけのことですが(笑)


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東京サンシャインボーイズ「returns」@シアタートップス [theatre]

この3月29日で閉館した、新宿三丁目の小劇場・シアタートップス
18日から29日までは「さよならシアタートップス最後の文化祭」と題して、
ゆかりのある劇団の公演やイベントやトークショーが連日開かれていました。

シアタートップスといえば・・・と、ここで思い出話のひとつも書いてみたいところですが、
小劇場演劇の世界にまったく無知なワタクシ、劇場が開館してからの23年間、
一度も足を踏み入れたことがなかったのでした~( ̄ー ̄;

ところが、おそろしく幸運なことに、「最後の文化祭」夜の部の公演、
東京サンシャインボーイズの新作「returns」のチケットが手に入ってしまった。
人生初の、そして最後のシアタートップスです。
うれしすぎる・・・(T^T)



東京サンシャインボーイズとは、かつて三谷幸喜が主宰していた劇団の名前。
いまから15年前にこの劇場で最終公演を行ない、以後「30年間の充電期間」に入っていました。
2024年には、復活公演をシアタートップスで。
冗談か本気か、そんな話もあった経緯から、劇場の閉館を聞きつけた劇団員たちが15年ぶりに集結。
客演を含め最終公演のメンバーをそろえた、今回限りの復活公演が実現したのです。


※今回の記事は例外的にネタバレ満載となっております。おまけに長いです。読みすぎにご注意ください( ̄ー ̄)

[data]
作・演出:三谷幸喜
出演:相島一之、阿南健治、伊藤俊人、小原雅人、梶原善、甲本雅裕、
 小林隆、近藤芳正、斉藤清子、谷川清美、西田薫、西村雅彦、
 野仲イサオ、宮地雅子、吉田羊
声の出演:戸田恵子、山寺宏一
上演時間:80分


左が劇場の掲示、右が「最後の文化祭」ムック本


シアタートップスの座席は、パイプ椅子&ベンチシートで150席余り。
場所によっては一度着席したら、もう自力では脱出できない感じです。(怖
わたしのチケットは最後列で、ちょっと舞台が遠い気がするけど、まあ贅沢は言えません。
後ろの壁に寄りかかれて、すっごい楽だったしー。(負け惜しみ)

午後9時半開演の2、3分前。
まだ客電も消えないまま、舞台に白衣の女性(吉田羊)が現われました。
彼女はただ無言で、ゆっくりパイプ椅子を並べるだけ。
やがて舞台に2列12脚の椅子が並ぶと客電が落ち、下手から12人の男女が入ってきます。
・・・彼らを見て気づいたこと。
舞台が小さく見えるのは遠いから(@遠近法)だと思ってたら、ホントに舞台が小さかった(笑)
最後列でも、舞台上の役者さんと話ができそうなくらい近いんです。
いや、話しませんけどね。

集まった12人はどうやら、小学校6年生のときのクラスメートらしい。
白衣の女性に促されて自己紹介するんですが、みんなそれぞれにつらい事情がありそう。
会社をリストラされて農場で働いてる人(野仲イサオ)、上司とケンカして会社辞めた人(阿南健治)、
会社が倒産してスーパーの店長に転職したらスーパーが火事になってさらに大変な人(西村雅彦)。
離婚して旧姓に戻ってる人(宮地雅子)、パッとしないヒーロー俳優(相島一之)。
ほかに家電量販店店員(甲本雅裕)、タクシー運転手(小原雅人)、などなど。
あれっ? 脱サラ男(小林隆)の職業がどうしても思い出せない・・・(汗

で、クラス会かと思ったら、この12人以外は誰も招待されていないという。
当時の担任のシバタムラ先生(梶原善)は、招待状を出したあとに急死したとのこと。
では、なぜ彼らだけが? クラスでけっして目立たない、何のとりえもない生徒だったのに?

「地球を救えるのは、みなさんしかいないのです!
 みなさんには隠されたパワーがあるのです!!」

のけぞる12人。

先生が特殊な望遠鏡を使って、○×星から大量の宇宙船団が地球に向かってくるのを察知したこと、
彼らが地球を攻撃するまでにあと3日しか残されていないことを、
白衣の女性・ミドリ(じつは先生の娘)は一気に語ります。
バカバカしい、オレは帰る、と何人もが席を立とうとするのですが、
先生のビデオレターがあると聞いて、それを見てからにしようということに。
で、スクリーンに大写しされたお茶の水博士そっくりの先生が、
一人ひとりの隠されたパワーをカメラに向かって語ろうとしたそのとき。
ぷつん、とテープが終わっちゃうんです(笑)

今度こそ帰ろうとする面々を、相島が必死で引き止めます。
思い出してみようよ、オレたちの隠されたパワーを。
みんなで考えれば、何か思い出せるかもしれないじゃないか。
彼の熱い説得に気持ちが動き、とりあえず校歌でも歌ってみるかと、輪になって歌いだす12人。

「あっ、思い出した! 彼は物真似がすごくうまかったのよ」
獣医の女性(谷川清美)が指さした相手は、日焼けサロンオーナーのタンゲ(近藤芳正)。
物真似っていっても田中角栄に森進一だし、だいいちそれで地球が救えるのか?
・・・なんて疑問はさておき、彼女の抜群の記憶力で次々と、隠されたパワーが明らかに。
じゃんけんに一度も負けたことがない! 2分間息を止めていられる!
絶縁体質! 気功術の達人! と、とりあえず何かしらパワーが見つかった人は大喜び。

最初はみんなの様子を冷ややかに見ていた西村もあせりだし、
「頼む! オレの隠された能力を誰か思い出してくれ!」と土下座するありさま。
なんと彼はテレポーテーション能力(え?)があることがわかり、めでたしめでたし♪

故人である伊藤俊人が演じるワダは、会の直前に交通事故で亡くなったため、
妻(西田薫)が代理で出席しています。
そういえば昔、何度事故に遭ってもケガひとつしないで「不死身」な奴だったよねー、と同級生。
ということは・・・あんた、ちゃんと確認したの?
妻があわててカバンから取り出した骨壷に呼びかけてみると。
「どうもどうも~♪」
素っ頓狂に明るいワダの声が返ってきた。まさに不死身だ!(笑)

何の特殊能力も隠されていないかに見えた小林にも、
谷川が預かっているハムスターと会話する能力があることがわかり、
結局残ったのは相島ひとりでした。
寂しく去っていこうとする彼を、今度は宮地が引き止めます。
彼はいつも待っていてくれた、自分に関係ないときでも。
今日だって、帰ろうとするみんなを止めてくれたのは彼だった。
彼がいなかったら、私たちここにいなかったでしょ?

そう、それなんです。
「くじけない前向きな心」が、彼の隠された能力・・・ってことで、全員クリア!

ミドリはうれしそうに、先生が用意した「宇宙防衛隊」のキャップを配ります。
ところが、キャップが11個しかない。ひとつ足りないのはなぜ?
ここで、隠された能力が「宴会芸レベルだった」タンゲに疑いの目が向けられ、
彼が招待状を持っていないことが判明。
タンゲは日焼けサロンのオーナーではなく、警視庁公安部の刑事でした。

毎日警察に来ては、宇宙人が攻めてくると訴えた頭のおかしな老人がいた。
彼は結局、その手の病院に強制収容されたんだ。
どんな専門家に訊いたって、○×星から宇宙船団が攻めてくることは100%あり得ない。
お前たちは夢を見ていたんだよ。

父は狂ってなどいないと泣き崩れるミドリ、呆然とする11人。

誰か一緒に乗ってく? と訊く小原の声をきっかけに、一人、また一人と部屋を出て行きます。
あれがみんな夢だったなんて・・・と肩を落とす宮地に、西村が客席に目を向けてひと言。

「夢を見られただけでもよかった」

一幕の夢をこうして演じること、そしてシアタートップスへの彼らの想いの強さに、
じんわり胸が温かくなる言葉でした。

舞台が暗転。
そしてナレーション(山寺宏一)が。
「そのころ○×星では、地球に向けて1億数千万の宇宙船団が飛び立とうとしていた」

終わったかとしみじみしていたら、ここから「第二部の予告編」がスタート!
銀色のスーツに身を包んだ11人(+1人)が、それぞれのパワーを駆使しながら
宇宙人と戦っているらしい場面が次々と展開されていきます。
なぜかタンゲも出てきて、「隊長! 奴らの弱点は・・・」(バッタリ)
今度こそ、ほんとうに幕。


カーテンコールでは、西村雅彦のあいさつに笑ってしまいました。
「あと1時間ほどで日付が変わりますので、さっさとご退場ください」
そのあと、今回の発起人である相島一之に目で合図を。
彼は心からうれしそうに、「本日はありがとうございました!!」
この二人、とくに西村雅彦は舞台を初めて観たけど、いい表情をしてたなぁ。

さらなるカーテンコールでは、小林隆が締めのあいさつ。
「シアタートップスと東京サンシャインボーイズを、どうぞみなさまの心にとめておいてください」


そして、最後に場内アナウンス(戸田恵子)が。

「これより15年間の休憩に入ります」






シアタートップス




[4/5追記]
この舞台の模様は、6月14日(日)午後4時よりWOWOWで放送される予定です。
三谷幸喜「東京サンシャインボーイズ『Returns』」さよならシアタートップスStage&Document
 WOWOW 「今後の放送予定」 http://www.wowow.co.jp/program/


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楠美津香ひとりシェイクスピア「超訳リチャード三世」 [theatre]

横浜の桜木町にある、神奈川県立青少年センターというところに行ってきました。
赤レンガ倉庫やランドマークタワーのある、みなとみらい地区とは線路をはさんで反対側。
こっちを歩くのは、初めてです。

この日観る予定のお芝居は15時開演、全席自由。
開場時刻(14時半)より若干早めに会場に行くことにして、まずは近所で腹ごしらえです。
どこかいい店ないかなぁとウロウロ歩いていたら、「横濱ごはん Fu-jin」なる看板を発見。

静かで落ち着いた和風の店内は、壁いっぱいに焼酎が並んでいます。
この日(土曜日)はランチがお休みのところを、たまたま宴会の予約が入ったので店を開けていたんだとか。
日替わりメニューの「ステーキ丼」700円に、コーヒー120円(!)をつけてもらいました。




ステーキ丼は意外と牛肉たっぷりで、タレもたいへん美味でありましたv
「四品盛り合わせ定食」の卵焼きや刺身、マッシュルームの煮物もおいしそうだったな。
もっと家が横浜に近かったら、夜もぜひ来てみたいお店です。


横濱ごはん Fu-jin(ふーじん)




◆◆◆◆


音楽通りを歩き、紅葉坂というキッツーイ坂を登っていくと、青少年センターが見えてきました。



ここの多目的プラザで上演されるのは、楠美津香ひとりシェイクスピア「超訳リチャード三世」。
楠美津香はひとりコントの芸人さんで、モロ師岡の奥さんでもあります。
2000年に、講談と演劇をミックスした「超訳ひとりシェイクスピアの会」をスタート。
10年間でシェイクスピアの全37(+2)作品上演をめざしているそうです。すごい!


公演チラシ

「リチャード三世」は、シェイクスピア劇の中でも人気の高い作品のひとつです。
先ごろもいのうえひでのり演出で、古田新太が演じたばかり(観てませんけど)。
イングランドの薔薇戦争(1455~1485年)のさなか、身体的コンプレックスと疎外感を抱えたリチャードが、
実兄から甥っ子まで身内を次々と滅ぼして王位に就くものの、
次第に味方が離れていき、ついには敵方のリッチモンド伯に討たれるという歴史劇です。

座席数100程度のコンパクトなスペースに、ショーケンの「愚か者よ」が流れるなか、
派手なスカジャン姿の楠美津香登場。
向かって左手に置かれた黒板に、登場人物の相関図をさらさらと書いていきます。

ところが。
このあと彼女はイングランドを神奈川に、薔薇戦争を暴走族の抗争に書き換えてしまうのです( ̄ー ̄;

主な登場人物のキャラクター設定は、
  • リチャード → 単車を乗り回す精神年齢14歳以下のチンピラ
  • ヨーク家の長兄エドワード4世 → マーロン・ブランド
  • その妻エリザベス → おかみさん
  • 次兄クラレンス公ジョージ → 江戸前の寿司職人
  • 母親のヨーク公爵夫人 → 「いかんぜよ」の土佐女
  • 宿敵ランカスター家のヨメ、のちにリチャードと結婚し殺されるアン王妃 → えせ大阪弁の女
  • 先王ヘンリー6世の未亡人マーガレット → 八つ墓村

・・・などなど。なかでも「寿司職人」と「八つ墓村」には爆笑でしたw
元王妃のマーガレットって、たしかに100%呪いキャラだもんね。

こうして総勢30人の登場人物をぜーんぶ演じ分けるんだから、もう常軌を逸してます。
舞台上に立っているのは彼女ひとりなのに、それぞれの登場人物が残像のように頭に残ってる。
ひとり舞台じゃないみたいです。
しかも驚いてしまうのは、スタイルはここまでオリジナルでありながら、
原作にはとてもとても忠実だということ。
時代設定を現代に、言葉遣いを思いっきり軽薄にしていても、
人物の本質はシェイクスピアのままなんですよね。
暗闇のなか、孤独と絶望のうちに死ぬ楠リチャードが、なんと哀しくオトコマエだったことか。
前説と休憩入れて約2時間半、引き込まれっぱなしでした。


楠美津香・公式HPは、こちら。→ http://kusunoki-mituka.com/


楠さん手づくりの観劇記念スタンプを押してきました。
また行きたいなぁ。いや、スタンプラリー目当てじゃなくて(>▽<;;


神奈川県立青少年センター




↓ 本作品が参考にしているという、小田島雄志訳の『リチャード三世』。

リチャード三世  シェイクスピア全集 〔4〕 白水Uブックス

リチャード三世 シェイクスピア全集 〔4〕 白水Uブックス

  • 作者: ウィリアム・シェイクスピア
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 1983/01
  • メディア: 新書



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